付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「星をひとつ貰っちゃったので、なんとかやってみる2」 茂木鈴

2014-10-25 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
 絶対的な幸運の持ち主である主人公が、たまたま困っている宇宙人を助け、たまたまもらった星から超古代の遺跡が発見され、そこから銀河文明が危険視する隠れた勢力との戦いに干渉してしまう話。

 仲間が銀河の星々に出稼ぎに行き、その異能レベルの異才で問題を解決していく中、矢羽根稔は人集めのために鬼族を訪問していた……。

 シリーズものなのに人物紹介はおろか、カラーイラスト頁に登場人物の名前すら入らない本作り。編集者はこういうところの仕事もすべき。
 惑星運営ラノベとはいうけれど、今のところ開発の方はコンセプトを決めて、人を集めればなんとかなるだろうという展開に、シビライゼーションだかシムシティみたいな都市作りの話を期待する向きには残念。
 雰囲気的には、星新一のショートショート的なエピソードを組み合わせて長編化しているように思われます。主人公とか「稔」でなくても「エム氏」にした方がしっくりきます。エム氏の冒険。

【星をひとつ貰っちゃったので、なんとかやってみる2】【茂木鈴】【meco】【NMG文庫】【小説家になろう】【惑星運営ラノベ】【移民】【新入社員】【用地買収】【停戦交渉】【卒業式】【スパイ戦争】【宇宙の再生】【法人設立】



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「大航宙時代」 ネイサン・ローウェル

2014-06-22 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
 タイトルと「ひとりの若者が商船員をめざして、いま銀河の荒海へと船出する!」「ホーンブロワー・ファン必読」の帯にひかれて購入。
 面白いけど、このあおり文句は詐欺みたいなもの。本家ホーンブロワーみたいな血みどろの激戦はないし、『太陽の女王号』シリーズみたいな異星人も伝染病も古代遺跡もなく、本当に帯から期待されるようなものではなく、帯に書かれているままの「ひとりの若者が商船員として一人前になる」までの物語。馬車の代わりに宇宙船で、神が出てこない『狼と香辛料』。ぶっちゃけ交易……というかフリマ小説。

 母親の交通事故死で天涯孤独となってしまったイシュメール・ホレイショ・ワンは、そればかりか住むところさえ失ってしまった。ネリス星は企業惑星であり、ネリス社の関係者またはその家族以外は住むことができないのだ。
 イシュメールは寄港した巨大交易船に、なんとか最下級の船員として乗り込むことができたのだが……。

 司厨補助員、つまり料理人手伝いに任命された主人公の初仕事が、いかに美味いコーヒーをいれるか。話として最初に登場した食事が薄焼きパンを丸めたロール2個にフルーツ1きれ、クッキー1枚にドレッシングを添えた野菜サラダ。これが夕食と言われ、粗末だなあと思い、まん中あたりで「この船は食事がうまいことを誇りとしている」とあって嘘だあと思ったけれど、あくまで入出港時の弁当扱いなのね。普段は朝食にオムレツとか、夕食にはビーファロー肉のステーキとか、確かにけっこう美味しそうなものを食べてます。
 主人公はひたすらコーヒーを入れ、食事を作り、トレーニングして、掃除して、コーヒーを入れ、船の減価償却費や維持費から利益の配当がどれくらいになるか勉強し、トレーニングして、勉強して、避難訓練して、コーヒーを入れ、手荷物に持ち込んだ品をフリマで売って小遣い稼ぎし、コーヒーを入れて、試験を受ける……そんな話で波瀾万丈の要素はどこにもないけれど、地味に面白い。
 結局、ここで語られていることは18歳で家族も家も失った少年が、居場所を見つけるまでの物語で、安く買って高く売るという商売の基本で、なおかつ「やっぱり売り子は女子にかぎるね」という真理なのです。

【大航宙時代】【星海への旅立ち】【太陽風帆船の黄金時代】【ネイサン・ローウェル】【ハヤカワ文庫SF】【コーヒーメーカー】【フリーマーケット】【マッケンドリック商業組合】
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「星をひとつ貰っちゃったので、なんとかやってみる」 茂木鈴

2014-03-14 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
 2013年春の創刊以来、新刊が全く出ていなかったNMG文庫の最新刊。なので、面白かったけれど続刊が出るか不安です。

 幼い頃から運の良さだけで人生を乗り切ってきて、大学も一芸入試でクリアした稔だったが、就職活動が全滅。田舎の実家に農業でもしろと呼び戻されてしまう。
 ところが自活しろと無理やり父親から貸し出された畑へ行ってみると、宇宙船が不時着していて……。

