付け焼き刃の覚え書き

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「彩雲国秘抄 骸骨を乞う」 雪乃紗衣

2016-05-28 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 2012年春に角川からハードカバーで出た本の文庫化で、多少の変更を加えて角川文庫と角川ビーンズ文庫から上下巻でダブルリリース。
 買うならきちんと完結しているビーンズ文庫版でと思ったけれど、角川文庫は書き下ろしがあるとかなんとか……商売人だね。

 最初は宮廷ラブコメ的にスタートしたシリーズが、途中で作者自らちゃぶ台返しをしてしまい、主人公サイドは短慮で未熟な若者グループにすぎず、主人公に敵対する陣営こそ真の正義、民を慈しみ国を憂う存在……みたいになってしまった彩雲国物語シリーズ。
 この外伝というか後日譚を中心とした連作短編集も、旺季らはやっぱり苦労して頑張っていた立派な人なんだよ……という話になってました。劉輝たちも救われないなあ。こういうのは、二次創作でアンチテーゼとしてやるものであって、作者自ら本筋でやっちゃいけないよ。
 なので、彩雲国物語は面白いとは思うけれど、読み返しができない作品です。序盤の主人公たちのトライアルアンドエラーなドタバタコメディ的な展開も、すべて(あんなことしてるからこうなったという)中盤以降の逆境展開の伏線になってしまって、しかもそれがほとんど回復されないと思うといたたまれないのです。
 こういうのは未熟な若者たちが成長して、汚名返上して、未熟な奴よと軽蔑していた連中に見直させて始めて痛快な物語になるんですけど、結局最後まで手のひらの上ですね。

【彩雲国秘抄】【骸骨を乞う】【雪乃紗衣】【由羅カイリ】【角川ビーンズ文庫】
コメント
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