many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

99%対1% アメリカ格差ウォーズ

2019-10-27 19:15:38 | 読んだ本

町山智浩 2014年 講談社文庫版
これは地元の古本屋の均一棚で最近見つけたもの。
町山さんのアメリカリポートだけど、いままで何冊か読んだ「言霊USA」シリーズとは出どこが違うらしい。
月刊「クーリエ・ジャポン」で2010年から2012年に連載した「USニュースの番犬」というのが初出だそうで。
なので時代は、オバマ政権の1期目のこと、ブッシュが赤字だらけとかムチャクチャにしちゃったのをいろいろ変えようとしてたころ。
なにが「99%対1%」かというと、「上位1%の富裕層が国全体の富の40%を独占する」のが当時のアメリカだから、その1%のひとたちがカネにものいわせて政治を好きなようにしちゃおうとしてると。
>オバマは医療保険改革、環境汚染やCO2規制、金融規制、石油業界への税制優遇中止案、それに富裕層への増税案によって、保険業界、化学業界、金融業界、石油業界、そして富裕層全員を敵に回している(略)(p.253)
という状況で、アメリカの最高裁は、2010年に企業にも政治活動の自由を認めるという判断をくだしたんで、大企業は莫大な政治資金をつぎこむようになった、それが「スーパーPAC」っていうんだが、現代政治の勉強としてすごく役立つ情報だな、これ。
ロビー活動ってだけぢゃなくて、アメリカの有権者はCM観て投票行動決めることが多いので、選挙にも影響を及ぼしてるとか、企業の投ずる政治資金が。
それと、2010年から急に勢力をのしてきたティーパーティー活動の実態も詳しく書かれてるんで、それも勉強になる。
イギリスから独立するしたときと同じティーパーティーって名前を掲げて、なんか自由を求める草の根運動っぽく見せかけてるが、実態は大企業のカネでつくられた富裕層への増税反対の集まりだと。
社会保障などの福祉削減と、規制の撤廃をすすめて、富の再分配には大反対するっていうこの政治思想、そのおおもとに1905年生まれのアイン・ランドって作家の小説があるってのは初めて知った。
私はもちろん読んだこともないんだけど、自分の幸福を追求することが善で、他人への共感がまったく持てないって人格を肯定するような思想を、
>他人への共感の完全な欠如は、精神医学上、サイコパスの特徴である。(略)
>サイコパス的な思想がティーパーティーを、いや、現在の共和党を動かしていると考えるとぞっとする。(p.212)
って町山さんは危惧している。
しかし、憲法に国が国民の健康を保障するみたいな項目がないから、公的な医療保険制度はなし、自由に民間の保険会社を使いなさいって国は、やっぱちょっと普通ではない気がする、私はとくに自分がリベラルだとは思ってないけど、日本で生まれ育ったからかな。
あと、極右的なメディアの言いたい放題のさまはこれまでの著作でも読んできたけど、本書でも、FOXニュースがあいかわらず、気に入らない大統領をイスラムだとか社会主義者だとかレッテルを貼ろうとすることに、
>核安全保障サミットの件でわかるように、FOXは自分では取材しない。調査報道もないからスクープもない。すべて伝聞の二次情報だけ。(p.91)
ってバサッと言ってる。そんな報道見て、戦争を支持しちゃう有権者が多いんだから、おっかないよなー。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする