本書は、出たばかり。
題名を見て、迷わずゲット。
内容は、網羅的、かつ最新の情報も取り入れたもので、読み応えがあったし、勉強にもなった。
縄文、弥生の世界は、我々世代が、学校で習ったものとは、全く別ものになっている。
その辺、基礎から応用編まで、うまくまとめていただいている。
切り口は、9。
農耕、漁業、狩猟、ファッション、祭祀、社会、ジェンダー、動物表現、土器。
それぞれの章で、発見がある。
例えば、漁業。
漁業の内容は、貝塚等から見つかる骨や、釣り具などから、その様子を推測できる。
釣り針には、今も使われるような高度なものも見つかる。
これは、日本が島国で、漁業の食生活に占める割合が高かったことを示す。
耳飾り、抜歯、入れ墨の習俗の様子もわかってきている。
大人になるに連れての通過儀礼。
それにしても、厳しい通過儀礼。
土偶は、女性で、生、石棒は、男性で、死にまつわる。
同時代の遺物だが、きれいに分かれる。
縄文時代は、ほぼ平等な社会だったが、農耕の比重が増えるにつれ、ヘテラルキー(多頭社会)、ヒエラルキーができてくる。
この変化は、ジェンダーにも通じる。
狩猟が中心の世界の場合、男性向きの仕事、女性向きの仕事がはっきり分かれていたが、農耕の比重が高まるにつれ、その差は、縮まる傾向にあった。
銅鐸や、土器に描かれる動物にも変化がある。
イノシシ中心から、鹿中心へ。
描きかたも、3次元的な表現から、2次元的な表現へ。
土器についていえば、縄文から弥生の流れは、あるものの、九州の弥生土器の間に東北の縄文土器が見つかった。
これは、著者の発見のようだが。
これは、縄文土器を使う縄文人が、弥生土器を使う弥生人と交流していたことを示す。
日本海側を舟で、移動していたと考えられる。
我々世代が、習っていた縄文・弥生とは全く違う世界だ。
これらのことをまとめると、縄文から、弥生への変化は、まだら模様の部分と、結構はっきり分かれる部分と、混在している。
この複雑さが、この分野の難しいところでもあり、面白いところなのだろう。
それにしても、この仕事たいへん。
発掘して、その無数の発掘物を一つ一つ検討し、分析していく。
それが、全国各地で行われれているのだから、その情報の突合せも容易ではない。
ここは、データのデジタル化を一層進め、AIの力も利用し、さらにスピード感のある研究の進展を期待したい。
とすると、大陸側のデータも必要になるのかもしれないが。
面白かった。