「転生令嬢ヴィルミーナの場合」 白煙モクスケ

　魔導文明が栄える大陸共通暦18世紀。
　大航海時代あらため大侵略時代の到来により外洋に進出した大陸西方や大陸北方の列強は、南方大陸や大洋諸島を植民地化することで反映していたが、その均衡も次第に崩れ初め、戦乱と革新の気配が強くなってきていた。
　ベルネシア王国の大公令嬢ヴィルミーナが前世覚醒を遂げたのは、そんな時代だった……。

　ひたすら上昇志向で紛争地域に送り込まれたりしながらも派閥抗争で勝ち上がっていった商社ＯＬが、気がつけば産業革命前夜のヨーロッパに似た異世界で公爵令嬢として転生。乙女ゲーの学園モードにろくにかかわる間もなく、国内外の王族や貴族、巨大企業グループ相手に新事業を立ち上げたり陰謀やら謀略やら仕手戦やら技術開発競争やら外交やら戦争やら立ち回る激動の日々に明け暮れる物語。
　章立てが「第１部：少女時代」「第２部：乙女時代」とか可愛らしいけれど、中身は女子供関係なく砲弾や銃弾で手足が吹き飛び、飛行船が爆沈し、港に死体が浮かぶ凄惨な展開です。
　主人公もその容赦のない辣腕から「魔女」だ「黒い羊」だと言われるけれど、相手をするのも深謀遠慮の悪辣政治家やら食えない王侯貴族や大商人たちなので、その駆け引きはスリリング。その合間に、いわゆる乙女ゲーのヒロイン的なキャラクターが「無垢」ではなく「無頓着」で駆け抜けていったり、私掠船の空賊が暴れ回ったり、ドラゴンがむしゃむしゃ人を食ったりと右往左往します。ある意味、島耕作よりビジネス小説。アンの娘リラより戦争小説。

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