付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「勇者はひとり、ニッポンで」 山崎響

2023-04-13 | 食・料理
 魔王退治のために神託で選ばれた勇者と聖女のパーティーだが、勇者アルフレッドにとっては針のむしろだ。美しい王女の聖女にかわいい魔法使い、凜々しい女騎士に囲まれて羨ましがる男は多いが、もともと武術に取り柄があるわけでもなく、ギスギスしたパーティメンバー間の軋轢に悩まされるだけの日々だ。
 そんなアルフレッドにとっての休息は、7日間に1度、神様から予算イチマンエンを授けられ、内緒でワンダーランド「ニッポン」へ転移しての24時間だ。牛丼を食べて、缶チューハイを飲んで、気の向くままに、癒しを求めて「ニッポン」の街をさまよい歩く……。

 シンプルに日本の街で勇者が食べ歩き飲んだくれるだけの異文化交流ものだったウェブ版を大幅に改稿し、幼なじみや姫様や女騎士たちの視点を増やし、日本の街でもスーパーの店員やら牛丼屋の客やらカレーショップや居酒屋の店員に出番を作っての増量です。その分、テンポは悪くなって、食べ歩きの比重が減りました。

【勇者はひとり、ニッポンで~疲れる毎日忘れたい!のびのび過ごすぜ異世界休暇~】【ギスギスした毎日に疲れ果てた勇者、週末は異世界「ニッポン」でまったり飲んだくれるのだけが楽しみです~たまの休日くらい、独りで羽根を伸ばさせろ!~】【山崎響】【雪狸】【一迅社ノベルス】【お疲れ勇者の異世界(ニッポン)探訪コメディ】【小説家になろう】【カクヨム】【牛丼】【親子丼】【カレーライス】
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「おいしい関係 16」 槇村さとる

2023-01-23 | 食・料理
「人間は教育で育つんじゃないわ。愛情をかてに育つのよ」
 大原可奈子は蓮見にそう言い放つ。
 人に愛されることばかり考えていた女が、誰かを愛することを学び始めます。

 シェフとして成長するため、フランス料理連盟コンクールに挑んだ百恵だが、参加者たちの技量に圧倒されながらも、そこに彼女の目指すものはなかった。
 その頃、妊娠した可奈子は友人の制止を振り切り、一人パリへと旅立とうとしていた。千代ばあの依頼したパリの料理店のコーディネイトをするためだ……。

 最後の最後までそれぞれの料理への向き合い方で白熱した意見をぶつけ合いつつ、人間関係で愛憎ドロドロにもつれ合いながら、それでも奇跡的に登場人物すべてにとってのハッピーエンドで完結。「人に食べてもらえる料理をつくれてうれしい!!」というテーマに回帰しての大団円。

【おいしい関係 16】【槇村さとる】【ヤングユーコミックス】【スーパーグルメ☆ロマン】【料理コンクール】【口紅コンバット】
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「おいしい関係 15」 槇村さとる

2023-01-10 | 食・料理
「趣味じゃないの。レストランという生き方なの」
 見合い相手の蓮見廣嗣、プチ・ラパンを廃業に追い込んだ男に百恵は告げる。レストランで働くのは趣味でもなければ生きる糧を得るためでもない。どんなに自分が変化しても変わらない夢、変わらない「好き」なのだと。

 木村はできる限りの手を尽くしたが、資本力のある商社相手には太刀打ちできなかった。そんな木村に織田は打つ手を全て打ってダメなら決断しろと告げる。未来のあるつぶし方をしろ、みんなが生きるための明日を考えろと……。

 料理が大好き、できると言ってプチ・ラパンに雇われたものの、実際は味噌汁も作れなかった百恵が立派なシェフとなり、閉店する古巣を見送ります。原価率も考えたこともなかったのに。
 そして壊れてしまった可奈子の妊娠が発覚します。いわゆる「夜明け前がいちばん暗い」回。

【おいしい関係 15】【槇村さとる】【ヤングユーコミックス】【ジビエ】
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「おいしい関係 14」 槇村さとる

