見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2020年8-9月@東京:展覧会拾遺

2020-09-28 23:33:01 | 行ったもの(美術館・見仏)

三井記念美術館 開館15周年記念特別展『三井家が伝えた名品・優品』第2部:日本の古美術(2020年8月1日~8月31日)

 第1部「東洋の古美術」に続く第2部。冒頭の『伊賀耳付花入(銘:業平)』は伊賀焼にしては細身で華奢な印象。表側は緑色の釉薬がキラキラ輝いて雅やかだが、裏にまわると焼け焦げたような茶色が目立ち、寂びの魅力を感じる。仁清の『流釉輪花建水』は上品で可愛い。久しぶりに見た「継色紙」「寸松庵色紙」「升色紙」の揃い踏みを堪能。特に升色紙の「くるるかとみればあけぬるなつのよをあかすとや」(ここまで左側)「なく山ほととぎす」(右側、空白多め)の配置が好き!

静嘉堂文庫美術館 『美の競演-静嘉堂の名宝-』(後期:2020年8月4日~9月22日)

 展示替えがあったので後期も見て来た。前期の山水画が引っ込んだかわりに「信仰の造形」が増えて、鎌倉時代の『春日本迹曼荼羅』、南北朝時代の『春日宮曼荼羅』(色彩が鮮明でカラフル)、室町時代の『春日鹿曼荼羅』(背景の御蓋山が春日権現験記絵のようなウロコ模様)などを見ることができた。元時代の華やかで巨大な仏画『文殊菩薩像』『普賢菩薩像』は若冲が手本にしたと考えられるもの。しかしこの文殊は文殊らしくない。『羯鼓催花・紅葉賀図密陀絵屏風』は初めて左右一双を見ることができた。2016年に片方しか見ることができず、悔しがったもの。玄宗の宮廷を描いた羯鼓催花図のほうが残りがよく、古代日本の貴公子たちを描いた紅葉賀図のほうは、退色が目立っていた。

太田記念美術館 『月岡芳年 血と妖艶』(後期 :2020年9月4日~10月4日)

 これも後期再訪。好きな作品『月花の内 雪 岩倉の宗玄 尾上梅幸』を見ることができて満足。小学生くらいの男子を連れた若いご夫婦がいて、確かに劇画調でカッコいい武者絵もあるけど、血みどろ絵、大丈夫なのだろうか?と横で心配してしまった。

永青文庫 令和2年度秋季展 財団設立70周年記念『永青文庫名品展-没後50年”美術の殿様“細川護立コレクション-』(2020年9月12日~11月8日)

 永青文庫の設立者である細川護立(1883-1970)の没後50年を記念し、そのコレクションの魅力を楽しむ。4階展示室には、今年、新たに重要文化財に指定された松岡映丘の『室君(むろぎみ)』と平福百穂の『豫譲(よじょう)』を展示。どちらも六曲一双の大画面で、この展示室ができてよかったとしみじみ思った。中国古代を舞台にした『豫譲』制作のため、百穂が朝鮮総督府博物館の小場恒吉に冠や馬具の細部について問い合わせた手紙が一緒に展示されていて面白かった。狩野元信筆『細川澄元像』(永正4/1507年)はとても鮮明。刀ではなく薙刀みたいな長巻を持っているのだな。

 菱田春草『黒き猫』は写実というより、猫の概念が描かれているような気がする。着物か帯の柄のように美しく平面に収められた柏の枯れ葉の風情もよい。

山種美術館 特別展『竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス』(2020年9月19日~11月15日)

 『黒き猫』を見たらこっちも、と思って、ハシゴで竹内栖鳳の『班猫』を見に行った。こちらは、個性というか具体性を強く感じる猫で、ゴロゴロと喉を鳴らす声、柔らかな体毛に埋もれた華奢な骨格まで想像できる。第2展示室では「ローマ教皇献呈画 守屋多々志《西教伝来絵巻》試作 特別公開」という併設展示をやっていて、大作『慶長使節支倉常長』と併せて、『西教伝来絵巻』(試作)を見ることができた。上巻は、青海原を渡る帆船によって、ヨーロッパから日本へ宣教師たちの旅を象徴する(雲の上で天使たちが祝福している)。下巻は聖母子の左右には、安土桃山時代の日本の男女の姿が明るい色彩で描かれている。絵を描く少年、甲冑を来た武士、直垂姿の侍、百姓、高貴な女性など。楽しい作品だった。

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