付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「G.L.」 長野聖樹 

2011-05-15 | 超能力・超人・サイボーグ
 パッと読んで『鉄腕バーディー』みたいと思ったけれど、読み進めていけば元ネタをさらに遡って『ウルトラマン』までは辿れた。多少『サイボーグ009』だったりするけれど、ハル・クレメントの『20億の針』までは遡らない。

 犯罪者を追って宇宙から飛来した宇宙人と衝突し、いったんは死亡した少年・愛洲隼人は命は取り留めたものの、ボディの完全修復が終わるまでは女性型ボディに脳を移植されることとなった。
 しかし、義妹マリアこそが犯罪者の狙いであると知った隼人は、正体を隠し、転校生・藍田伊織としてマリアと同じ学校へと潜入する。だが、彼/彼女のボディのフル稼働限界時間は3分しかなく、それ以上は脳に付加がかかりすぎるといわれていた……。

 サブタイトルが長すぎだけれど、とりあえず内容は的確にまとめていると思いましたが、敵が強い割にはショボすぎるので単なるドタバタ・コメディにまとまりそうで不安。最初からオチャラケだと、あとでシリアスに落ちつかせにくい気がするけれど、これからどう転がしていくんだろう。
 近衛機構のエキスパート、ミツヨシがなかなか良い感じ。というか、こういう展開で異星人が常識的な行動をとりながら、世間的には模範的な優等生である地球人マリアの方がときとして言動がおかしくなるのもポイント。このあたりはバランスの取り方が巧いよね。
 なので、敵方もこのメンツが敵対するにふさわしい相手であって欲しいのだけれど。

【G.L.】【気がついたら女の子になって妹を守ることになったから、とりあえず揉んでみた!】【長野聖樹】【切符】【入浴】【社会見学】【富士山】【ブラコン】【皇女】【豊胸】
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「永遠に生きる男」 ミラー&ハンガー

2010-12-25 | 超能力・超人・サイボーグ
「だれにも負けたくないと思うものはいずれは勝つのだよ」
 無名の科学者エヴァーリングの言葉。

 西暦3097年、地球は<マスター>と呼ばれる不老不死の男によって統治され、繁栄していた。しかし、突如発生した疫病は地球全土に蔓延して多くの人々を死に追いやり、ついには<マスター>の妻までが感染してしまう。
 そこに現れた無名の科学者エヴァーリングは、自分が発見した治療法を教えるのと引き替えに、不老不死の秘密を明らかにせよと迫ってきた……。

 個人的には生化学者ロンディング博士の行動にポイントを絞った方が面白そうに思えるのだけれど、1956年の作品なのでロマンスとか野望の方がメインとなります。

【永遠に生きる男】【リチャード・デウィット・ミラー】【アンナ・ハンガー】【斉藤寿夫】【テラ市】【疫病】【不死人】
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「ランジーン×コード」 大泉貴

2010-10-29 | 超能力・超人・サイボーグ
「人間はどいつもこいつも、程度の差はあれ、自分にとって都合のいい真実を選びたがる傾向にある。その真実でもって、世の中を解釈しようとする」
 福地警部の言葉。

 遺言詞(いごんし)性統合失調症候群の罹患者は脳神経に障害が発生し、世界の認識が常人とは大きく異なってしまう。そして彼らは同じ症状の者同士でコミュニティを築き、第三者から見れば発音も文法もデタラメな言葉で会話をかわしながら、それぞれの認識する世界で生き始める。重力が反転したと思いこみ、自分を天井から宙づりにしたり、暗闇の世界で聴覚だけを頼りに生活したり。
 そんなコトモノと呼ばれる罹患者が増え始めた時代。自然の流れのように、他のコトモノを捕食する存在が出現する。全国各地でコトモノたちのコミュニティが襲撃され、壊滅するという事件が相次ぎ……。

 言語というOSが変われば情報処理速度も処理内容も変わるというのがディレーニイの『バベル-17』なんだけれど、これもそんなような話。
 コトモノたちの言動は一般人から見れば奇異だけれど、彼らの世界の中では正常であり、むしろ一般人には得がたい力を本能的にというか自然に身につけていて、利用しようと思えば宝の山に見える……というシチュエーション。神林長平の作品が好きな人には、こういう自己認識が世界を変えていくという話は取っつきやすいかも知れません。

【ランジーン×コード】【大泉貴】【しばの番茶】【このライトノベルがすごい!文庫】【鏡の国のアリス】【美術部】
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「スーパーロボッ娘 鉄刃23号」 舞阪洸

2010-10-26 | 超能力・超人・サイボーグ
 正体不明の差出人から届けられた腕時計をはめたそのときから、春日井鷹斗は、スーパーロボっ娘「鉄刃23号」の操縦者となった。美少女タイプで無敵の人造人間が堕天使になるか悪魔になるか、すべて鷹斗次第なのだ……。

 突如押しかけてきたミニスカ美少女ロボのエロトークに翻弄されながら、されながら……されているうちに話が終わってしまったよね? まあ、平穏な日々を維持することには成功しているけれど、このままあっちこっちの事件に首を突っ込む羽目になるのか、はたまたぬるい学園コメディに走るのか、どっちの方向へ行くのかシンシンキョーミであります。
 ネタ的にはかなり古め。別に本筋には関係ないですけども。

【スーパーロボッ娘 鉄刃23号】【舞阪洸】【ゴロボッツ】【エロトーク】【全裸】【TPO】【美少女仮面ポワトリン】【マジンガーZ】【セクサロイド】【ヴォーカロイド】【バトルスキンパニック 】
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「空色パンデミック(3)」  本田誠

2010-10-06 | 超能力・超人・サイボーグ
「私はファミ通文庫、あまり読まないから。電撃とか富士見ファンタジア文庫とかメジャーどころはおさえているけれど……」

 クリスマスまであと数日。暑い日が続いている。
 そんな折、アメリカから来日した空想病の権威である研究所長は、生意気な金髪美少女だった……。

 ネタ的にそろそろ限界かな。
 面白いし、仕掛けもいろいろメタフィクション的に工夫しているけれど、前提が「周囲を自分の妄想に引き込む空想病の物語」なのでパターンが読めてしまうのです。配役が固定している推理小説のようなもので、どんな怪事件が起きても犯人の正体は明白だよね?とまるで少年探偵の江戸川乱歩作品のようなもの。
 異変が起きても「空想病が原因だよね」だし、この主人公の苦境への陥り方を見れば、誰の仕業がすぐに見当がつきます。かといって、「フリーダム!」「ディスティニー?」というやりとりを愉しむこともできません。
 もう少し、人間関係のやりとりに話の中心がシフトして愉しませてくれると良いのだけれど、そのあたりは11月に出るらしい短編集に期待してみます。

【空色パンデミック】【INNOCENT GIRL DAYDREAMING】【本田誠】【庭】【クリスマス】【天才少女】【不死】【ファミ通文庫】
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「空色パンデミック(2)」  本田誠

2010-05-04 | 超能力・超人・サイボーグ
 この作品を超能力テーマだといってしまうには問題があるけれど、こういう主人公を中心とするごく狭い人間関係の範囲内で世界の命運を揺るがしかねない事件が発生し解決する……というのは、こういうくくりにいれないと仕方がないです。病気ですし。

 自分を特別な存在と思いこみ、現実と空想の区別が不可能になる「空想病」。その中でも「劇場型」は周囲を大規模に巻き込んでしまう影響力があり、過去に世界戦争の寸前にまで波及したことがあるという。
 結衣の引き起こした世界崩壊の危機を救った景だったが、あの結末は実は時間稼ぎにしかなっておらず、世界改編は静かに続いていたのだ。太陽は西から昇り、サクラは10月に咲き誇り……。

 本当に世界改変がおこなわれているのか、それとも誰かの妄想に巻き込まれているだけなのか? いずれにせよ、やることは変わりないのです。
 読み終わると「面白い」という読後感なのだけれど、読んでいる最中は非常に辛いのです。だって「フリーダム、そこまでだ!」「ディスティニー、何の用だ?」といかにも中二病満載の物語に巻き込まれるのですから、いたたまれません……。

【空色パンデミック】【INNOCENT GIRL DAYDREAMING】【本田誠】【庭】【バット】【ボーイ・ミーツ・ガール】【聖戦】【裏設定】
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「空色パンデミック(1)」 本田誠

2010-02-06 | 超能力・超人・サイボーグ
 『空色…』と聞いて『空色みーな』と連想してしまった私はダメ親父です。

「見つけたわよ、ピエロ・ザ・リッパー! ジャスティスの仇、とらせてもらうわ!」
 高校受験の朝、いきなり見知らぬ少女に雑踏のど真ん中でそう叫ばれたら、人はどう行動すべきなのだろう?
 それが仲西景と穂高結衣の出会いだった。
 結衣さんは“空想病”だ。発作を起こすと、自分の空想上の存在になりきってしまうのだ。
 これは、れっきとした病気だ。単なる妄想癖ではない。幸いにも結衣さんは違ったけれど、劇場型空想病ともなると周囲も自分の空想に巻き込んでしまい、最悪のケースとしては過去に世界を滅ぼしかけた事例もあったらしい……。

 セカイ系だけれどセカイ系ではない、不思議なボーイ・ミーツ・ガールの学園ストーリー。いきなり1巻とか書かれているけれど、これだけでも完結しているといえばいえるので、試しに手を出しても損はないと思います。

【空色パンデミック】【本田誠】【セカイを敵にまわす時】【庭】【第11回えんため大賞優秀賞】【ボーイ・ミーツ・ガール】【ギャラ】【感染】
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「新・特捜司法官S-A(10)」 麻城ゆう

2010-02-05 | 超能力・超人・サイボーグ
「君が、僕の理想のネオヒューマンだったんです」

 シリーズ完結。『特捜司法官S-A』の物語もおしまいだそうです。
 大団円かどうかは読む人にお任せということですが、安心して読み終えることのできたシリーズでした。
 頭脳も肉体も「人間」以上であり、警察から司法まで犯罪に対する生殺与奪のすべてを与えられた存在でありながら、あくまで“道具”として耐用年数が過ぎれば破棄されるしかない「合成人間」の特捜司法官。今回はそれに第三の存在として、「人間」を継ぐ者として台頭しつつある「ネオヒューマン」を絡めての事件でしたが、ここは「人間」vs「ネオヒューマン」だけでなく、「合成人間」も絡めてのテーマにまで発展させて欲しかったなと、そこが残念。
 それから、全体として伏線を張って回収する流れにちょっとムラがあって、10巻になってバタバタと畳まれた印象がありました。いや、10巻で大団円を迎えようとは、9巻を読み終えた時点では想像できませんでした。
 そんなことを言いつつも、面白い物語であり、愛おしいキャラクターたちでした。

【新・特捜司法官S-A】【ジョーカー外伝】【麻城ゆう】【道原かつみ】【スポンサー】【超高度量子通信システム】【メル友】
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「十三番目のアリス(4)」 伏見つかさ

2010-01-29 | 超能力・超人・サイボーグ
 金髪碧眼の大和撫子、ツンデレのツンがひどすぎな九条院アリスの物語も4巻ですが、話はここで中断し、電撃以外にも書きつつ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』が好調に巻を重ねてもう4巻。もう2冊くらいあれば、完結させることもできそうな展開なんだけどなあ。

「自信がないだなんていうのは、怠けものの言い訳でしかありません。やることをやらないで堕落している生ごみ以下の人間が、口癖のようにのたまう台詞です」
 自分のことさえ信じられない人間に生きている価値はないと九条院アリス。

 南海の人工島に建設された姉妹校に短期留学……といっても、今は夏休み。留学というよりバカンス気分のアリスや三月たちだが、そこが組織の拠点の1つであることを知っているリリスの前に七番目のノエルが立ちふさがる……。

 キャッチコピーは「ハイ・ゴシックストーリー」だけれど、それは間違っているでしょ? いくら「ハイ」を付けても中世っぽいわけでもないし、そんなに神秘的でも幻想的でもないし……。
 確かに、心臓に古代遺跡から発見したオーパーツを埋め込んだ少女が、同じ運命の少女たちと死闘を繰り広げる……という基本ラインだけを抜き取ればゴシック小説っぽいといえないでもありませんが、美少年に女装させてお買い物とか、ドタバタ倒錯的ソフトSM学園小説な部分の方が目立つので、あまりそんな雰囲気にはなりません。まあ、それでシリアスなストーリー部分を切り取ってしまうと『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』になってしまうのでしょうが……。

【十三番目のアリス】【伏見つかさ】【シコルスキー】【水着コンテスト】【ぬいぐるみ】【秘密基地】【メガフロート】【女装】【毒舌】
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「三千世界の鴉を殺し(15)」 津守時生