2023-01-05 | 食・料理
「自分の基盤がつくれん女は、くだらない男に引っかかって惚れあげる。そんな恋はしてても不安でいいこたない。ひとりでやれて、はじめて落ちついて恋だろーが」
 千代ばあは自分の人生が決まらないと男も選べないと百恵を叱責する。

 可奈子との同棲を解消し、千代ばあのもとに戻った織田。
 そんな中、百恵は自分の強みを確認する。それは技術ではなく、誰のために作るのか見極められること。そして立ち位置を固めつつある百恵に、高橋はフランス料理連盟のコンクールにアムールの代表として出るよう命じた……。

 プチ・ラパンが経営危機に陥り、織田と可奈子が破局する中、百恵が自分の道を探し始める14巻。

【おいしい関係 14】【槇村さとる】【ヤングユーコミックス】【スーパーグルメ☆ロマン】
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「おいしい関係 13」 槇村さとる

2022-12-30 | 食・料理
「明日なんて、だれにあってだれにないのかわかりゃしない。皆が等しく持っているのは、『今』だけだ。--自分を殺すな、自分を活かせ。それが今を生きるということだ」
 出版記念パーティの会場で倒れた織田千代は百恵にそう伝える。

 百恵は織田が好きだと自覚し、本人にはっきりそう告げる。織田圭二からすれば百恵をそういう目で見た事はない。でも、伝えなくては始まらないのだ。
 高橋は恋なんて錯覚なのだというのだが、百恵は「幸せ」も「美味しい」も同じ一瞬の感覚なのだと応えるのだった……。

 プチ・ラパンに商社の包囲網が迫り、千代ばあが倒れ、可奈子が壊れ始める不穏さ満載の13巻。

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「おいしい関係 12」 槇村さとる

2022-12-25 | 食・料理
「料理は金を生むための商品じゃない。1人の人間から1人の人間へ手をかけて差し上げる心だ」
 総合商社の海洋が資本を活かしてレストランチェーンに参入することを聞いた織田千代はそう評する。

 プチ・ラパンにフランチャイズチェーンの買収話が持ちこまれてきた。織田も百恵もいない「プチ・ラパン」の経営は厳しいが彼らには何もできないし、買収を拒んでも代わりに近隣に出店されたら持ちこたえるのは難しい。そして、オーナーは自分1人で守り切る自信を持てない。
 オーナーがそんな姿勢なら自分は辞めるという木村に、織田はそれくらいならおまえが乗っ取ってしまえと言う。そうすればビストロとしてのプチ・ラパンは残る。それくらいの気がまえでやれば、もしダメでも木村はどこでもやっていけると……。 

 登場当初はへのへのもへじのモブ顔みたいだったスーシェフの木村くんも、ときおり美少年の片鱗を見せ始めたと思えば、ついに独り立ちを決意します。

【おいしい関係 12】【槇村さとる】【ヤングユーコミックス】【スーパー☆グルメ物語】【コロッケ】【毒を食らわば皿まで】
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「おいしい関係 11」 槇村さとる

2022-12-19 | 食・料理
「自分のこと『バカらしい』って言えるの、すごいよね。そういう瞬間って、私、大好きなんだ」
 自分の小ささを感じる瞬間の、パッと目の前が開けるカンジが好きだと藤原百恵。

 対立しながらも意識し合う藤原百恵と日比野ミキ。そして2人はそれぞれ自分に足りないものに気づくことになる。それは「冷静な技術」であり「心」。どちらも欠けていては不十分なのだ……。

 いろんな人間関係がギシッギシッと軋み続け、このままバラバラになってしまうのか、カチッとはまって落ち着くのか予断を許さぬまま話が進みますが、千代婆の料理に関する想いが物語をがっしり固めて流しません。

