付け焼き刃の覚え書き

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「悪の令嬢と十二の瞳」 駄犬

2024-09-08 | 過去転移・人生やり直し
「人間は記憶で構成されていて、記憶は曖昧なものだから、人間は曖昧なものになるというわけさ」
 七曜のマリウスが茶を飲みながらセリーナ・ローゼンバーグに解説した。

 学院の卒業パーティーで婚約者である王太子エドワードから婚約破棄を告げられた、公爵家令嬢のセリーナは断固無罪を主張した。聖女エレノアに嫌がらせなどとんだ冤罪だ。お茶に薬を混ぜたり、ならず者を雇って誘拐を企てたり、暗殺者に命を狙わせてみたりしただけで、全部未遂で終わったのだから無罪のはずだと。
 服毒刑にて人生を終えたセリーナの反省は、ただ「有能な部下がいなかった」ことだった。
 そんなセリーナが逆行転生してしまった。幼少時に巻き戻って二度目の人生がスタート。今度は早めに拠り所のない孤児を引き取って暗殺者に育て上げ、自分に絶対服従の手駒にするのだ……。

 善性で言えばドラゴンやゴブリン以下という、良心のかけらもない正真正銘の悪役令嬢が、前世のやらかしを後悔することなく、失敗の原因だけ反省し、あの手この手で我が世の春を謳歌しようとするうちにあさっての方向に飛んで行ってしまう話で、いわゆる偽善でも善、偽者でも本物と同じことをしていたら本物というアレです。
 前半の従者候補生に虐待まがいの訓練を押しつけているうちに一周回って崇拝されるようになっていく顛末から、後半の聖女の役割横取り作戦から従者たちが暴走する学園編までの全1巻。最後の最後で結末が二転三転し、誰が何のために何をしたのか解き明かされる展開は驚愕もの。つまり、本当に悪かったのはアイツ1人じゃなかったのかしら?

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