付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「かくして少年は迷宮を駆ける1」 あかのまに

2024-06-18 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「お前が、お前等が望まなくても俺がお前らを救ってやる。身勝手にな」
 ウルはお前の意思なんか関係ないとシズクに言い放った。

 あらゆる経済が迷宮都市を中心に回る、迷宮大乱立時代。
 名字を持たない流浪の民の少年ウルは、くそったれのオヤジのせいで窮地に立たされていた。金貨10枚の借金を残した父親があっさり死に、そのカタに妹アカネが売り飛ばされるというのだ。しかも、実はアカネは希少な精霊憑きで、買い取るには金貨1000枚の価値があるという。上級民でさえ一生かかって稼げるかどうかの金額だ。
 迷宮鉱山ケイカの管理権を手にしている金貸し屋【黄金不死鳥・クリード支部】を掌握したディズ・グラン・フェネクスに、ウルは自分が冒険者となり、黄金級に到達することで支払うと言い切ったのだが……。

 何も持たない最下層民なのに、なまじ孤児院で教育を受け、道徳を半端にたたき込まれてしまったために無法者にもなりきれない、良識を捨てられない少年が、迷宮攻略の中で自分の殻を破っていく物語。これだけ兄が頑張っているのに、幼い妹が「わたしおたかいな?」と若干他人事なのが泣かせます。ウル、がんばれと。
 イラストはきっちり描かれていて、派手な戦闘シーンからのんびり武器庫で装備を見繕うところまで、おっさんから美少女、モンスターから奇妙きてれつな武器まで網羅されてます。良いですね。
 普通に小説として語られてますが、ゲーム的に「迷宮鉱山ケイカ」とか場所が表示されたり、獲得した賞金やアイテムがゲームリザルト的に挿入されるのがちょいと違和感あります。この情報いる?と。

【かくして少年は迷宮を駆ける1~強欲の迷宮と借金まみれの新米冒険者】【あかのまに】【深遊】【MFブックス】【これは冒険の物語】【解せぬ】【賞金首】
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「魔王討伐から半世紀、今度は名もなき旅をします。」 じゃがバター

2024-06-15 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「あんたら、何の集まりなんだ?」
 スイルーンに庶民の一般常識を教える係に雇われた傭兵タインは、ついにかねてより疑問に思っていることを聞いてしまった。名前まで聞いてしまったら、もう後戻りできない。

 魔王討伐から50年。勇者は戻らず、魔女は森に去り、神官は神殿に入り、俗世に残るのは剣聖と呼ばれるスイルーンだけだが、彼ももう72歳。彼はただ女神との約束が果たされる日を待つだけだ。
 だが、魔王討伐から半世紀を祝うパーティーのための衣装の仮縫いの日、スイルーンは白い光に包まれたかと思うと魔王討伐当時の姿に若返っていた。女神ラーヌの古い約定が果たされるときが来たのだ……。

 勇者パーティの一員だった剣聖は人生の終焉を前に、再びかつての旅路を辿る旅に出る事にした。なぜか女神の力で若返らされ、一人旅のつもりがだんだん同行者が増えてくるけど……という、『葬送のフリーレン』とかとプロットは似ているのに、その骨格にまとわりつく肉とか皮が別物なのでストーリーがまったく別物になっているという、創作論のお手本になりそうな1冊。
 じじいののんびり一人旅のはずが、仕事をほっぽり出してじじいがもう1人勝手に付いてきて、さらにかわいい孫娘たちが追いかけてきて、気がつけば勇者、魔女、神官、剣士に聖獣が加わって旅の仲間がそろってしまいます。そんな一行が、魔王と勇者の戦いが終わって(ほぼ)平和になった世界を旅していく物語です。
 イラストも巧いし、レイアウトも絶妙。中央、上半分が空白の構図でタイトルも何も入ってこないのは珍しくて、そこがなんともいえず良いのです。この先に進むのだというイメージがありました。

