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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

用心ぶかい浮気女

2019-07-27 18:46:57 | 読んだ本

E・S・ガードナー/真野明裕訳 昭和五十七年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
ちょっとしたひまな時間があるときにサラサラサラと読む、ペリイ・メイスンシリーズ。
原題「THE CASE OF THE CAUTIOUS COQUETTE」は1949年の作品。
持ってる“改訳決定版”ってカバー裏表紙にある文庫は、たぶん古本だと思うけど、どこで買ったかおぼえていない。
事件は、メイスンが、交通事故を扱ってる別件で新聞に目撃情報を求める懸賞金付き広告を出したとこから始まる。
ドレイク探偵社にとどいた情報提供の手紙は匿名で、ルシールって女性が事故の加害者の車のナンバー知ってるってもの。
それが、彼女の手帳を見てごらんなさいってことで、これで部屋に入れって、アパートの鍵が同封されている。
あやしいったらありゃしない、絶対ワナだという探偵や秘書の意見にもかかわらず、いつもどおり好奇心に突き動かされるメイスンは指定のアパートへ出かけてく。
死体を見つけちゃう名人のメイスンのことだから、これは当然殺人現場に足踏み入れちゃうんだろうと読む側は想像するんだけど、すぐにそうはならない。
言ってみると、「小麦色の髪、陽気な感じの青い目、真珠のような白い歯がこぼれる官能的な口もと、三拍子そろったいい女」と出っくわす。
そのルシールは、訪問者がメイスンと知るや、自分の離婚手当のつりあげを手伝ってほしいなんて依頼するが、これをそういうの専門ぢゃない弁護士はことわる。
求める情報も得られなかったメイスンが戻ってくると、二通目の匿名手紙が来てて、これで引き出しを開けて手帳を見ろなんて、また別の鍵が入ってたりする。
それでもう一度彼女の留守中にトライすると、たしかに車のナンバーが書きとめてあるのを見つけるが、おまけに拳銃も一丁あるのが目に入ってしまう。
妙な展開だけど、とりあえずそのナンバーの車の所有者をつきとめて、当て逃げされて重傷の依頼人のための交渉をメイスンは始めるんだが。
そこで、もう一件、新聞広告への反応があり、ちがう車、ちがう人物がその交通事故を起こしたって情報が弁護士事務所にもたらされる。
ひとつの事故に二台の加害者がいて、どっちも示談はおだやかにしましょうなんて具合に反省してるから、なぜ、どういうことってなる、この理由が本作の大きな謎。
で、自分は事故の逃走車の密告の手紙なんて書いてませんってルシールと、なんだかんだとかかわりあってるうちに、とうとう彼女と一緒に、銃で撃たれた死体を見っけちゃう。
そこで一緒に警察の到着を待つわけにはいかないメイスンは、彼女に警察へ通報するようにって任せて、その場を去っちゃうんだが、言われたとおりに彼女が通報しなかったもんだから、義務をおこたったか隠匿したかって困った状況に置かれてしまう。
窮地に追い込まれたメイスンは、今回は彼女の弁護なんかしないって決めてたはずなのに、離婚手当の相談をされたときから彼女は自分の依頼人だってことにする、そうすれば弁護士と依頼人のあいだのことは表立って説明しなくても罪に問われないから。
殺人現場にルシールといっしょにうろうろしてたのがメイスンだってことを目撃者に認定させるために、警察はあれこれ仕掛けてくるが、メイスンはこれを逆手にとって罠をしかける。
予審では、そのときメイスンを見たって言ってたはずの証人を、ちゃんと見たとは断言できないってとこまで反対訊問で追い込んでいく、これは痛快だけど、ずるいなーという気もする。
かくして、検察側と激しく戦いながら、もう一件の殺人も含めて、動機と犯人を推理したメイスンは、警察のなかでも良好な関係にあるトラッグ警部に対して真犯人を追いつめる協力をする。

コメント
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