付け焼き刃の覚え書き

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「女王陛下のユリシーズ号」 アリステア・マクリーン

2023-02-18 | 戦記・戦史・軍事
「われわれが〈あらゆる犠牲〉ですね。われわれは消耗品ですね」
 ジョニー・ニコルス軍医大尉の言葉。
 国や軍が「我々はあらゆる犠牲を払ってでも目的を達成する」というとき、その〈あらゆる犠牲〉は彼らにとっては単なる数字だけれど、ニコルスたちにとっては自分自身のことなのだ。

 開戦以来、海に出たことのない海軍軍令部次長には理解できなかったのだが、ソ連への支援物資を送り込む輸送船団を護衛する艦隊任務は過酷なのだ。北洋や北極海を抜けるソ連への航路は暗黒航路とも呼ばれるほど過酷で、海は荒れ、Uボートは休む間もなく襲い掛かってくる。そんな任務を20ヶ月も続けて疲弊しきった巡洋艦ユリシーズ艦内には命令不服従や勤務怠慢などが起き始めていた。
 そんなユリシーズに再び輸送船団の護衛任務が命じられて乗組員の不満はピークに達したが、病身にむち打つヴァレリー艦長は乗組員たちをとりまとめ、再び北極海へと艦を進める。だが、間もなく反乱の兆しも消えていく。ドイツ軍の潜水艦と爆撃機が虎視眈々と待ち受け、海象が最悪の航海では、そんなことを考える気力すら失われていくのだ……。

 一頃は、戦争文学、冒険小説といったら筆頭にあげられた、冒険小説の大家マクリーンの代表作にして原点。
 タイトルは『女王陛下のユリシーズ号』だけれど、第二次世界大戦期の大英帝国は国王ジョージ6世の治世なので、本当なら『国王陛下のユリシーズ漕号』なんですが、訳者が素で間違えたのか『女王陛下の007』の人気にあやかったのか、後書きからはうかがい知れません。どのみち、誰も改題する気は無いのだ。

【女王陛下のユリシーズ号】【アリステア・マクリーン】【島守正】【ハヤカワ文庫NV】【第二次世界大戦】
コメント
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