【魔王討伐から半世紀、今度は名もなき旅をします。】【じゃがバター】【toi8】【富士見ファンタジア文庫】【『冒険』を終えたあとの方が、人生は長くて、楽しい。】【騒がしくも気ままな“二度目”の英雄譚】
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「最後の英雄に捧ぐ花嫁学園」 御鷹穂積

2024-05-15 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「人が何かを為すのに、努力以外に必要なものなどないわ」
 アレクは平然と言い張るが、ハルトヴィヒは強者の傲慢と反発する。もちろんアレクは無駄な時間をかけることは努力のうちに入らないと言い切る。

 最強の魔法使いアレクは平和に退屈していた。
 そこで今は無理でも300年くらいあれば強敵が育っていないかと長い眠りに就いたのだが、目覚めたアレクを待っていたのは自身に匹敵する強敵ではなく、仲間たちが彼のために300年かけて用意した花嫁候補生たちであった……。

 仲間たちが世界に平和をもたらした彼のために用意したのは、英雄アレクに相応しき伴侶を育成する、全校生徒が花嫁候補の魔法学園だった……という学園ラブコメ。長寿の仲間はまだ壮健だよ。
 実力ある傲慢キャラが好きな人にお勧め。

【最後の英雄に捧ぐ花嫁学園~時を超えし魔法使い、次代の姫と絆を結びハーレムを築く~】【御鷹穂積】【Genyaky】【富士見ファンタジア文庫】【恋を知らない英雄による規格外のハーレムファンタジー】
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「重装令嬢モアネット」 さき

2024-05-08 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「レンガで殴ればやっぱり死にます」
 魔女だろうが魔女殺しだろうが、レンガで殴れば死ぬとモアネット。

 婚約者のアレクシス王子に「醜い女と結婚なんてするもんか!」と罵られたのがショックで、モアネットはそれ以来「自分は醜い、醜い……」と、全身甲冑姿で1人森の奥に住んでおり、もはや誰も彼女の顔を覚えている者はいない。
 ところが、その間に元婚約者の王子は何者かに呪われてしまったらしい。ありとあらゆる不幸や災難が矢継ぎ早にひっきりなしに降りかかってくるのだという。
 いきなり森の館に押しかけてきた王子と従者の騎士パーシヴァルは、モアネットが王子に呪いをかけた魔女ではないかと言い出した。謝るから呪いを解いてくれと……。

 甲冑娘と呪われ王子と寝ぼけると壊れる騎士のドタバタ珍道中。
 令嬢ものも、「野人令嬢」「凶乱令嬢」「石投げ令嬢」「海兵令嬢」「鉱石令嬢」「大相撲令嬢」「ヤクザ令嬢」等々、タイトルの段階でキャラ立ちしているものにハズレはまずありません。全身鎧の令嬢といえばマンガ『うる星やつら』の水乃小路飛鳥さんが嚆矢として、それに続く「顔どころか性別すら確認できない全身鎧」さんもちょこちょこいたはずですが、主人公としては初かも。
 
【重装令嬢モアネット】【さき】【増田メグミ】【角川ビーンズ文庫】【究極のラブコメディー】【三すくみ】【魔女殺し】【可愛いにゃんこ】
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「英雄その後のセカンドライフ」 芝村裕吏

2024-05-02 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「ハムを粗末にするものは自分がハムにされても文句は言えない」
 オークの言い伝え。

 海軍提督シレンツィオ・アガタは「アルバの宝剣」と謳われる、不世出の英雄である。しかし、あまりに活躍しすぎたので、戦場が落ち着くと貴族に任じられて艦隊から引き離されてしまった。
 しかし、武装商船で生まれ育った男がいきなり領地貴族に成れるわけではない。海の生き方と陸の生き方は違うから、まず2年間ルース王国の士官学校に留学しろということになった。15歳ばかりの学校に31歳が送り込まれるのだ。
 ところがどこで誰が間違えたのか、彼がエルフの国を経由して送り込まれたのは海辺の士官学校ではなく、山中の幼年学校であった。下は8歳、上は14歳の幼年学校に送り届けられた31歳。
 ところがエルフの校長は何の問題もないと言い切った。人間の31歳はエルフ換算で8歳だからなんの問題もないのだと、さすが1000歳になるエルフ。だが、エルフには人間の名前も顔も区別できないのかもしれないが、シレンツィオこそ最もエルフを殺した男、「ニアアルバの悪鬼」なのだが……。

