皆さん、こんにちは。事務局の宇野毅です。当ブログで今年1月16日に『外食業界に影響を与える2020年のトピックス』について触れました。そこでは、2020年の外食産業に影響をあたえる3つのこととして「人手不足(対策)」「改正健康増進法(禁煙)」「東京五輪・パラリンピック」を挙げました。ところが、この3つの問題は、新型コロナの発生ですべて吹き飛んでしまいました。外食業界にとって今は、Afterコロナ、Withコロナを見据え、ニューノーマル(新常態)をどのように生き残っていくかを必死に模索する厳しい時代に突入しています。
今年の外食業界の振り返りについては、今後またこのブログで取り上げたいと思います。
さて、話は変わりますが、皆さんは「ゴースト・レストラン」という言葉をご存じでしょうか?
ニューヨーク発祥のレストラン・コンセプトで、昨年末あたりから日本でも話題になってきています。基本的には客席を持たずに厨房設備のみの店舗で、電話あるいはネットからの注文に応じて調理しデリバリーする業態です。宅配ピザと似ていますが、デリバリーを外部に委託しているのが特徴です。
今年、新型コロナ発生の中で、この「ゴースト・レストラン」という業態があらためて注目されています。まず、今回の感染防止のための外出自粛の中、「Uber Eats」や「出前館」などのデリバリーを利用する顧客が増えたという大きな環境変化がありました。市場が広がる中、「ゴースト・レストラン」は客席を持っていませんので、店舗の初期投資額を低く抑えて出店することができます。また、店舗立地についても、店前を多くの人が往来する一等地に出店する必要がありません。集合ビルの空中階に出店することで賃料も低く抑えることができます。そのうえ、店内でお客様にサービスするスタッフを雇用する必要がないので人件費も抑えられます。その結果、損益分岐点の低い業態として急速に増えつつあるようです。最近は、複数の商品を1か所の厨房設備に集約させることで、さらなる効率化や販売力向上を進めており、ハードロック・カフェなどを展開するWDI(ダブリュ・ディー・アイ)や多業態を展開するダイヤモンドダイニングといった有力企業も「ゴースト・レストラン」業態に参入してきています。
では、「ゴースト・レストラン」の弱点は何でしょうか?
まず、「Uber Eats」や「出前館」などのプラットフォームにある多くの競合店の中から自店を選んでもらうため、Webマーケティングの工夫が重要と思われます。また、その場で召し上がっていただくレストランと比較すると衛生管理に細心の注意が必要です。
私は、働いているスタッフのモチベーションをどう維持していくかも重要な要素ではないかと感じています。飲食店は、「ありがとう」「おいしかったよ」というお客様の反応やコミュニケーションがスタッフの働く原動力につながっていると思うからです。
新型コロナの状況下、「ゴースト・レストラン」は増えていくでしょう。しかしながら、「ゴースト・レストラン」業態が伸長しているというニュースを聞くたびに、「賑わい、楽しさ、語らい、の空間」という、外食産業が持つ本来の価値の重要性をあらためて感じています。