丸谷才一 一九九五年 立風書房
『男もの女もの』の最初の「動物園物語」の書き出しが、「句集を出す話は前まへからあつた。」で、この句集について書かれてる。
すすめ上手な編集者にうながされて、辞退してたんだけど、そのうちその気になって、それでもなかなか実現しないでいると、何年か後に古希の祝いで出しましょうといわれて話が具体化したと。
古希の句集だから『七十句』という題は、選句をひきうけた大岡信の提案だって。
浅学な私は知らなかったけど、高浜虚子に『五百句』『五百五十句』『六百句』という句集があるらしいが。
なので本書は70の句で編まれたが、虚子のほうは題名と句の数は一致してなくて収録数は多少オーバーしているので、著者は自分も律儀に数を決めずにいいかげんにしておくのだったと後悔している。
(そこから、どこがどうころがって動物園の話になっていくのかという展開が、丸谷随筆のおもしろい芸で。)
あらためて数を数えて確認したりはしないけど、春、夏、秋、冬、新年に分けて、1ページに1句を掲げるというつくり。
句については(著者は俳句といわず発句というが)、よくわからないんだけど、
買つて来いスパイ小説風邪薬
というのは、ちょっとおもしろいと思った。
去年11月に地元の古本屋で見つけた本だけど、存在を知らなかったし、なんか私的な出版物にみえたこともあって、レアもんかと思って即買った。