2010-01-23 | 超能力・超人・サイボーグ
「個人的な記念日は、時々人生における時限爆弾に変わるね」
 見知らぬ少佐の言葉。

 宇宙軍を部隊にしたホームコメディと思えば間違いない気がしてきました。それも古いアメリカ製の、わざとらしい笑い声が挿入されるやつ。脳内では『奥様は魔女』と差し替えられようとしています。
 今回は、男と女が別れるだとかよりを戻すだとか、殺す殺されるの一幕。ちょうど1時間ドラマ分くらいの話でした。
 面白かったけれど、本筋をすっかり忘れてしまった気がします。

【三千世界の鴉を殺し】【津守時生】【麻々原絵里依】【離縁】【復縁】【贈収賄】【ドブネズミ】【男の嫁】【カクテル】【結婚詐欺】
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「十三番目のアリス(3)」 伏見つかさ

2010-01-21 | 超能力・超人・サイボーグ
「真の毒舌とは、相手の堪忍袋の緒を、薄皮1枚残すようにして放つものなのです」
 九条院アリスによる毒舌奥義継承。

 3巻目にしていきなり番外の短編集です。早いなあ。
 むしろ、今までの展開を見ていると本編・番外編関係なく、連作中短編形式で続けていった方が良い気がします。

 別の話だったら主役カップルになっていそうな宮田怜奈と桐山誠人の出会いを描いた「女子寮の眠り姫」。早朝の女子寮に乗り込んで半裸で寝ている美少女を起こして学校に連れてくるなどという仕事が公務だなんて、普通の高校生なら鼻血もので狂喜乱舞ですが、誠人くんにとっては迷惑千万な厄介ごと。まあ、相手が「箱入りお嬢様」から「駄目オタク」にジョブチェンジした人ですから、癖がありすぎるのが困りものですが、かわいいところもあるようです。世間様には通用しませんが。
 「どきどき温泉パニック!」はせっかくみんなで温泉に来たなら覗かないのは失礼にあたると、怜奈が男湯覗きに突貫する話。ダメダメです。
 殺戮人形の十二番目、銀髪紅眼の美少女・リリスの生い立ちを描いた「十二番目のリリス」は2巻の裏話でもありますが、やはり、リリス主人公の話でも良かったんじゃないかと思わせる中編。まあ、そうすると意外と良くある話のようになってしまうので、今の形が正解なのかも知れません。でも、アリスに主役を任せていると話が進まない気がするのは気のせいでしょうか。
 最後は、美少女にしか見えない鬼百合三月が純朴でのんびりした少年ながら、根はしっかり年相応にスケベであり、純朴であるがゆえにおのが欲望をあからさまに口に出してしまうという「純情★ボーイ・ミーツ・ガール」。「十二番目のリリス」でちょっと暗くなってしまった雰囲気を脳天気方向に修正して3巻の締めとしています。

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「十三番目のアリス(2)」 伏見つかさ

2010-01-20 | 超能力・超人・サイボーグ
「『負ける』って、そういうことじゃないわ。貴女は、一人で勝手にあたふたと走り回っていただけ。『負けた』なんて言葉を使っていい段階じゃない」
 だから正面から敵を見て、戦い、勝てと告げる母ラミアの言葉。

 三番目を撃退したものの、それが平穏な日々が訪れることを意味してはいなかった。
 転校してきた美少女リリス・グラムに誘惑されるかの鬼百合三月の言動に、気にせぬフリをしていても婚約者である九条院アリスは気が気ではない。そんなアリスとリリスの関係は一触即発だが、その頃、月城町に奇妙な二人連れが姿を現す。
 この老紳士然とした口調の青年と大食いのドジっこメイドこそ第十研究室の室長、<縫合義体>アレク・フランケンシュタインと彼の生み出した十番目の殺戮人形・悠里であった……。

 ツンデレすぎて単に「性格悪い」でひとくくりにされそうな主人公アリスと、純朴なのはいいけれど何が良くてアリスに付き合っているの?と思いたくなる婚約者三月。それって「ヨーゼフ・ツンデレ博士型双極性パーソナリティ障害」と「どM」ってだけでないの?とツッコミたくなります。
 ドジで大食いで怪力なメイド型戦闘ロボというのもなかなかお馬鹿で良いですが、あまりに直球勝負なのでもう少しひねってもいいんじゃないかと思いました。