 戦争で誰よりもエルフを殺した伝説の天才海軍提督が、何の間違いかエルフの国の幼年学校でエルフの8歳児(人間の年齢に換算して32歳とか33歳)に交じって勉強する羽目になり、気がつけば羽妖精(ピクシー)にまとわりつかれながらエルフの少年少女相手に飯を作っている話。人生の終わりが見えた「伝説」と呼ばれる人物の、微笑みから始まる再出発の物語という語り出しだけれど、イントラシア妖精空軍とか大軍師ガーディとかが別の国の話として言及されているので、だいたい時代とか世界とかはそのあたりらしい。
 外野では誰がそんなところに英雄を送り込んだのかと国の内外に波及する責任問題になったりしているし、異次元とかから謎の敵の襲撃とかあるのだけれど、気がつけば商人国家の政治とかエルフの国との戦争の話とかどこかにいっちゃって、ひたすら悪オヤジが蘊蓄たれながら食材集めて料理している話になっていてビックリ。巻末にはレシピも載っているけれど、これがイタリア料理なので、なるほど商人=貴族による合議体国家アルバとは、最盛期ヴェネツィアあたりのイメージで間違いないのねと納得。
 ちょい悪おっさんから美幼女までしっかり描いてくれるしずまさんは素晴らしいと思いました。

【英雄その後のセカンドライフ~しかし子供に料理を振る舞うのは楽しいかもな】【芝村裕吏】【しずまよしのり】【メディアファクトリー】【(復讐にも、栄達にも)特に興味はありませんが】【カクヨム】【電子妖精】【妖精空軍】【この海のリハクの目をもってしても】【激おこプンプン丸】【お茶】【乾燥パスタ】
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「猫かぶり令嬢アリアの攻防」 中村颯希

2024-05-01 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「外にぶら下げた財は、どれだけ貯め込んでも、盗まれてしまうかもしれない。けれど、頭に入れた教養と、心に込めた愛は、けっして誰にも奪われない」
 アリアは本当に大事なものは誰にも盗まれないと言い張る。

 清楚な美少女として社交界で評判になりつつあるアリア・フォン・エルスターは男爵令嬢。しかし、実は疫病禍で妻子を亡くしたエルスター男爵に拾われた下町の孤児院育ちで、王都を騒がす泥棒だった。そもそもエルスター男爵が管理していた王家の宝冠が崩壊。冠に封印されていた呪われた宝石を密かに回収しないといけなくなったのだ。
 持ち前の機転と運動神経、そして精霊の加護で回収を進めていくアリアだったが、その前に美貌の聖騎士ラウルが立ち塞がった。ラウルは誰よりも精霊の加護が強く、アリアの仕掛けたトリックも簡単に見破られてしまう……。

 強かで世渡り上手な成り上がり貴族令嬢が怪盗として王都に跋扈。王都を騒がす怪盗を捕縛せんとする聖騎士との攻防が繰り広げられるのだけれど、途中から「求婚しにきた」「いやなんで!?」の別の攻防が始まる大混戦。
 物語は二転三転して、きれいに全1巻(続く余地はあるけれど)。

【猫かぶり令嬢アリアの攻防】【中村颯希】【イチゼン】【エンターブレイン】【KADOKAWAの新文芸】【泥棒令嬢】
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「天才魔術師を弟に持つと人生はこうなる1」 江崎乙鳥

2024-04-27 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「人の心を捨てて、あらゆる手段を用いて、辛勝。そんな話をしているのではないの。人道的でない手段を用いれば、必ず自身の母体の求心力が弱まるものよ」
 エイプリル先生はそう語った。魔術学校はルカとは戦えない。まともな手段では勝てないからと。

