「反乱を起こしたものを赦してはいけない」王と王弟の内乱からバリアンが学んだこと。
食品加工会社勤務のサラリーマン、田中正は胃の腫瘍によって病死した。享年41歳。
その田中は、気がつけば中世風の異世界に転生していた。辺境の大貴族、伯爵家の次男、バリアン・ド・リオンクールがその名である。彼の望みは、父ルドルフと兄ロベールを補佐して無難に生きたいだけなのだが……。
「中世風ヨーロッパ」といっても、中世の期間は長いし、ヨーロッパも広いのでひとくちで言い切れない話ではありますが、たいていの中世風ファンタジーでは魔法とかで補完されたりしていて、文化の程度が低いといってもそれほどではなく、ちゃんとカテラリーを使って食事をしていて、寝る時は夜着にくるまって布団で寝ていて、奴隷にもそれなりに財産としての価値があって大事にされている……みたいに意外に文化的だったりしますけど、これはすべて逆張りの話です。
現代日本人としての記憶を持ったまま、不衛生で、人の命など軽くて、楽しみといえば殺しと略奪だけという中世風世界に転生してしまった男が、身体頑丈、食欲旺盛、精力絶倫な肉体に引きずられて染まっていくさまはユーモアと恐怖の二人三脚。現代人のモラルなんか８歳までに吹き飛んでます。心は肉体に引きずられるのだ。話は面白いんだけれど、エグくて非道い話だなあとは思います。環境が人を造るんだなあ。
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