この「食の図書館」シリーズは、コメからウィスキーまでいろんな食の歴史について書かれた翻訳で、ハードカバーなので片っ端から買いそろえるのも(予算と収納スペースの両面で)憚られるので、まずは「本当に野球場のスタンドでレッドホットと売られていて、それを新聞マンガが犬を挟んで売っているように描いた」のが元ネタか気になっていたので確認の意味でホットドッグ編。
「ホットドッグ、野球、アップルパイ、そしてシボレー」
1975年の某自動車メーカーのキャッチフレーズ。つまり、ホットドッグはアメリカ人のアイデンティティの一部なのだ。
この本は、まずホットドッグとは何かの定義から始め、つまりホットドッグはパン料理ではなくソーセージ料理なのだとしました。ドイツのソーセージを食べるために何かで包むことでアメリカ料理としたのだ……という視点。なので序盤はソーセージ略史です。
問題のニューヨークの野球場発祥説は1901年の出来事。ただ、これには根拠となる資料はなし。もう1つの有力説は1904年のセントルイス万博発祥説。また別に1867年にドイツ移民のチャールズ・フェルトマンがソーセージを挟んだサンドイッチの屋台を出したという説なのだけれど、フェルトマンがワゴン売りをしていた記録はなく、むしろはソーセージ売りが嫌いという記録は残っていて……と、こういうもっともらしい現代の伝説というのはたいていは広告屋のライターの仕業っぽいそうです。パンに挟んだソーセージをホットドッグと呼んだ記録では、1895年のイェール大学の学内誌がいちばん古いそう。
ここまでで全体の1/3。残りはホットドッグ(つまりソーセージ)の作り方、売り方、文化、世界のホットドッグと続きます。自分で調べていて気になっていたアーマー社についても再確認できて良かった。ネットで英語文献を調べていると頻繁に検索に引っかかるのだけれど、自動翻訳だと「装甲ホットドッグ」と訳されて、いったい何事!?となっていたのです。
【ホットドッグの歴史】【食の図書館】【ブルース・クレイグ】【原書房】