 宇宙人から星をひとつ貰ってしまった主人公が、大学時代の悪友たちの助けを借りて何か始めて見よう……というサクセス・ストーリー。
 強運だけで乗り切るなりゆき任せのわらしべ長者的な主人公かと思ったら、(ティーラ・ブラウン並の)強運を意識して活用しているクレバーなタイプの主人公でした。ちょっと意外。学生時代の仲間も単なるノリだけの悪友ではなく、専門分野では世界に通用するプロフェッショナルばかり。「実は凄かった」タイプの主人公が個人的なネットワークでプロフェッショナル集団を結集して前人未踏の壮大なミッションに挑む話でした。その割には展開がちょっと軽いのだけれど、そこは大学を卒業したばかりの勢いなんでしょう。
 一芸に特化の二前大学編の方が面白くて、こちらを膨らませても良かったかなと思いました。

【星をひとつ貰っちゃったので、なんとかやってみる】【茂木鈴】【meco】【NMG文庫】【小説家になろう】【一芸入試】【古代遺跡】【路線価】【ヤギでも執事】
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「スター・トレック~イントゥ・ダークネス」  監督:J・J・エイブラムス

2013-08-30 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
 キャストを一新して時間を巻き戻して再始動した、新劇場版の2作目。
 とにかく『フレンチコネクション』かいっ!?って言いたくなるくらい、みんな走りづめの2時間ちょい。カークが走り、ドクターが走り、スコッティが走り、スポックが走り……って、本当に宇宙船の話かと思うけれど、そういえばエンタープライズ号も飛んでは停まり……ばかりだったなあ。

 ある惑星での任務に多少の不都合が生じ、その点を省いて航宙日誌を作成したカーク船長とその点まで含めて報告書を作成したスポック副長の食い違いから、カークは失脚してしまう。
 叱責しつつも、そんなカークに再びチャンスを与えようとするパイク提督だったが……。

 何をすべきかは分からないけれど自分に何ができるかは分かっているカークと、何をすべきか論理的に把握しているスポック副長の物語。まあ、カークの女たらしは相変わらずで、ベネディクト・カンバーバッチ無双な1作。

 総評としては「面白かった!」。いかにもスタートレックなSF冒険活劇でしたよ。ベースとなった作品を知らなくても愉しめるのは当然として、元のシリーズを愉しんだ人には隅々まで楽しめる再話。最後の対決でウフーラ大尉が登場した時は、空とぶギロチンをぶら下げてはいないかとドキドキ(吹き替え版限定)。
 予告編とかサイトの作品紹介がありきたりなSF大作っぽく(しかも間違っていたり)、悪いけどぜんぜん期待してなくて観に行くかどうか迷っていたけれど、良い意味で裏切られました。劇場の3Dで観ると、宇宙船の巨大感が出ていて壮観。
 スタトレものはアメリカ以外では大ヒットしないので、宣伝にあれこれ工夫しなければマニアしか来ない映画になるのはわかるけれど、よくあるSF大作のひな形に落とし込んで超訳した「愛」がテーマということにされると辟易。
 「スタートレック」シリーズであることを意図的に隠したがるのも、いかがなものか。日本ではテーマを「愛」にすると売れるらしいけれど、それが自分が日本映画が嫌いな理由でもある(それはヤマトで吐き気がするほど押しつけられたよ……)。面白い映画なので、結果的にファンにも一般客にも無視されることにならないことを祈ります。

【スター・トレック】【J・J・エイブラムス】【わたしの洞察力は優れている】【赤服】【性豪】【トリブル騒動】【光子魚雷】
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「彗星狩り」 笹本祐一

2013-07-20 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
 彗星を捕獲して水資源の供給基地にしようとしていたニュー・フロンティア社が倒産し、そのプロジェクトが宙に浮いた。
 その権利が、有人宇宙船によって最初に彗星にたどりついた会社に与えられることになり、大企業から有象無象の中小企業まで参加する壮大な宇宙レースがスタートすることとなった……。

 民間の航空宇宙会社がしのぎを削る、宇宙開拓時代のチキチキマシン猛レース。
 現代科学で民間企業レベルがどこまでできるかというシミュレーション小説と読めないこともないくらい、1つ1つの問題点をピックアップして、リアルな解決策を提示していきます。その巨大プロジェクトが組み立てられ動いていくプロセスが、この作品最大の魅力であり欠点。単なる娯楽活劇だけを期待するような読者には、この面白さは通じない気がします。
 宇宙探査ミッションの熱気を味わうべき作品なんです。

