かねやんの亜細亜探訪

さすらうサラリーマンが、亜細亜のこと、ロックのこと、その他いろいろ書いてみたいと思ってますが、どうなることやら。

あらすじで読み解く古事記神話

2012年05月31日 | Books


古事記が編纂されてから、今年は、1300年(と伝えられている)。
先般、浅野温子さんの、読み語りを満喫した話はしたが、関連本も、ちょこちょこGET中。
本書は、その1300年に便乗して(本人も、1300周年を意識したと言っている)、出たばかりの本。
三浦さんは、私も読んだ口語訳古事記を著した方だが、その本が、正統派の本の中で、今一番読みやすい古事記かもしれない。

本書は、古事記の中でも、一番ファンタジーな神代篇(上巻)と、中巻の最初の部分、つまり一番おいしい部分の、あらすじを紹介し、解説を加え、新たに撮った美しい写真をセットにした、まさに古事記入門者に打ってつけの本になっている。

前読んだ古事記を旅するもセットでお勧めできる。

筆者の三浦さんは、いろいろ古事記に関する本を書く毎に、理解が深まったり、考えが少し変わって来たりしているという。

古事記の話は、荒唐無稽に見えるが、一つ一つに物語の背景は、推測できる。
ただ、歴史の事実との関連づけは、かなり難しい。
三浦さんが、今考えているのが、古事記は、今の天皇家につながる北方系の天と地で語られる王権神話と、出雲に関連すると思われる南方系の、水平的な神話が、入り混じっているということだ。

いずれにしても、日本の始まりを解く鍵が隠されていることには、間違いない。
本書は、ファンタジーのみではなく、そういった歴史的興味にも応えてくれる。


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日本の自殺

2012年05月30日 | Books
baseball杉内選手が、ノーヒットノーラン達成!おめでとう!
たまたま見てたんだけど、完全試合寸前(あと一人)で、実は、残念って感じ。
達成してたら、1994年の槙原以来だったそうだ。



本書のことは、某雑誌で、数カ月前に知った。驚いた。
著者は、”グループ1984年”。村上春樹氏の、”1Q84”を思い出すが、村上氏が、この”グループ1984年”を意識していたかは知らない。
実際は、その10年前の1974年に書かれたものだ。

1974年と言えば、オイルショックなどは、経験していたけど、バブルが発生して、バブルが破裂して、20年の景気低迷が続く日本など、想像すらできなかった時代だ。
まさに、今の日本を予言した書。信じがたい。

プラトンによれば、ギリシャの没落の原因は、欲望の肥大化と悪平等とエゴイズムの氾濫にあり、道徳的自制を欠いた野放図な「自由」の主張と大衆迎合主義とが、無責任と放埒とを通じて社会秩序を崩壊させていったという。

今のギリシャ、日本のことを思うと、どきっとする指摘だ。

ローマ帝国の衰退も似たようなパターンである。国家は、中から衰退していったのである。
本書は、日本もこのままだとそうなると、今から40年近く前に警鐘を鳴らしていて、それが今でも、まったく古臭くない警鐘に聞こえるのだ。

決してカタストロフを考えてみようとしない日本人の国民性は、長所ともなるが、致命的な短所にもなる。
本書があげる日本の重大な困難は、資源・エネルギーの重大な制約、環境コストの急上昇、労働力需給のひっ迫と賃金コストの急上昇だ。
日本は、その困難をとっくの昔にどっぷり味わって、今は、中国などが、同じ経験をしていくタイミングになっている。

日本人の思考力、判断力の全般的衰弱と幼稚化が、便利さの代償として生じていると指摘している。同じく、情報化の代償として生じているという。つまりマスコミの普及と教育の普及の代償として、おつむが弱っているのだ。
確かにそうだ。情報の汚染の問題は、特に、昨今の政治の混迷、大震災後の動きを見ると典型的に表れている。

情報汚染の弊害としては、人間経験のなかに占める直接経験の比重が相対的に低下し、それに代わって、マス・コミュニケーションの提供する情報を中心とする間接経験の比重が飛躍的に増大したことの副作用、情報過多に伴う各種不適応症状の問題がある。

40年前言われていたことが、数十倍の規模で、今の日本を覆っているようではないか。

過去の諸文明の没落からの教訓もまとめてくれている。
①国民が狭い利己的な欲求の追求に没頭して、みずからのエゴを自制することを忘れとき、経済社会は、自壊していくしかない。
②国際的にせよ、国内的にせよ、国民みずからのことはみずからの力で解決するという自立の精神と気概を失うとき、その国家社会は滅亡するほかはない。
③エリートが精神の貴族主義を失って大衆迎合主義に走るとき、その国は亡ぶ。
④年上の世代は、いたずらに年下の世代にこびへつらってはならない。

