付け焼き刃の覚え書き

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「ゴジラ S.P」 円城塔

2022-10-30 | 怪獣小説・怪獣映画
「あんたたち、なんで怖がらないの」
 金原さとみには、ユンとかおやっさんとかハベルたちが怪獣を怖がっていないように見えるのが不思議でならない。

 アニメ『ゴジラ S.P<シンギュラポイント>』を、シリーズ構成・脚本を担当したSF作家の円城塔が小説化したもの……ノベライズではなく小説化……だよね。

 2030年、なにか音楽に聞こえる音声電波が受信され始めたのと時を同じくして、世界各地で既存の生態系より逸脱した巨大生物が出現するようになった。最初に千葉県逃尾市で確認された翼竜のような巨大生物は、現地に残る錦絵の記述に則ってラドンと呼ばれるようになる。
 逃尾市の町工場オオタキファクトリーは、夏祭りの会場に出現したラドンから市民を救うべく、社長の道楽で開発していたロボット〈ジェットジャガー〉を出動させ撃退するのだが、その後、逃尾市周辺ではラドンの死骸が相次いで発見されていく……。

 アニメでは「突如世界各地に出現する怪獣」という事件に対して、一介の町工場のオヤジから防衛省の官僚までさまざまな登場人物がアプローチしていくわけですが、何かを知っていそうで実は何も知らなかった人とか、なんでも知ってるぽいけど何も言ってくれない人とか、胡散臭そうでも実は良い人と胡散臭そうでやっぱり悪い人とか、いろいろ登場人物が交錯しているのに「すべてを理解して総括して解説してくれる人」がいなかったのですね。
 そのあたり、読んで分かってスッキリするかなあと思ったけれど、加藤ハベルとかティルダ・ミラーとか出番は多かったのに何を考えているかよく分からなかった人たちの過去とか思考の軌跡、自衛隊内部での動きなどについて語られているので、材料は増えたけれどスッキリはしませんでした。最後の最後で語り手がいないんだもの。アニメを読んでから、こちらを読んで合わせて一本というあたり。
 そうそう。メカゴジラはともかく、キングギトラっぽいのは泳いでましたわ。

【ゴジラ S.P<シンギュラポイント>】【円城塔】【集英社】【ドッチボール部】【オキシジェン・デストロイヤー】【オーソゴナル・ダイアゴナライザー】【サトリ】
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