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「スガキヤ FAN BOOK」 TJ MOOK

2022-12-05 | 食・料理
 ラーメン専門とかエリア毎のカフェを紹介するムックはもはや定番なんだけれど、宝島社はここ最近、はなまるうどんとか銀だことか丸源ラーメンとか店舗限定のムックを出しています。そして今回は名古屋圏で強いスガキヤ FAN BOOKです。名古屋のソウルフードともいうべきラーメンの代表ですが、あまりに当たり前すぎて全国区のマスコミで「ご当地ラーメン」というと空気のようにサラッと無視されるスガキヤです。発売時から1年有効の、トッピングか大盛りが無料になるパスポート付き。
 内容はラーメンやデザートの種類とか店舗・グッズの紹介にファンだという芸能人たちのインタビュー、先割れスプーン開発史、役員やスタッフとの対談や工場訪問などなど。味が独特で「蛇のダシが使われている」という噂が出たときは面白いからあえて放置してみたとか言ってますが、昔テレビで工場訪問の取材が会った時にレポーターが「蛇のダシを使っているという噂がありますが?」とド直球の質問をしちゃったときに「コストかかりすぎて無理です」と華麗にスルーしてたのを思い出しました。もともと「コーヒー1杯より安く食べられるラーメン」がコンセプトですものね。昔、名古屋市や半田市でハブ粉を使ったラーメン食べたら1杯2000円近かったです。
 ところで、会社の歴史を見たらラーメンとデザートメインで、うどんはインスタント食品の紹介にちらりと出ていただけ。個人的には昭和40年代にテレビで流れていた『すがきやうどん、すがきやうどん、うどんなーら すがきや! すがきやうーどーん、ドン!ドン♪ 』のCMソング(1987年にも流れていたけどアレンジ違い)が脳裏にこびりついて離れませんが、このあたりは言及なし。付録にCMソングCDを付けてくれても良いのよ?

【スガキヤ FAN BOOK】【TJ MOOK】【宝島社】【人気飲食チェーン公式ファンブック】【佐藤二朗】【スキマスイッチ】【須田亜香里】【林美澪】【スーちゃん大解剖】【スガキヤトリビア】
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「おいしい関係 10」 槇村さとる

2022-12-03 | 食・料理
「女が弱い者にやさしいのはあたり前のことじゃないの? そうじゃなきゃ、人類もういないわよ」

 紆余曲折あってアムールに復帰した百恵は、改めて日比野ミキと真っ正面から向き合う。しかし、営業中に発生した地震以来、今度はミキが音信不通となってしまう。
 ミキの行方不明に千代ばあは激怒し、百恵にコックに昇格してミキの穴を埋めろ、多峰に1ヶ月で自分のすべてを百恵に教えてやれと命じるのだが……。

 それぞれの生き方の違いからぶつかり合う百恵とミキですが、最後に全部吹き飛ばしていくのは千代ばあです。「落ちても、生き返って戻ってくる。人間なら」と絞り出す千代ばあの目の鬼気迫ること。わがまま一杯、あちらこちらの店を引っかき回しますが、それもつまらないことで店を潰したり腕の良いコックを失いたくないから。だから、自分の教え子たちの事情もプライドもエゴも無視して道筋を立てていきます。

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「Artiste(アルティスト)」 さもえど太郎

2022-11-26 | 食・料理
「そもそもストーリーや設定が大体出尽くしてパターン化している!」
 ホラー映画の筋立てはどれも似通っているし、大半はつまらないとパリ在住の日本人マンガ家のアキオ。
 読んでいてラノベのことかと思ったけれど、アキオは「似てるからこそ、こだわりが光るんだ。魂は細部に宿る!」と熱弁。

 パリのレストランで働く気弱な青年ジルベールが住んでいるのは、家賃は格安だけれど一芸を大家に認められないと入居できないアパルトマン。同じアパルトマンに住む個性的な芸術家たちと交流することで、ジルベールの世界はまた少し広がっていく……。

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「おいしい関係 9」 槇村さとる

2022-11-23 | 食・料理
「たった一人で生まれて、たった一人で死んでいくのは仕方がない。だから人と関わりたい。あったかいものを感じたい」
 そのために持っている方法は自分には料理しかないのだと藤原百恵。

