これは、ビジネスマンにとって、かなり示唆に富んだ本だ。自国のマーケットの成長が見込めない日本企業にとって、グローバル化は、避けて通れない道だが、そんな単純なものではないと本書は説く。セミグローバリゼーションという言葉を著者は使うが、極めて複雑な諸条件を分析しつくして、初めて、グローバル化は進展する。それでもうまくいかない時もある。つまり一進一退を続けながら、長い時間をかけて、グローバリゼーションは進展するのだ。
本書の題名である、コークの味は国ごに違うべきかの答えは、YESだ。アトランタ中心で、国際化を進めた際は、収益が上がらなかったが、国ごとに戦略を変えたら、収益を上げ出したという。天下のコカコーラでさえこのような状態だ。そういえば、昔アトランタのコカコーラの博物館に行った時、各国のコーラが飲めるコーナーがあったのを思い出した。
グローバル化にかかるキーワードを少し。
CAGE(Culture、Administrative/political、Geographical、Economic)という4つの側面における隔たりから、モデル化する必要がある。
AAA戦略とは、Adaptation(適応)、Aggregation(集約)、Arbitrage(裁定)。様々な環境の違いがある中で、付加価値を生み出す戦略だ。
ADDINGのスコアカードというアイデアも提示されている。Adding Volume(販売数量の向上)、Decreaing Cost(コストの削減)、Differentiating (差別化)、Attractiveness(業界の魅力向上)、Normalizing Risk(リスクの平準化)、Generating Risk(知識の創造と応用)の6つだ。
グローバル戦略を見直す時は、この5つのステップを踏もう。
1、業績の評価
2、業界、競争力の分析
3、差異の分析:CAGEな隔たりの枠組み
4、戦略オプションの策定:AAA戦略
5、価値の評価:ADDING価値スコアカード
精緻な分析、戦略立案をすれば、成功するとは限らないが、やみくもに国際化に走って、失敗する人がいかに多いことか。国際ビジネスに携わる人には、一読をお勧めしたい。
ちなみに本書の著者は、ハーバードの教授だが、インド生まれで、USAで教育を受け、スペイン在住の、最年少で、ハーバードの教授になった方という。彼の経験がそのまま本書にも生かされている。