見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

人形劇ならではの演出/文楽・嫗山姥、他

2020-09-24 22:04:49 | 行ったもの2(講演・公演)

国立劇場 令和2年9月文楽公演

・第3部『絵本太功記(えほんたいこうき)・夕顔棚の段/尼ヶ崎の段』(2020年9月21日、17:00~)

 9月6日の公演を見に行くはずが、スタッフに微熱が発生したため休止になってしまったので、チケットを取り直した。武智光秀(明智光秀)が主君・尾田春長(暴君という設定)を本能寺で討ったあと、息子の不義が許せない母のさつきは尼ヶ崎に隠棲する。そこに次々に訪ねてくる、光秀の妻、光秀の息子の十次郎、十次郎の許嫁、そして旅の僧。物陰で様子をうかがっていた光秀は、旅の僧の正体が真柴久吉と見破って、風呂場の外から竹槍を投げ入れるが、中にいたのは母のさつきだった。そこへ初陣で傷を負い、戻ってきた小十郎。母と息子の亡骸を残して、山崎の天王山へ向かう光秀。絶望的な悲壮感に酔う。

 睦太夫、呂勢太夫、呂太夫という、あまりオーバーアクションでない古風な芸風の太夫さんのリレーだった。光秀は玉志、さつきは桐竹勘寿で、人形も手堅い配役。

・第1部『寿二人三番叟(ことぶきににんさんばそう)』『嫗山姥(こもちやまんば)・廓噺の段』(2020年9月22日、11:00~)

 第1部は9月13日のチケットを取っていたが、野暮用で見られなかったのでリベンジ。千秋楽になってしまったけれど、やっぱり三番叟を聴けてよかった。人形は玉勢と蓑紫郎。この演目は、本来、黙って聴くものではなくて、みんなでノッて盛り上げたい。

 『嫗山姥』は初見。婚約者の源頼光が行方知れずとなり、気持ちのふさぐ沢潟姫。腰元たちは姫を慰めようと煙草売りの源七を、次いで旅の女郎・八重桐を館へ招き入れる。実は源七は坂田時行、八重桐はその思い人だった。清原高藤と平正盛を敵とねらう時行は、自らの不甲斐なさを恥じて腹を切り、八重垣が腹の子を養育して敵を討ち果たすよう言い残して死す。清原高藤って藤原高藤だろうか。平正盛は本名だったり、平安初期の歴史上の人物の使われ方を面白く思う。

 時行の傷口から出た「炎の塊」が口に入ると八重桐は態度が一変、長い両手を振り上げて侍たちを投げ飛ばし、髪を振り乱して鬼女の顔をあらわにする(ガブの頭を用いる)。八重桐は勘十郎さんで楽しそうだった。蓑助さんとか玉男さんが遣うと人形が人間に見えるのだが、勘十郎さんの場合、奇想天外・荒唐無稽なストーリーが大好きで、人形劇ならではの演出を存分に楽しんでいるように思う。

 口は希大夫、奥は千歳太夫。千歳太夫の熱演はいつもどおりで嬉しかった。床や舞台に近い席は使用禁止だったり、応援の掛け声も掛けられなかったり、まだまだ不自由はあるけれど、劇場でナマ鑑賞できるようになって、ありがたいと思っている。

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