 アムールに居場所がなくなった百恵は失踪し、高橋薫は自分が百恵の優しさに甘えていたと反省しつつも解雇通知を出した。
 その頃、街をあてもなく放浪していた百恵は、寿司屋で居合わせた老人に拾われて料亭の仲居となっていた……。

 百恵放浪篇。
 キチンとしたものを食べたいと思えるのは、心身共に充実しているということなのだ。

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「おいしい関係 8」 槇村さとる

2022-11-14 | 食・料理
「自分一人で幸福になれる--か。それがおまえの最大の武器だよ。そして致命的だ」
 織田千代は百恵の限界を冷酷に見極める。

 織田が辞め、オーナーが入院したプチ・ラパンだったが、それまで二番手として誰かのサポートであればいいと信じていた木村が「第一シェフとしてやりたい!」と言い切った。
 その頃、千代ばあは高橋薫の店に日比野ミキを送り込んでいた。ミキは料理人として百恵に足りないものをすべて持っている。高橋の味を完璧にコピーして客を満足させるミキに、百恵は居場所を奪われていく……。

 「心」しかない百恵に対して「技術」だけで良しとするミキという、今まで登場していなかったライバルの出現ですが、料理×恋愛ものなので話はまたしばらくギスギスします。

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「おいしい関係 7」 槇村さとる

2022-11-04 | 食・料理
「『おいしい』をつかまえるって、すごくむずかしい」
 料理を作る人も食べる人もベストのコンディションで、最高の食材が好みに調理されていないと「おいしい」には出会えない。「おいしい」状態になれるのは奇蹟だと百恵。

 織田が独立を決め、可奈子との同居生活を始めた。
 高橋の店で働き続けて充実しているはずの百恵だが、彼女には自分が独立して店を持つビジョンが見えない……。

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「おいしい関係 6」 槇村さとる

2022-10-26 | 食・料理
「幸福はいつまでも続かない事を人は知っている。だからこそ大切さが増す。一瞬の幸せさえありがたいと感じられるのさ」
 千代ばあは、人生は無常だと百恵に説く。

 再起した高橋の店、アムールで働くことになった百恵は、多峰や辻たちと共にお客を迎え入れる。
 その頃、織田と可奈子の生活も順風満帆に見えたのだが……。

 百恵に未熟さを突きつけ、いつも厳しいことばかり言う千代ばあですが、それでも60の歳の差があっても自分たちは仲良しだし、世代を超えてコミットすることが人生最大の楽しみと言い切ります。

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「おいしい関係 5」 槇村さとる

2022-10-22 | 食・料理
「迷って選べないということは、結局、その時点で死んでしまったも同然だ」
 織田千代は剪定していた盆栽を根本から断ち切る。
 仕事も身体も恋も、素直にならなきゃ全然力が出ないと分かっているが、それを百恵の中の「女」が邪魔をするのだ。

 百恵は料理人として成長するために「プチ・ラパン」を出ることを決意する。新たにレストランを開業することになった高橋シェフに請われたのだ。オーナーは反対したが、一人前のコックなら自分の世界を確立するために職場を移るのは当然と、織田は自分の料理を期日一杯まで教え込む。
 しかし、それを聞いた千代ばあは、背水の陣の片腕に中途半端な娘を相方に選んだと激怒し、引退していた古参の料理人・多峰英太を無理矢理に高橋薫の店「アムール」に押し込んだ。技と味を独り占めにしたまま天国に持っていくのではなく、赤の他人の中に種を撒いてこいと……。

 新旧シェフが火花を散らし、愛憎劇が煮詰まり始めていきます。
 傲岸不遜で傍若無人っぽい千代ばあちゃんですが、常に弟子全体に気を配っていて、少しでも上手くいくようにあれこれ手を打っているのです。ただの女版海原雄山ではないのだ。あとは本人たちの努力と運だけです。運だけはどうしようもない。

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