38年前に発表された本文の後、今だから話せる話とか、先日講演を聴いた中野さんのコメントなども載っていて、これまた極めて面白い。

このグループ1984年は、実は、G大学教授のK氏1人だったらしいということが明かされる。K氏は、1人で書いた原稿を、ゼミ員にばらばらに代筆させ、共作であるかのようにして、出版社に届けたという秘話が明かされる。

中野氏の指摘は、またまた鋭い。40年前と、今とでは、大きく経済環境が違うことを述べた上で、日本の内部的な危機についての共通点を指摘している。

一つ発見は、本書で描かれる当時の国鉄は、腐りきっていたのだが、今は、大手術により、随分改善していることだ。
早川種三さんという、高校・大学の先輩の講演を、はるか昔聞いたことがあって、(まさに本書が出たころのことだ)、国鉄解体の話をされていたのを覚えている。
当時は、夢物語と思ったが、それが実行され、国鉄は、JRとして再生した。

もちろん痛みは伴うが、一つ一つ取り組んでいけば、光明は見えるてくると思うのだが。
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TEDESCHI TRUCKS BAND LIVE

2012年05月29日 | Music


2 月に行ったTEDESCHI TRUCKS BAND のライブ盤が出た。
彼らの初のライブ盤だ。昨年秋の録音という。
CD2枚組だが、コンサートの熱気がそのままパックされたようなすばらしい出来になっている。

11人編成のビッグバンドだが、それぞれがソロで通用する夫婦のバンドが合体したようなもので、メンバー1人1人の個性も、それぞれ発揮され、多彩なプレイを聞かせてくれる。
でもやっぱり際立つのは、主役の二人。
破綻しそうで、まったくしない、完璧な演奏で、ライブで聴いたのと、間のとり方なども、寸分たがわぬ演奏のように聴こえる。
あんなにワイルドな演奏だと思ってたのに。

聴いたことのない人は、是非一度。彼らのデビューアルバムは、グラミー賞も受賞したしね。

初回盤のみ、3面紙ジャケットらしい。ちょっとDISCが出しにくいんだけど。
日本盤のみボーナストラック付(最近よくあるタイプ)。
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企業法務の教科書

2012年05月28日 | Books


出たばかりの本。題名に惹かれてGET。

かの有名な巨大弁護士事務所である西村あさひ法律事務所編だ。
精鋭弁護士たちが、企業が弁護士を使うようなケースを、10のテーマに分け、難解なテーマも、なるべくわかりやすく説明してくれる。それにしても、各弁護士のキャリアの凄いこと。どういう頭をしているのだろう。

サラリーマンを何年かやっていると、たぶんどれかのテーマには、ぶつかるだろう。
それだけ、多岐のトピックを取り上げようとしているが、当然ひとつひとつのケースは、個別具体的なので、すべてに当てはめられるような、イロハがある訳ではない。それはわかっていても、やはり参考になる。いろんな旬なテーマを中心に取り上げているからだ。

読んでいると、庶民の感覚(それ自体、マスコミによって作られたもので,本来持っているものではないかもしれないが)と、実際は、かなりずれがあるということ。最先端の分野については、法律はまったく追いついておらず、実務がどんどん先に進んで、法律が後追いになっていることだ。

グローバルなケースだと、ますますその傾向が強くなる。そこで、このようなグローバルな案件をハンドリングできる(と思われている)巨大弁護士事務所が繁盛することになる。

パワハラや、企業不祥事など、身近?なトピックも多数収録されているので、読み物としても興味深い。
本書で、企業法務のノウハウをマスターしたいと思う向きにはお勧めしない。そりゃ新書一冊では、無理に決まってる。
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異端の思想 経済ナショナリズムとは何か

2012年05月27日 | Topics

sun今日も、すばらしい天気だった。先週、今週と、五月を満喫してる。
ゴルフ二連荘だったが、やはり二日目の方がいつもよい。普段何にもやってないから当たり前か。
今日は、ドライバーがいまいちだったが、寄せとパットがまずまずで、踏みとどまった。なぜ、全部調子がまずますということがないのだろう。別に、大技、小技と二律背反ではないと思うのだが。

note先週、TPP亡国論で、話題の?、中野剛志さんの話を聞く機会があった。
お題は、”異端の思想 経済ナショナリズムとは何か”。
何の話なのか、行く前はわからなかったが、講演をお聞きし、何となくわかった。
切れ味鋭いというのは中野さんのことを言うのでは?と思いたくなるぐらい。質疑応答の時間もあったが、澱みもなく持論を展開された。
といってもあくまでも持論であり、題名のとおり、現在の日本においては、異端の思想なのかもしれない。

