■東京国立博物館・東洋館10室(朝鮮時代の美術)
東博の常設展示を見に行ったときは、必ず東洋館に寄る。エレベータで4階の中国書画の展示室に直行して、順番に下りてくるのが定番だったが、最近は、5階の朝鮮半島の展示からスタートするようになった。絵画作品は、けっこう頻繁に展示替えがあって楽しいのだ。8月23日までここに出ていた『釜山草梁客舎日本使節接待図屏風』(10曲1隻、朝鮮時代19~20世紀)は、初めて見る作品で面白かった。
右から左に向かって、官人たちの長い行列が進む。これは全て朝鮮人らしい。
左端の建物(倭館)では、日本使節と朝鮮人の対面が行われている。
はじめ、なかなか日本人が見つけられなかったが、右側の庭に座っている人々がそうだ。門の外で警護にも当たっている。右側の建物の中にいるのは全て朝鮮人のようだ。
この図像の意味がよく分からなくて調べたら、韓国・国立中央博物館の『東萊府使接倭使図』の説明(日本語)が見つかった。文録・慶長の役のあと、国交は回復したものの、日本使節団は以前のように上京して王に拝謁することができず、釜山の草梁倭館で王の殿牌(殿字を刻んだ木牌)に敬礼することでその代わりとしたのだそうだ。たぶん右の建物はその場面だろう。
また、日本使節団をもてなすため倭館へ派遣されたのが東萊府使である。東萊府は、釜山に置かれた地方行政機関だが、近代初頭までの日朝関係における朝鮮側の外交窓口でもあった。
左側の屋根の下にいる集団も日本人だ。
これは宴会の場面だろうか。女性たちは歌舞で使節をもてなしているのだろうか。
■東洋館8室(中国絵画)『中国の絵画 神仏の姿』(2020年8月18日~9月22日)+(中国の書跡)『レジェンドの筆跡-書の巨匠と歴史上の偉人』(2020年8月18日~9月22日)
中国の書画は、絵画も書跡もなかなかの豪華メニューである。展示室に入ったとたん、光輝くような白い千手観音が目に入って、え!と声を上げそうになった。岐阜・永保寺の『千手観音図軸』(南宋時代)が展示されていて、畏れ多くも写真撮影も禁止されていない。花嫁衣裳のような純白の衣裳。正面は柔和なのに、大きく目を剥いた左右のお顔の異形ぶり。楽器や武具や法具など、さまざまな持物には赤や青のリボンが結ばれていたりして色鮮やか。後補の筆なのか、髑髏がひときわ目立つ。小さめの写真を掲載しておこう。
京都・清凉寺の十六羅漢図(北宋時代)が3件。伝・顔輝筆『寒山拾得図軸』も筆者不詳の『寿星図軸』も好きな作品だ。東京・霊雲寺(湯島の?)所蔵『天帝図軸』(元代)は、北斗七星を描いた黒旗を背後に、温・関・馬・趙の道教四大元帥を従えており、カッコよかった。
書跡は、タイトルどおりレジェンド大集合なので、初心者にも親しみやすくてよい。書としては、やっぱり顔真卿が好きなのだが、最近見ている中国ドラマの影響で、唐の玄宗や清の乾隆帝を感慨深く眺める。あと、孫文、康有為、左宗棠も。