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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

たった一人の反乱

2012-09-26 19:23:57 | 丸谷才一
丸谷才一 昭和57年 講談社文庫版(上下巻)
こないだエッセイを読み返したら、やっぱ小説も読みたくなったんで、古い本を出してきて、ひさしぶりに読んだ。
ほんとは昨日からのつながりで、「裏声で歌へ君が代」がよかったんだけど、どこ探してもなかった。十代後半に読んだ本は、けっこう図書館で借りて読んだりしたものも多いんで、そうだったのかもしれない。
で、「たった一人の反乱」は、文庫本の初版を持ってるんだけど、単行本の発刊はそれより10年前の昭和47年らしい。
私が最初に丸谷才一の小説を読んだのは、これだったかなあ。そんな気がするけど、はっきりとした記憶はないし、調べて確定のしようもない。
ちなみに、この小説は、ふつうの仮名づかいで書かれている。著者の特徴である、旧仮名づかいで書かれるようになったのは、このあとなんだろうか。
初見の私がどんな感想をもったかは憶えてないが、そのあとに好きな作家として丸谷才一をあげることが多くなったから、「読みやすい」とか「うまい」とかを評価としてもつようになったのは間違いない。
そのへん、本書を読み返しはじめて、すぐ気づいたことには、「諺や故事成句を、本来の使い方とはほんのすこしずれた(しかし正しいと言い張れば言い張れないこともない)感じで使う」キャラが登場するんだけど、これに関しては最初読んだときにうまいなーと思ったもんだ、その後長年にわたって私の印象に残ってる。
物語のほうは、通産省から家電メーカーに天下りした四十過ぎの男が、二十も年下のモデルと結婚するとこから、いろんな騒動が始まるんだけど。
十代で読んだときは、そういうシチュエーションは想像の範囲外の外だったと思うんだけど、今読んでみると、私のなかでそのへんの受け取りようがずいぶん違うなあ、って感慨みたいなもんがあるw
一般的には、奥さん死んで一年も経ってないのに、それはどうなのという感じだけど。それも今とは時代が違うしねえ。
舞台となっている時代は、学園紛争らしきものやってるんで、60年代後半といったところだろうか。
それにしても、主人公は上流階級でエリート、父親は地方の名士で、公務員上級試験に合格したら、東京にウチ買ってくれたなんて設定、ちょっと無いような気がする。
あまり多くの共感を呼ぶものぢゃないよね。明治時代だったら高等遊民の小説ってあるだろうけど。
その広い家には、主人公が中学生のころから勤めている献身的な女中がいたりする。
また、新しい嫁さんの父親は大学教授なんだけど、これがヘンに理屈をならべるとこが、面白いキャラ。
そういう登場人物が、それぞれに反乱を起こすようなことをするんだけど、そもそも主人公が通産省から防衛庁行きを言われたのに断って役所を辞めたことが、周囲からは反乱と思われてたりして。個人的な考えによるものなのに、体制への抵抗みたいに受けとられて、妙に英雄視されちゃったりするのには大迷惑。
主人公は意外とウジウジ悩んだり、妄想をたくましくするようなとこあるんだけど、ひさしぶりに読むと、なんかそういう人間を描く小説って新鮮に感じるのは、最近私がろくに本を読んでないからかもしれない。
コメント
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