【彗星狩り】【星のパイロット2】【笹本祐一】【鈴木雅久】【ソノラマ文庫】【朝日ノベルズ】【有人宇宙飛行】
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「リングワールド」 ラリー・ニーヴン

2013-07-01 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
「名誉の問題とは、時間に左右されるものではないのだ」
 クジン人<話し手>の言葉。

 29世紀も半ば。
 宇宙の片隅で、奇妙な人工建造物が発見された。恒星をリング状に取り囲む巨大な「リングワールド」である。
 ルイス・ウーは200歳ながら若返り治療を受けて青年の肉体を保っている元冒険家。平穏な日常に飽き飽きし始めているルイスに、臆病で有名なパペッティア人のネサスがリングワールド探検への参加を持ちかけてくる。
 ネサスは探検隊のメンバーとして自分とルイス、それに人類の仇敵であったクジン人を加え、最後の4人目のメンバーとして“幸運の遺伝子”の持ち主を加えようとするが、なぜかいずれの候補者とも連絡が取れず……。

 ニーヴンの《ノウンスペース》シリーズの代表作というか、宇宙SFの代表作。
 恒星系内すべての惑星から小惑星までを原料として、恒星を取り巻くベルト状の人工世界を構築するというリングワールドというアイデアはSFファンの琴線をゆさぶり、さまざまな理論構築がされたという。でも、話の核となるアイデアは、ティーラ・ブラウンの幸運の遺伝子の方だよね。すべての物語の主人公補正に「ご都合主義」ではなく「幸運の遺伝子」という概念を持ち込んだわけですから。

【リングワールド】【ラリー・ニーヴン】【ハヤカワ文庫SF】【ノウンスペース】【幸運の遺伝子】【パペッティア人】【星間種子】【うそつき野郎】【人形使い】【レーザー推進】【ティーラ・ブラウン】【ダイソンスフィア】
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「図説 宇宙開拓」 スティーブン・コールドウェル

2013-02-14 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
 これもミューコンで落札したうちの1冊。

 銀河系に版図を広げた人類の、各植民星の開拓史を先住民族との戦いから資源開発、都市の建設までを豊富な図とともに紹介していくもの。
 1980年刊行。

 各惑星の主星からコード番号とか、本当にことこまかに設定されています。トラベラーで惑星のイメージがつかめないマスターの参考資料とかに使えそうです。

【Settlers in space】【Galactic Encounters】【The fight for survival on distant worlds】【Steven Caldwell】【Crescent】【図説 宇宙開拓】【孤立した植民星の生存のための戦い】【スティーブン・コールドウェル】
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「星のパイロット」 笹本祐一

2012-08-02 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
「我々は、聖地巡礼をしているんですね」
 シャトルのメーカーであるロックウェル社にて、ダニエルの言葉。
 聖地巡礼という言葉が、本来の意味より広く使われるようになったのはいつからでしたっけか?

 今よりも少しだけ宇宙開発が進み、民間企業の参入が相次ぐ宇宙開拓時代。
 航空宇宙会社がしのぎを削るアメリカ西海岸に、超アクロバット着陸を決めたジェット戦闘機のパイロットは、新任の女性宇宙飛行士の羽山美紀だったが……。

 ソノラマ文庫版の再刊だけれど、後半1/3に笹本祐一のアメリカ宇宙紀行が収録されていたので迷わず買い。断片的なものは他の単行本やインターネット上で見たことはあるけれど、まとめて読むと愉しいなあ。
 読んだ自分が愉しくなるというより、作者の「オレ、こんなスゴイものを行って見て触っちゃったよ!」という興奮が伝わってくるので、そのマニアックな凄さがよく分からない身でも感化されて興奮してしまうような紀行文です。
 『ミニスカ宇宙海賊(パイレーツ)』シリーズの原点とかいうけれど、宇宙機のオペレーションのプロセスの1つ1つを、ドキュメンタリーなみに丹念に描き始めた端緒の作品です。

【星のパイロット】【笹本祐一】【鈴木雅久】【朝日ノベルズ】【ハードレイク空港】【聖地巡礼】
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「第六大陸」 小川一水

2012-07-31 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
「神とは、あえて即物的な言い方をすれば、溺れる者が自ら作り出す藁です」
 キリスト教の神はロケットエンジンまで面倒見てくれないと、築山神社の宮司、アーロン・ハリファクス。

