台湾近代建築の旅(今回のテーマ)は始まったばかり。総統府の南側にある司法大廈(写真)、その向かいの台北市立第一女子高級中学は外観だけ。
続いて台北賓館(旧・台湾総督官邸)を見学する。月1回、総統府の休日見学日に合わせて一般開放日が設けられているという情報をつかんでいたのだ。外観は重厚な雰囲気。屋根はスレート瓦ではないか。
中に入ると、白と金の壁、豪華なシャンデリア、深紅のカーテンと絨毯、ステンドグラスなど印象が一変する。ここは総督府官邸であると同時に迎賓館を兼ねていたとのこと。皇太子時代の昭和天皇もここに宿泊したことがある。日本庭園もあり。
最後に建築の沿革・特色を紹介するビデオを見ることができて、台湾の建築学の先生による詳しい解説が面白かった。
台北賓館の北側、台湾大学附属病院(台大医院)は外観のみ。今回の旅の指南書である片倉佳史先生の『台北・歴史建築探訪』に「参観は自由にできる」と書いてあったけど、敷居が高くて足を踏み入れる勇気が出なかった。ここは森鴎外の長男・森於菟が医学部長をつとめたゆかりの地でもある。同じエリアに「台大医学人文博物館」があるという情報も得ていたのだが、「台湾大学博物館群」のページに祝日は休館とあったので、次の機会を待つことにした。
続いて二二八和平公園の中にある国立台湾博物館へ。
ここも約20年前に来たことがあるはずだがよく覚えていない。今回はもっぱら建築意匠に注目。かつては「児玉(源太郎)総督及び後藤(新平)民政長官記念館」と呼ばれた博物館。ドーム天井のステンドグラスには児玉家の家紋「軍配団扇」と後藤家の家紋「下がり藤」が用いられているというのは片倉先生の著書による。
階段や回廊の腰壁は大理石だと思う。台湾は大理石の産地だが、この建物に限っては全てイタリアから持ち込まれた舶来の大理石が用いられたというのも同書による。
3階では「発現台湾-重訪台湾博物学与博物学家的年代」という特集展示をやっていて、全く知らなかった日本人の博物学者・人類学者が多数紹介されていて面白かった。日本統治時代を否定するわけでもなく「日本人に感謝」みたいな文脈でもなく、そのひとのルーツにかかわらず、個人の実績を公平に顕彰するスタンスに感じられた。
道路を挟んで向かい側にある土銀展示館にも入った。メインホールは高い天井を利用して恐竜や古代生物の骨格展示が行われており、「台湾土地銀行」に関する人文歴史的な展示が併存してカオスな状況になっているが、どちらも面白かったけど、いつからこんなふうになったんだろう。
続いて迪化街へ。何度も歩いているエリアだが、片倉先生の本の地図をたよりに、敢えてメインルートを外れる歩き方をしてみる。延平派出所(旧・太平町2丁目派出所)は二二八事件ゆかりの場所でもある。
森高砂珈琲店。二二八事件紀念碑に近い交差点にあるので、何度か前を通っている。
永楽市場に寄り道したが、元旦でほとんどの店が閉まっていた。淡水河に近い裏通りにある李春生紀念教会。現在は観光ルートを外れているが、かつてはこの周辺こそ台湾随一の繁栄を誇っていたという。
陳天来故居(錦記茶行)。かつての豪商の邸宅。ほとんど人通りのないさびれた裏通りだが、この建物を興味深げに覗き込んで、写真を撮っている若いカップルがいた。
大稲埕碼頭で夕暮れの淡水河を眺め、民生西路を東へ戻って、新芳春茶行に寄る。最近、大規模なリノベーションをしたらしくて、古い建築の雰囲気はあまりなかったが(道路の反対側から全景を眺めればよかったのかもしれない)、店内は茶器や製茶業に関する展示が行われていて面白かった。
仁安医院。古い病院建築だというが、全然気づかずに通り過ぎてしまい、振り返って初めて認識した。
これで予定の行程は終了。実によく歩いた元旦だったが、まだ終わらない! このあと、初めて「士林夜市」に行って夕食にした。(1/5記)