ざっと内容をご紹介。

まずは、ナショナリズムって何でしょう?
何となく、右翼っぽい響きもあるが、中野さんによれば、とんでもない。
NATIONは、国民のこと。NATIONALISMは国民主義になる。
混同しがちなのが、ETHNICITY(民族主義)や、STATE主義(国家主義)。
特に、国家主義との混同は、気をつける必要がある。国民主義は、中をとれば、民主主義。
民主主義というと、個人の意見を尊重という響きがあるが、国民の意見を尊重と理解すべき。
そして、経済領域における国民主義を、経済国民主義(経済ナショナリズム)と定義する。

経済学の系統は、アダムスミスの、経済自由主義、マルクスのマルクス主義(統制経済)、そして、経済ナショナリズムの3つの系統に分けることができるという。
経済ナショナリズムは、イデオロギー的なものがないため、蔑視や、軽視されがちだったが、80年代以降、現実の経済の動きから、見直されているのだそうだ。
この辺は、中野さんの”国力”という本でも触れられていたように記憶する。

経済ナショナリズムは、元々は、ドイツのリストさんが、提唱し、ビスマルクが実践し、成功したという。
それまで、ドイツは、領主国の集合体で、領主国間の取引には、関税をかけ、産業革命が成功したイギリスからの輸入には、関税をかけなかったため、富が、ドイツからイギリスへ流出していたというが、逆の仕組みにして、強固なドイツの基礎を作った。イギリスに対する関税は、ドイツとイギリスの力が対等になったら、撤廃するとしていたため、保護主義とは異なる手法だ。
国力を巡る政治経済学を、経済ナショナリズムと考える。

重商主義、保護主義、排外主義、国家資本主義などとは、違う考え方なので、留意が必要。
一方、経済自由主義とも違う。存在するのは、個人ではなく、国民であり、関心は、富の配分の効率性ではなく、富を生み出す力(国力)だからだ。
経済自由主義では、富の配分は効率化はなされるが、富の絶対額の増加には、結びつかない。

では、ナショナリズムと民主主義の関係はどう考えるのか?
字が示すとおり、民主主義は、国”民主”義であり、近代民主主義とナショナリズムは同時発生している。フランス革命を思い起こせば理解できる。
民主主義を定義するには、政治参加の主体の定義が必要であり、それが、国民であるという考え方になる。
民主国家が最強国家になる。フランスも、王政時代よりは、フランス革命後の方が、強力になった。
国力は、国民が協力・連帯して行動することから生じる力であり、国民国家(=民主国家)が、最強になるのである。
ただ、もちろん、極端に運用すると、独善的な動きをとるなど、弊害の方が大きくなるので、要注意。

そのような民主国家を作るためには、国民自決権が必要であり、これが民主主義の理想であることは、疑いないが、それを侵害するものが数多くあり、国家安全保障が国民自決権を確保するためには、必要になる。

安全保障は、ナショナルな条件を制約を受けざるを得ず、国それぞれ違う条件の下に、検討される。特に、国民性があるのは食料。国それぞれ需要は異なり、供給のコントロールも難しい。

翻って、日本の現状は、とんでもない状況になっている。

食料に止まらず、エネルギー、防衛など、安全保障のポイントになる分野すべてで、日本の状況は、かなりたいへんな状況である。
だから、国力を発揮するための条件としても、国力を防衛するための防衛線としても、まずは、安全保障が大切になり、この観点から、経済ナショナリズムを常に、年頭に置く必要があるのである。

もちろん一度聞いただけですべてわかるわけもないが、中野さんの書も数冊読んだことがあるので、何となくおっしゃりたいことは分かったように思う

質疑応答で面白かったのは、TPPの議論での民主党反対派の動きに対する考え方。私からは、茶番に見えたのだが、中野氏によれば、まさに、議会制民主主義がWORKしている実例という。この辺、マスコミの威力は凄い。世論は、マスコミに作られると言っても、過言ではない。
中野氏の持論によれば、TPPは日本の市場をオープンにするGIVEのみで、安物の流入によりデフレを深刻化させ、安全保障の基本である農業を破滅させる。
補助金を与えなければ、生き残れない零細農家を保護するのは、非効率ではないかとの質問が出たが、アメリカは、まさにその非効率を、伝統を残す観点と、安全保障の観点から、堂々と行っているのだという。農業は、安全保障の観点からも、ナショナルの定義の観点からも、別格なのである。
ハーバード白熱教室の、マイケルサンデル教授も、同じ系統の考え方なのだそうだ。

原発については、再開容認派。これも、エネルギーの安全保障の観点が理由になる。確かに、原発のリスクをゼロには、できないが、原発をなくした場合、エネルギーを原油、天然ガス等にすべて依存せざるを得なくなるが、これが、安全保障上耐えられるかというリスクと天秤にかけた場合、すぐに全廃という結論は出しえないという。

切れ味鋭い話を、久々に聞いた。

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