 12歳までに人はなんらかの〈神の恩恵〉が発現し、それが貴重なものであれば国に召し上げられて故郷を離れるのが通例だ。
 ポルカ村の狩人ルカは自分が瞬間移動というべき〈恩恵〉を授かっていることを自覚していたが、それが判定の際に平凡そうな「移動」と鑑定されたことから、これ幸いと山奥での狩人暮らしを続けていた。しかし、弟のリヒトが稀少な〈魔術使い〉と判明したことで状況は一変した。
 王都の魔術学校に招聘されたリヒトがルカが一緒でなければイヤだと言い張り、そして本来なら貴族用の「従者枠」が利用できるとルールの抜け穴が見つかったのだ……。

 弟を猫かわいがりする弓の名手の兄と、兄さん大好きでベタベタだけど新しい魔術具を次々と作る天才な弟が繰り広げる学園冒険譚。
 一見地味な表紙の装丁だけれど、このレーベルは元より目の大きい美少女が乱舞するようなイラストはあまり使わず、キャラクターよりストーリー優先のセレクトが主なので、いわゆる「図書館に置きやすい」本作りなのです。本格ファンタジーの入門編にちょうど良いかも。イラストも描きにくいヒュドラとかのモンスターからエイプリル先生の鳥仮面まできちんと描写していて文句なし。学園内地図とか鐘の時刻表も載っていて読者に親切。
 ただ、書誌データを確認しようとするとKADOKAWAによるレーベル統合で、ネット検索しにくくなりました。エンターブレイン単独では検索できないのです。KADOKAWAのサイト検索ではライトノベルの新文芸は2440タイトルとなっていますが、レーベルによる絞り込みだと表記されている「カドカワBOOKS」「MFブックス」「電撃の新文芸」「ドラゴンノベルス」の合計で1882タイトル。総数の2割が絞り込み対象から漏れていて、タイトルを知っていて逆引きするか、2440タイトル総当たりしないとデータが見つけられないダメUI。通販ストアを見るとレーベルでは認識されず「新文芸(男性向け)」でくくられてるみたい。違うだろ!?と思いますけどね。

【天才魔術師を弟に持つと人生はこうなる1】【江崎乙鳥】【ox】【エンターブレイン】【特殊な〈神の恩恵〉を授かった兄弟による本格ファンタジー】【弓の名手であり、ある特殊能力を持った兄と、天才的頭脳に恵まれた魔術使いの弟が織りなす冒険譚】【小説家になろう】【白い狩人】
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「魔女と傭兵3」 超法規的かえる

2024-04-11 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「“納得”とは、時にそれを得るためだけに命を懸ける者すらいる程の贅沢品なのだ」

 低ランク冒険者の狩り場付近に賞金首の昆虫型モンスターが出現。まだ等級不足のシアーシャは受ける仕事がなくなって、冒険者家業は開店休業。暇を潰しにジグと朝市へと出かけて焼き魚を満喫していたが、人間と亜人の諍いで周囲が騒がしくなって落ちついて飯も食えない。
 もとより人外であるシアーシャに人種間の問題に興味はないし、ジグにとっては剣を向けたら敵判定くらいの割り切りで関わりのない話だ。狩り場で蜥蜴人の冒険者たちの窮地を救ったのはたまたま。敵ではなかったし、助けられるから助けた、それだけのことだ。
 ところが若い女性(に見える)新人冒険者が普通に亜人と付き合っているのが面白くない者がいたらしい。冒険者ギルドの依頼をめぐって日々嫌がらせが続き、ついにシアーシャの堪忍袋の緒が切れた……。

 戦乱の大陸から逃れて異大陸に渡った魔女と護衛の傭兵。確かにここでは人間同士が争ってはいないけれど、それはここが平和な大陸だからではなく、魔物が跋扈していて人間同士争っている場合じゃなかった……という『魔女と傭兵』も無事3巻。今回は、真面目に冒険者としてランク上げにいそしんでいるのに、亜人とちょっと仲が良いからと嫌がらせしてくる人間至上主義者に、魔女がついにプチンと切れて大暴れする回。
 面白い話がちゃんと内容に合った巧い絵が付いて書籍化されるのは嬉しいな。暑苦しいおっさんも、蜥蜴のおっちゃんもみんな大事な物語の登場人物なのです。見所をきちんと描いてくれてます。血まみれでイッちゃってる魔女も美しいですね……。