 御鳥羽総合建設はサハラや南極など極限環境下での建設事業に定評と実績がある。その御鳥羽に巨大レジャー企業から一大プロジェクトが持ち込まれた。
 工期は10年、予算1500億、そして建設地は月。
 一民間企業に月面基地の建設は可能なのか? プロジェクトを担当することになった機動建設部の青峰は、本当の依頼主に出会って愕然とする……。

 土木工学SF。これで地球や宇宙の危機が絡んできたら小松左京作品になりそうです。
 単に建物を建てるだけではなく、そこへ物や人を送り込むための手段の確保から法律整備、宗教問題、メディア対策まで抱え込むことになり、機動建設部は大わらわ。
 なんとなく悪者っぽく扱われている桃園寺社長だけれど、よくよく考えてみれば大企業のトップ、娘の親としては当然の判断。結局、桃園寺妙という1人の少女のワガママであり、孫娘の願いを叶えてやりたいという祖父・桃園寺閃之助のエゴであり、その他みんな自分のやりたいことをやるために集まってきているわけで、いちばんの良識派が狭量な人物として貧乏くじを引いただけのような気がします。

【第六大陸】【小川一水】【幸村誠】【ハヤカワ文庫JA】【ファーストコンタクト】【民間企業による月面開発】【友達づくり】【SETI】
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「ふわふわの泉」 野尻抱介

2012-02-09 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
 かわいげのない理系少女を萌えさせたら天下一品な野尻作品。SF好きの間では評価は高く、「2001年度SF小説ランキング」のベスト10にランキング入りし、2002年の第33回星雲賞においては日本長編部門を受賞。でも、新シリーズ第1巻といいつつ、2巻が出ないところをみるとファミ通文庫の読者層とはずれていた可能性はあります。

 浜松西高校で化学部の部長を務める浅倉泉は、“楽に生きたい”がモットーの天才少女。
 文化祭の展示物質を生成しようと、ただ一人の部員である保科昶と化学実験を行っている最中に学校に雷が直撃。その偶然から生まれた物質は、ダイヤモンドよりも硬く、中空構造で空気よりも軽いというもので……。

 ずぼらな天才少女ときまじめな少年の活躍を、食わせ物の老人がバックアップする、由緒正しいジュブナイルSF。ジュブナイル小説の傾向として、大人が子供に向けて書くことが多いせいか、子供が主役で頑張るところは当然としても、大人が陰で支えている構図が多いんですよね。少年探偵団と明智小五郎とか。それに対して、ライトノベルとして書かれている作品の多くでは、大人は不在か敵か存在感がないか……というケースが目立つ気がします。ここらあたりは定義の問題にすぎないのですけれど、自分としては大人がいる話はジュブナイルと定義することにしています。自分定義。
 そして、1つの新技術を軸に、その技術的な可能性とそこから派生するさまざまな社会問題や文化の変化を描いていくマッドサイエンティストものであり、ベンチャー企業小説。だから大人が読んでも面白いのですよ。

【ふわふわの泉】【野尻抱介】【御米椎】【ファミ通文庫】【星雲賞】【軌道エレベーター】【立方晶窒化炭素】【ファーストコンタクト】【軌道エレベーター】【空中コロニー】【中華鍋】【行政書士】
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「アルゴスの有毒世界」 リチャード・エイヴァリー

2010-10-05 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
「われわれは地球の屑です。付き合って楽しい人間じゃないでしょう。しかし、われわれはこの仕事に誇りを持っているのです」

 コンラッド消耗部隊シリーズも4冊目。今回は植民に最適とか言いながら、なんだ、この凶暴な虫と植物だらけの世界は!?という話です。

 プロローグにもう1つの消耗部隊が全滅するエピソードが挟まりますが、この物語のもう1組の主人公はエクスペンタブルズをサポートするマシュー以下、人工知能搭載の人間サイズのサポート・ロボットたち。この融通の利かないロボットたちが計画を支えていることが、このエピソードで明らかになります。サポート・ロボットとして、従来の自分では何も判断できない旧型が良いのか、高度な自己判断機能を備えた新型が良いのかという話なのです。
 そして、シリーズ4冊を読み終えての感想は、ギャグはまじめな会話がかみ合わないときがいちばん面白いなあ。
 感情とかウィットとはまったく無縁のロボットたちが、どうしてここまで愉快なやつらに描写できるのか、このあたりきちんと勉強しないといけませんね。

【アルゴスの有毒世界】【コンラッド消耗部隊】【エクスペンタブルズ】【リチャード・エイヴァリー】【惑星開発】【花粉症】【ロボット】
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「タンタロスの輪」 リチャード・エイヴァリー

2010-10-01 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
 映画『エクスペンダブルズ』が公開されてかなりにぎやかですが、自分にとって「エクスペンタブルズ」とは「コンラッド消耗部隊」シリーズ。どちらも、優れた能力を持っているけれど社会的には使い捨て可能な程度の価値しか認められていないメンバーが困難な任務に挑むという話。映画はミリタリー・アクション、こちらは宇宙開拓ものという違いはありますが。
 さて、この『タンタロスの輪』はシリーズ2作目。やっと気心知れたメンバーが、欠員を補充して新たな星へと送り込まれますが、またまた予想外の出来事が。
 衛星軌道上には無人の巨大宇宙船らしき人工物が、地上には謎のリング型遺跡と高度な兵器を使うサルのような生き物が……!?
 いったい、なんのために無人の調査船を先行させていたのでしょうか?

 もう、この巻でお約束パターンが確立されています。
 アフリカ系の狂気の天才カート・クワンゴが、周りの人間をイライラさせながらも、ありえない状況をすっきり分析。それを元にチームリーダーである宇宙軍の堕ちた英雄・コンラッド大佐が問題を解決しようと作業に入るのだけれど、結局、最後は特攻みたいな形になってバラバラな姿で回収。女医スミスが口汚く罵りながらつなぎ合わせている間に、ロボット部隊がルーチンワークで作業終了……という感じ。大雑把なまとめですけれど。(2007/08/23,2010/10/01改稿)

【タンタロスの輪】【コンラッド消耗部隊】【エクスペンタブルズ】【リチャード・エイヴァリー】【惑星開発】【良い話と悪い話】【ロボット】
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「クレイトスの巨大生物」 リチャード・エイヴァリー

2010-10-01 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
 エクスペンタブルズ・シリーズ(コンラッド消耗部隊)の1冊目。
 このコンラッド消耗部隊シリーズは創元推理文庫SFでは絶版。アマゾンの中古では1円の値段がついてトホホな状況ですが、話としてはかなり面白いのでお勧め。イラストをリニューアルしたらまだまだ売れると思うけどなあ。

 人類が太陽系をその版図に加えた時代。
 太陽系外の調査や入植も始まっていますが、まだまだコストもかかる上にリスクも高いのが現状。そこで、優れた才能や技術を持ちながら、犯罪者や政治犯など使い捨てても惜しくない人材を惑星開発の先遣部隊として投入し、本格的な入植の足場固めをおこなわせるようになっていました。
 チームのリーダーであるコンラッド大佐は、国連宇宙軍で功績をあげながら命令無視で軍法会議にかけられた、いわば堕ちた英雄。このコンラッド大佐が、バイオニック・ジェミーみたいにサイボーグになった女医インディラ・スミスや狂気の天才カート・クワンゴらの人間チームと自律式ロボットたちを率い、無人探査機が植民地として有望と判断した惑星へと乗り込んでいくのですが、植民に最適と言われていたのに巨大なミミズのバケモノが暴走しているし、部下は社会的に不適応な人間ばかりだし、ロボットは融通きかないし、隊長本人は偏執狂で特攻願望があるし……。

 宇宙植民SFというのはそんなに多くなくて、ニーヴン&バーンズ&パーネルの『アヴァロンの闇』とか、マキャフリィの『竜の夜明け』とか、ゴドウィンの『宇宙の漂流者』あたりがメジャーどころ(?)。星野之宣の『2001夜物語』はぎりぎり入る気がするけれど、『のび太の宇宙開拓史』とか『司政官』はたぶん違う。宇宙植民ではなく宇宙探検というともっと増えるのだけれどね。
 こちらは、一口で言うと「ワイルド7」の宇宙植民版。高度な技量を身につけたタフな元犯罪者や社会不適格者たちが、世界のより良き未来のために戦い、死んでいく話。宇宙植民の第一陣は、最新装備を用意したプロフェッショナル集団というのがあたりまえではあるけれど、そこに「こいつを信用して良いのか?信頼できるのか?」という要素を加えたところがポイントです。

【クレイトスの巨大生物】【コンラッド消耗部隊】【エクスペンタブルズ】【リチャード・エイヴァリー】【深宇宙探査】【惑星開発】【良い話と悪い話】【ロボット】【ベーコンエッグ】【ビーフバーガー】
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「石の花/金星探検/ふしぎの科学/アファナーシェフ童話 …他」 少年少女世界の名作38

