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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

三幕殺人事件

2015-10-14 20:56:45 | 読んだ本
クリスティ/中村妙子訳 昭和59年 新潮文庫版
こないだ夏のあいだにだったかな、読み返したポアロもの。
元俳優のチャールズ・カートライトが自身の所有するクロウズ・ネスト荘で開いた晩餐会で、ゲストとして招かれたうちのひとりで、誰にも恨みをかうようなことがないはずの牧師さんが、カクテルをみんなで飲んでたときに、バタッと倒れて、それっきり、変死してしまう。これが第一幕。
その何週間か後、カートライトのところの集いに出席していた一人の著名な神経科医が、自宅に友人を招いて晩餐会を開いたときに、食後のポートワインをみんなで飲んでたら、とつぜん発作を起こしたように倒れて、死んでしまう。これが第二幕。
病死なのか、それとも突然死っていったらいいのか、よくわからないけど、もしかしたら犯罪なのかもしれないって思い立った、両方の事件に係わりのある、サー・カートライトと、その友人のサタースウェイト氏と、エッグってあだ名のミス・ハーマイオニ・リットン・ゴア嬢は、真相究明の調査に乗り出す。
そこへしゃしゃり出てくるのが、毎度おなじみのポアロ氏。
そこらへんの巡り合せについては、作中の主要登場人物からも、
>つまり、特定の人間がいるから特定の出来事が起るってことさ(略)鏡のような湖上にボートを出しても難破する人間というのが、世間にはいるものさ。エルキュール・ポアロ氏の場合も、自分で犯罪を嗅ぎつけるまでもない。犯罪の方で彼の所に押し寄せてくるんだよ(p19-20)
なんて評されてる、まさに犯罪を運んでくるウミツバメってやつだよね、大迷惑、本人にそんな自覚はないかもしれないけど。
(犯罪を知らせるツバメって、ホームズのどこかにあったと思ったけど、なんだっけ?)
ポアロ自身は、そんなふうに自分が煙たがれることなんか気づいてなくて、
>いやいや、親切心からではないのです。好奇心ですよ
とか勝手なこと言ってるけど、歓迎されざる客かもしれないって一応言い出してみると、気をつかう周りから「とんでもない」と否定されたら、それを真に受けてたりする。(p.199)
で、それでもなんでもいろいろあって、事件の真相に迫る際になると、
>そう、まさに考えるんです。考えることであらゆる問題は解決します
とか、
>真相は内側から見ることによってのみ、知られるのですから(略)私は考えたいのです。まる二十四時間を私にお貸し下さい。じっくり考えてみます
とか何とか言って、まあ物語的必然から、真相にたどりつくことになる。
キーポイントは、第一の殺人の動機なのかな。ふつうありえないってものなんだけど、そこを掘り下げて、ポアロもそんなのもありかって結論に至るわけで。
どうでもいいけど、物語の冒頭、扉のうらに、
>演出 サー・チャールズ・カートライト
>演出助手 サターースウェイト氏 ミス・ハーマイオニ・リットン・ゴア
>衣装 アンブロージン商会調製
>照明 エルキュール・ポアロ
って登場人物の紹介があるんだが、ポアロの照明ってのが妙にツボにきて笑ってしまった。

コメント
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