【魔女と傭兵3】【超法規的かえる】【叶世べんち】【GCN文庫】【本格ファンタジー】【小説家になろう】
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「不良聖女の巡礼1」 Awaa

2024-04-02 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「いい人でありたいとは思っている。追放されても、心は聖女でいたいから」

 瘴気によって人類の生存圏が小さくなってしまった世界。キャロルは世界を救う聖女候補生5人の中で唯一の庶民で孤児院出身。しかし、聖女選定の儀式で発現したのは『腐食の力』。聖女の資格なしとして追放されてしまうのだが、彼女はもともとそんなお上品な聖女に収まるような器では無かったのだ。
 学生服を脱ぎ捨てて自由な気ままな旅に出たキャロル。ほとぼりを冷ますためにと最初は森奥深くで動物たちと暮らしていたのだが、ついに問題発生。持ってきていた煙草が切れてしまったのだ。
 町まで出かけて、小銭を稼いでタバコを買うだけのはずだったのだが……。

 面倒から逃げてるつもりがトラブルに次ぐトラブルで、ほぼ世直しの巡礼みたいになっちゃうキノコ使いキャロルの日々。他の4人の聖女が箱入り娘の貴族子女ばかりだったのに対して、彼女こそ実戦派の最強存在だった……というややオカルト寄りの空気、正統派のファンタジーですが、ウェブ版からはかなり改稿されてます。

【不良聖女の巡礼 1~追放された最強の少女は、世界を救う旅をする~】【Awaa】【がわこ】【オーバーラップノベルス】【神を信じない最強“不良”聖女が世界を救う冒険譚】【小説家になろう】【ハーメルン
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「廃嫡王子の華麗なる逃亡劇」 出雲大吉

2024-04-01 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 エーデルタルト王国の王子ロイドは優秀な魔術師だったが、この国は武を貴ぶお国柄。剣もロクに使えない王太子ではいけないと、あっさりロイドを廃嫡して弟のイオンを王太子に、ロイドは辺境の寂れた土地の領主へと追いやられることになった。
 腹いせに着火の魔法の護符を離宮に仕掛けたのだが、同じことを考えていたのが婚約者のリーシャ姫。この国は貞操観念が高すぎる国でたとえ婚約者といえども二夫にまみえるくらいなら死んだ方がマシというお国柄。リーシャも魔法の護符を離宮に仕掛けていたことから、せいぜいボヤ騒ぎのはずが連鎖して大炎上。
 これは辺境暮らしどころではないと国外逃走。途中で出会った元同級生のマリアが海外留学するというのに便乗して、そのまま飛行船を乗っ取ったまでは良かったのだが……。

 理不尽な理由で廃嫡された王子の流浪の旅……というとお約束パターンにはまりがちなところを、主人公の厚顔不遜なクズさと国民性によるヒロインたちの特異性から話がぶっ飛んでしまう『廃嫡王子の華麗なる逃亡劇』。
 冒頭の廃嫡されるくだりでちらりと主人公に同情しかけたものの、そこからの放火、乗っ取りと、落ち込むどころか反省のない傍若無人ぶりです。そのまま異国で冒険者暮らしとなるのですが、高慢な王族スタンスのまま贅沢し放題で横車を押しっぱなし。そんな普通の話なら主人公に敵対しては転落していくような「改心しない悪役」が諸国を蹂躙していく展開となります。
 ヒロインたちは常識人のはずですが、あくまで母国エーデルタルトでの常識や慣習にしたがってますので、他国人から見ると主人公に負けず劣らずの「ヤベーやつ」なのです。あっちの常識、こっちの非常識というやつですね。

【廃嫡王子の華麗なる逃亡劇~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~】【出雲大吉】【ゆのひと】【カドカワBOOKS】【廃嫡王子のやりたい放題ファンタジー】【小説家になろう】【カクヨム
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「異世界刀匠の魔剣製作ぐらし3」 荻原数馬

