付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「八犬伝(下)」 山田風太郎

2024-12-16 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「私は、正義は虚であっても、それをつらぬいて一生を終えれば、その人の人生は実となる。決して虚とはならん、と信じております」
 鶴屋南北の言葉に揺れ動く馬琴に、渡辺崋山は偽善でも善は善と訴えた。

 病弱だった息子の宗伯は早世し、馬琴は四谷へと引っ越ししていた。御家人株つきで古家が売り出されていたのだ。いずれ孫が成年に達した時に鉄砲同心の職を得られるかもしれないというのである。しかし、そのために蔵書を全て売り払い、長年嫌っていた金集めの書画会も開いた。
 そうして得たあばら屋で、馬琴は八犬伝の最終章の執筆を開始。しかし、そのときには彼の目はほとんど見えなくなっていた……。

 荒唐無稽であればあるほど人は面白がるが、一歩誤れば馬鹿馬鹿しさに失笑されてしまう。この紙一重が創作者の腕の見せ所ですが、晩年になって馬琴の筆は少しずつ衰え始め、設定などにも覚え違いが見られ始めます。現実と虚構のはざまを行き来する山田風太郎版「八犬傳」もこれにて幕。まさに栄枯盛衰。
 映画を観て、馬琴版と山田風太郎版と映画版でどう違うか比較読みもこれにてお仕舞い。端折りつつも映画は馬琴パートを概ねそのまま描いていますが、虚構パートはかなりエンターテイメント寄りに改変してます。そもそも馬琴は扇谷定正は失脚しても殺されるとは書いてないし、狸とか猫とか出番はなかったし。

【八犬伝(下)】【山田風太郎】【滝沢馬琴】【せがわまさき】【角川文庫】
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