
海外シリーズが続いたが、これからしばらく日本にいる予定なので、今年読んだ本で、印象に残ったもののご紹介をしばらくしたい。
今年の最大のニュースは、急激な、経済環境の変化だろう。
そして、この”暴走する資本主義”原題Supercapitalism"は、この経済危機の発生の原因となった根源的な、資本主義の問題点を、具体的にかつ明快に解き明かしている。サブプライム問題が表面化した直後の去年秋の発刊だから、著者が本書を書いている時には、経済界は、世界同時好況の真っただ中にあった。
この本を読むと、自由競争を極大化すると、消費者と投資家が支配する無法地帯になってしまう理屈がよくわかる。我々消費者自体、消費者でありかつ投資家でもあるということで、利益相反の真ん中にいる。たとえば、給料を上げよと要求して、給料があがると、それが製品価格に転嫁され、結局何のメリットもない。もしメリットがあったら、それは、デメリットを被る多数の上に成り立つメリットであるから、ネズミ講といっしょで、永久に続くことはありえない。
CSRが代表するように、企業の社会的責任や、社会貢献がよく取り上げられるが、本書によれば、これは企業の良心からではなく、純粋な経済合理性からでしかありえない。なぜなら、超資本主義においては、企業は、株主のためだけにあるからだ。
民主主義は、そうした誤った極端な方向を是正するシステムのはずだった。ところが、共産主義・絶対主義に完全勝利したはずの民主主義を、超資本主義が政治決定プロセスへの影響を極端に強めたことにより、自滅へ導いてしまっているのだ。
まさに、その象徴的な出来事が、今年になって巨大化した経済危機だ。経済も、政治も、振り出しに戻って、出直さなければならなくなってしまったようにも見える。