2024-03-25 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「男がロマンを語る時、待っている女が同じものを見ていられるとは思わないで欲しいな」
 クラウディアはルッツに釘を刺した。手足がもげても生きて帰ってこいと。

 ルッツ達の製作した魔剣『天照』を対価にしてヴァイシャイト王国と連合国との停戦は成った。
 だが終戦は仕事にあぶれ、故郷に居場所を失った大量の兵士を生み出し、そして王国は彼らへの補償を怠った。その帰結は、それら帰還兵の野盗化だ。各地でいくつもの盗賊団が誕生することになる。
 それが顕在化したのは、ツァンダー伯爵領に向かっていた第三王女リディアが盗賊団に襲われ、護衛騎士が皆殺しにされるという事件が発生したからだ。表沙汰になれば自分の責任になる、マクシミリアン伯爵に秘密裏に王女救出を依頼されたゲルハルトは少数精鋭による潜入を計画するのだが……。

 勇者・鍛冶師・高位騎士・付呪術師という異色のパーティによる、(政治的な立場の弱い)王女電撃救出作戦と、そこから派生する開拓団の顛末まで。
 極彩色の美少女キャラがあふれる作品が多い中、ヒロインは尻が魅力的な人妻のみ(3巻では女性キャラが1人増えますが)。表紙イラストはむさ苦しいおっさんたちばかりという話がもう3冊めというのはなかなかの快挙。ここに至ってとうとうリディアの尻まで消えました。

【異世界刀匠の魔剣製作ぐらし3】【荻原数馬】【カリマリカ】【カドカワBOOKS】【異世界刀匠魔剣製作記】【カクヨム】
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「耳兜の冒険者」 ラチム

2024-03-13 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「一番敵に回していけない人間は強い人間じゃない。君みたいな怖い人間なのだ」
 何をするか、何をしてでも殺しに来るタイプだとルオンを評するエルドア公爵。

 13歳になると神官による儀式を受けることでスキルか神器を手に入れ、それでその後の進路が決まる世界。
 神託の儀を受けたルオンが授かった神器は周囲の音が良く聞こえるというヘッドホンだった。同じ日に儀式を受けた2人の幼馴染みは神器・神剣エクスカリバーと回復スキルという英雄レベルのものを手に入れたのとは対照的だった。
 だが、耳兜と呼ばれるようになったルオンのヘッドホンの本当の能力は、周囲の人間の心の声が聞こえるというものだった。彼を煽って威張り散らすラークからはレオンのことを思いやる声が、彼のことを心配するサナからは打算的で侮蔑する声が聞こえてくるのだ……。

 人間不信になることなく、耳兜の能力で冒険者として成り上がっていく物語。世界観がちょっと大雑把かなとは思いました。

【耳兜の冒険者~あいつに聞かれるな・目を合わせるな・関わるな~】【ラチム】【ネコメガネ】【エンターブレイン】【“耳兜の冒険者”という珍妙な異名がついた少年の物語】
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「ラスボス討伐後に始める二周目冒険者ライフ」 朱月十話

2024-03-05 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 世界を滅ぼすという魔竜レティシア討伐の戦いで、命を落としてしまった盗賊のマイトに女神ルナリスは、報酬としてマイトを蘇生させた上で、願いを一つ叶えると言った。
 そこでマイトが望んだものは魔法を使える『賢者』になるということ。転職すれば英雄パーティーでレベル99にまで上げたものがレベル1に戻ってしまうけれど、それが生まれながらに「魔力なし」で盗賊の技のみで生き抜いてきたマイトの夢だったのだ。
 気がつけば15才の姿に若返り、転職した状態で生まれ故郷の歓楽都市フォーチュンに戻されたマイトだったが、盗賊から賢者に転職した前例はなく、自分の使える魔法も分からない。そんな彼が初心者ギルドで出会ったのは、訳ありの問題児ばかりの三人組の女性冒険者パーティだった……。

 職業レベルは振り出しに戻ったし、職業依存のスキルは使えなくなったけど、その経験と上げるだけ上げたステータスは変わってないみたい……ということで、初心者の皮をかぶった最強冒険者が、いつの間にか極上ハーレムの主になってしまう話。
 普通に依頼をこなして冒険しているので、今のところモテているのは余録という印象。

【ラスボス討伐後に始める二周目冒険者ライフ~はじまりの街でワケあり美少女たちがめちゃくちゃ懐いてきます】【朱月十話】【ファルまろ】【富士見ファンタジア文庫】【異世界ハーレムファンタジー】【ハートフル冒険者ストーリー】【小説家になろう】【カクヨム
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「追放された名家の長男」 岡本剛也

2024-02-15 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 由緒正しい剣士の家系の長男、双子の兄として生まれたクリス・スパーリングは、適正職業とスキルが明らかにされる15歳の『天恵の儀』で、適正職業【農民】スキル【毒耐性】と言い渡されてしまう。途端に「この出来損ないの役立たずめっ!」と罵る父親、自分こそが次期当主だと兄を追い出しにかかる弟。
 実家を着の身着のまま同然に追い出されたクリスが、とりあえず冒険者で食っていこうと逃げ込んだレアルザッドの街の質屋で手に入れた本は植物学者の自伝『植物学者オットーの放浪記』。そこに記されていたのは、ハズレスキルのはずの【毒耐性】の有用性だった……。

 能力値を上げる薬草だけど、毒草だから普通の人は食べないよね……というところを足がかりにしての成り上がり譚。

【追放された名家の長男~馬鹿にされたハズレスキルで最強へと昇り詰める~1】【岡本剛也】【すみ兵】【MFブックス】【カクヨム】【小説家になろう】【毒耐性】
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「そうだ。奴隷を冒険者にしよう」 HATI

2024-02-02 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「冒険者は当たれば儲かる。
 奴隷にやらせれば更に儲かる」


 少女アズは口減らしで親に売られた少女だ。それを金貨50枚で買い取ったのは道具屋の主人だ。
 道具屋は金が大好きなごうつくばりだが、金の使い方は知っている。購入した奴隷に冒険者をやらせれば、稼ぎはまるまる主人のものだが、そのために必要な投資はいとわない。まだ短剣を持つのもやっとなアズのために軽量化の魔法がかかった剣と軽装鎧も購入した。他のビギナーより優れた装備を与えられたおかげでアズは日々を生きのび、最初は赤字だった仕事も次第に黒字になり始める。だが、やはりソロでは狩った獲物の運搬も不自由でいろいろ都合が悪いと次の奴隷、教会の資金繰りのために身売りしたらしいシスター崩れの司祭エルザを購入。さらには戦場で捕虜となり、国が負けたことで奴隷になった貴族の娘アレクシア・テンタキルも購入と少し収支改善は遠のいたがそれも計算のうちと割り切っている。
 我慢ならないのは、太陽神教の坊主どもが領主の息子に取り入って以来、税金がどんどん上がるし、寄付を強要されるようになったことだ……。

 副業としての金儲けで「奴隷による冒険者稼業」に乗り出した道具屋の主人が、きちんと投資育成していくうちに奴隷がどんどん規格外に強くなり、それにともなって創世王教と太陽神教という神と悪魔の戦いみたいな神話レベルの戦いやらに巻き込まれていく物語。主人は常に店で店員を指揮して商売して銭勘定しているのがポイント。わざわざ奴隷を使っているのに自ら迷宮に挑むような馬鹿な真似はしないのです。もちろん女奴隷ばかり購入していても「そんな金にならないことをして何になる?」と肉体関係は持ちません。
 イラストも巧いし丁寧。表紙イラストが構図的にバランスが悪そうで気になっていたけれど、ちゃんとかわいい少女たちの森歩きから憎々しいおっさんのアップ、魔物同士の戦いまで作品のここぞというシーンを描いていて面白いです。この先が楽しみです。

【そうだ。奴隷を冒険者にしよう】【HATI】【佐々木あかね】【ワニのピア文庫】【KKベストセラーズ】【一人の商人の気まぐれが歴史を動かす物語】【風の迷宮】
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