【十三番目のアリス】【伏見つかさ】【シコルスキー】【ゴシックロリータ】【メイド】【大食】【プール】【ぺたんこ】【ロケットパンチ】
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「十三番目のアリス」 伏見つかさ

2010-01-15 | 超能力・超人・サイボーグ
「私は三番目よ。貴女が眠らせている力を暴き出してあげるために来たの」
 それは平穏な日々の終りを告げる言葉。

 新古書店の店頭で見かけ、「ふうん。伏見つかさのデビュー作なんだ」と思って買おうかどうか迷い、結局また今度と諦めて帰ったら、自宅の書庫の奥に既刊がそろってましたよ。これはいつ誰から譲り受けたのだろう……?

 傲岸不遜で知られる九条院アリスには鬼百合三月という許嫁がいる。なよなよしていて女のようではあるけれど、アリスは三月のことを気に入っている。本人には言わないけれど。
 アリスが三月に告げていないことはまだ他にもある。
 実はアリスは一度死にかけたときに、母親のラミアによってロストテクノロジー・スフィアの移植手術を受けていたのだ……。

 将来の戦略を考えて子供同士を許嫁にするような裕福な家庭が、どちらも子供に自分のことは自分で片づけるよう育てているってあたりが面白いですね。放置されているというより、本格的な貴族教育のような気がします。特にアリスの方は前後の事情から考えると、母親が放置しているというより生き残り戦略というのは確実です。
 シリーズ開始としてのつかみは上々ですが、さてどうなっていくのか愉しみに追っていきたいと思います。

【十三番目のアリス】【伏見つかさ】【シコルスキー】【ゴシックロリータ】【冷嬢の心得】【ジャバウォック】【LTスフィア】
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「殺戮のための超・絶・技・巧~パーミリオンのネコ」 竹本健治

2009-12-14 | 超能力・超人・サイボーグ
 1980年代の終わりに神坂一が発表した『スレイヤーズ』を読んだとき、連想したのは竹本健治の『パーミリオンのネコ』でした。それもシリーズ1作目の『殺戮のための超・絶・技・巧』。
 『スレイヤーズ』はライト・ファンタジー、『パーミリオンのネコ』はハードボイルドSFとまったく別物ですが、キーとなる部分の考え方に共通点があったのですね。つまり「威力=パワーではない」ということ。魔法でも超能力でも兵器でも、パワーがあればあるほどスゴイと大艦巨砲主義に陥りがちなところで、軽くポンっと「弱い武器でも使い方次第でいくらでも効果を上げることはできるんだぜ」と提示してみせる凄さです。

 「100万分の1(パーミリオン)のネコ」と呼ばれる彼女は、存在自体が極秘扱いとされる凶悪犯罪者を狩ることを任務とする女性スナイパー。目的も方法も謎というテロ事件の主謀者“大鎌”を追って見棄てられた鉱業惑星グラビアに降り立ったのだが……。

 シリーズとしては、このあとに『タンブーラの人形つかい』『兇殺のミッシング・リング』『魔の四面体(テトラヘドロン)"の悪霊』と続きますが、救いのない話ばかりです。女子供が死にまくる話はいかんよ……。

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「ねじれた町」 眉村卓

2009-11-13 | 超能力・超人・サイボーグ
 眉村卓という作家は自分にとっては『司政官』とか『日がわり一話』といった作品よりも70年代の『時空の旅人』とか『まぼろしのペンフレンド』といったジュブナイルSFで記憶に刻み込まれているのです。ですから、一度は絶版となったジュブナイル作品が全部とは言わないまでも今でも手にはいるのは嬉しいことです。fシリーズよ、ありがとう。

「このQ市ではね、何があっても、びっくりしちゃいけないのよ」
 和田行夫がQ市の笹野原中学校に転入したその日にクラスメートの花巻千恵子はそう言った。街を歩いていて別の時代に紛れ込もうと、高校生が偽金を銀行に預けに来ようと、それはよくあることなのだ……。

 時間も空間もそれどころか人の心までが歪んだ町に引っ越してきた少年の物語。SFというよりファンタジーに近いかも知れませんね。

【ねじれた町】【眉村卓】【緒方剛志】【講談社青い鳥文庫fシリーズ】【タイムスリップ】【鬼】
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