2010-01-13 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
 グリム童話とアンデルセン童話の違いは、グリム兄弟が民話や説話を収集して編纂したのに対して、アンデルセンの作品は創作童話がメインであるということ。
 このソビエト編5はグリム・タイプの作品が目立ちます。
 『アファナーシェフ童話』もロシアの昔話を編纂したもので、金のガチョウの変形で兄弟の遍歴物語「金のたまごをうむカモ」、ほら男爵の冒険の元ネタになっただろう「空をとぶ船」、正直男の投資話「三つの銅貨」、豆から生まれた子供が鉄の蛇と戦う「パカチガローシコ」、貧乏な男が悪魔を欺す「シャバールシャ」の5編。
 バジョーフの『石の花』もウラル地方の伝説をまとめたうちの1編。カーチャが石を切る姿に萌えたのだけれど、今考えれば、この話は山の女王と若き天才石工ダニールシコ、そしてダニールシコの許嫁カーチャの三角関係にすぎない気がしなくもありません。そう思うと、山の女王ってイイヒトですよね。
 ロケットの父『ツィオルコフスキー』の伝記は、フォン・ブラウンやコロリョフの話を読む前に基礎知識として読んでおきたい一編。私が最初に読んだのはゴダードの伝記でしたけれど。
 ウラジミール・イワノヴィッチ・オルロフの『ふしぎの科学』は影や泡などをテーマに奔放に繰り広げられる科学コラム集。緯度によって影のできかたが変わるから彫刻の様式も変わるとか、ヘッドライトの位置を上にしたら夜間走行できなくなった戦車の話とかいろいろ面白いエピソードが満載。ただし解説でも著者の経歴は不明とのことで、今ネットで検索しても翻訳された『ふしぎの科学』もしくは『科学のふしぎ』の著者として書誌的に名前がひっかかるだけです。ロシア語で検索すると、科学エッセイストでイズベスチヤ紙の科学部長を務め、レーニン勲章をもらったらしい……くらいまでは分かりますが。
 そして最後は『ドウエル教授の首』で有名な“ソ連SFの父”ベリャーエフの『金星探検』。世界中で恐慌が起こり革命の嵐が吹き荒れている中、金持ちたちがロケット<箱船号>で地球脱出を試み金星に不時着する話ですが、昭和初期の作品だけに有産階級と勤労階級の対立が強調されています。そのあたりがソ連的ですね。でも、缶詰の質が悪すぎです。

『アファナーシェフ童話』原作:A・H・アファナーシェフ/絵:小野かおる他
『ツィオルコフスキー』文:瀬川昌夫/絵:伊藤展安
『石の花』原作:パーベル・バジョーフ/絵:中山正美
『ふしぎの科学』原作:B・オルロフ/絵:若月てつ
『金星探検』原作:アレクサンドル・ベリャーエフ/絵:武部本一郎

【ワイドカラー版少年少女世界の名作38】【ソビエト編5】
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「宇宙船ビーグル号の冒険」 A・E・ヴァン・ヴォクト

2010-01-12 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
「世の中には実際苦しい目にあってみないと心を変えることができぬという人間もあるのだ。現実に直面し、やっと考えが変わったところで、はじめてもっと抜本的な手段を感情的にも受け入れることができる」
 正しい提言が常に受け入れられるわけではないことを知っており、それで諦めるのではなく受け入れられるタイミングを計り続けるのがエリオット・グローヴナーという総合科学者であった。

 大勢の科学者を乗せて宇宙探検に飛び立ったビーグル号の前にはさまざまな世界の予想もしなかった怪物が襲いかかる。
 その危機的状況を打開できるのは専門バカの科学者ではなく、すべての科学を縦断的に分析しようという総合科学部唯一の部員、エリオット・グローヴナー部長だった……。

 黒い破壊者ケアル(クァール)、1つの銀河系全体に広がる無形生物アナビス、幻覚を送り込む鳥人リーム、物質透過をする緋色の悪鬼イクストル……。
 さまざまな宇宙の怪物たちに挑む科学者たちの物語ですが、手元にあるのは創元版。ハヤカワ版も機会があれば手に入れて読み比べたいものです。

【宇宙船ビーグル号】【A・E・ヴァン・ヴォクト】【小農民期】【不規則原子】【原子放射線砲】
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