E・S・ガードナー/尾坂力訳 1957年 ハヤカワ・ポケット・ミステリ版
主に新幹線での移動の機会とかで読みかえしてる、ペリイ・メイスンシリーズ。
持ってるのは1989年の5版。原題は「THE CASE OF THE DROWSY MOSQUITO」
眠そうな蚊というのは、事件の起きた晩に、関係者が蚊の飛ぶような低いブーンという音を聞いたとこからきてる。
姿は見えないが、ひとの近くに寄ってこない、一秒か二秒飛んだらすぐとまるみたいに聞こえる、まるで眠いのか疲れているかのような蚊。
ところが、メイスンの依頼人はというと、遺言状のなかで、はっきりと「余の遺言執行人は、余が利益を与えんと希望する人物から、睡たそうな蚊が貴重なる相続財産を盗みとらんとする恐れがある事実に御注意願いたい」なんてハッキリ言ってて、その遺言状と同じ引き出しのなかに小瓶に入れた蚊まで用意しているから、これは何か重大な意味があるんだろうってことになる。
メイスンの依頼人は、鉱山師で、いまはカネがあって大邸宅に住んでんだけど、体調がわるくなったのを取戻すために、庭にサボテンを植えて砂漠をつくって、金を捜し歩いた昔の仲間と、野外キャンプをしているという変わったひと。
外で生活したほうが健康のためにはいいらしい、特に人生の大半を砂漠で暮した人種には、家のなかでの文明的な料理は毒だということで。
で、事件のほうは、誰もが話にはきいたことのある幻の金鉱脈のありかをめぐって詐欺のような取引が起きたりしてるうちに、やっぱり殺人事件が起きる。
この殺人は、毒を飲まされて瀕死の人間を、さらに別の誰かが銃で撃ったら、殺人犯は毒を盛ったほうか銃撃したほうかどっちだなんて議論になる、ちょっと変わった事件。
おまけに、事件の起きた家にいたことから、めずらしいことにペリイ・メイスンも巻きこまれて、砒素中毒で一時倒れてしまう。
しかし、殺人課の警部に「被害者の気持はどうだね? それは君が招いたも同じことだ。君は長い間犯罪者の味方をしてきたが、これで反対の立場の者の気持が判るってもんだ」と酷い言われようをすると、メイスンは弱ってるくせに「犯罪人の味方じゃないぞ。僕は犯罪人の味方をしたことは一度もない」と憤然としてみせる。
裁判で有罪になるまでは犯罪人ぢゃないということを、そんなときでも徹底するのはメイスンの面目躍如といったところか。
で、どうでもいいけど、途中で砂漠の満天の星のもとで手をつないで夜空を見上げたりした展開があったせいか、本作の最後で事件が解決したあと、メイスンは秘書のデラに結婚しようともちかける、珍しい場面がある。
でも、デラには、あなたはそのうち事件が起きれば家庭を放り出して駆け回っちゃうんだから、やめときなさいみたいに断られる。
主に新幹線での移動の機会とかで読みかえしてる、ペリイ・メイスンシリーズ。
持ってるのは1989年の5版。原題は「THE CASE OF THE DROWSY MOSQUITO」
眠そうな蚊というのは、事件の起きた晩に、関係者が蚊の飛ぶような低いブーンという音を聞いたとこからきてる。
姿は見えないが、ひとの近くに寄ってこない、一秒か二秒飛んだらすぐとまるみたいに聞こえる、まるで眠いのか疲れているかのような蚊。
ところが、メイスンの依頼人はというと、遺言状のなかで、はっきりと「余の遺言執行人は、余が利益を与えんと希望する人物から、睡たそうな蚊が貴重なる相続財産を盗みとらんとする恐れがある事実に御注意願いたい」なんてハッキリ言ってて、その遺言状と同じ引き出しのなかに小瓶に入れた蚊まで用意しているから、これは何か重大な意味があるんだろうってことになる。
メイスンの依頼人は、鉱山師で、いまはカネがあって大邸宅に住んでんだけど、体調がわるくなったのを取戻すために、庭にサボテンを植えて砂漠をつくって、金を捜し歩いた昔の仲間と、野外キャンプをしているという変わったひと。
外で生活したほうが健康のためにはいいらしい、特に人生の大半を砂漠で暮した人種には、家のなかでの文明的な料理は毒だということで。
で、事件のほうは、誰もが話にはきいたことのある幻の金鉱脈のありかをめぐって詐欺のような取引が起きたりしてるうちに、やっぱり殺人事件が起きる。
この殺人は、毒を飲まされて瀕死の人間を、さらに別の誰かが銃で撃ったら、殺人犯は毒を盛ったほうか銃撃したほうかどっちだなんて議論になる、ちょっと変わった事件。
おまけに、事件の起きた家にいたことから、めずらしいことにペリイ・メイスンも巻きこまれて、砒素中毒で一時倒れてしまう。
しかし、殺人課の警部に「被害者の気持はどうだね? それは君が招いたも同じことだ。君は長い間犯罪者の味方をしてきたが、これで反対の立場の者の気持が判るってもんだ」と酷い言われようをすると、メイスンは弱ってるくせに「犯罪人の味方じゃないぞ。僕は犯罪人の味方をしたことは一度もない」と憤然としてみせる。
裁判で有罪になるまでは犯罪人ぢゃないということを、そんなときでも徹底するのはメイスンの面目躍如といったところか。
で、どうでもいいけど、途中で砂漠の満天の星のもとで手をつないで夜空を見上げたりした展開があったせいか、本作の最後で事件が解決したあと、メイスンは秘書のデラに結婚しようともちかける、珍しい場面がある。
でも、デラには、あなたはそのうち事件が起きれば家庭を放り出して駆け回っちゃうんだから、やめときなさいみたいに断られる。