都営線三ノ輪駅を降り、少し歩いたところにある昔ながらの下町商店街の中にある「砂場」。蕎麦の系譜「砂場」で江戸時代から続いて現存する最古のお店のひとつ。屋号はこのお店のどこを見ても「砂場」と書いてあるだけだが、「砂場総本家」「南千住砂場」など通称があってどれが正式なものなのか不明。紹介されている書物にも色々な書き方がしてあり判然としない。
お店の外観は残念ながら商店街のアーケードのせいで屋根部分を見る事が困難だが、戦後(昭和29年とか)の木造建築は細部の意匠に凝った造りで風格がある。まさに歴史的な建物。でも蕎麦屋がどんどんお洒落で気取った佇まいに変わっていく中、そんな事は意に介さずと、お店周りに鉢やら看板やらが雑然と置いてある気取りの無さが下町らしい。
開店してすぐの時間に行ったためまだ先客はなし。小さな子供さん(お孫さん?)が「いらっしゃい、どこでもどうぞー」と可愛らしく席を勧めてくれる。お店の中はかなり特異で独特な空間で、主人の趣味らしい様々な小物がたくさん陳列してあったり、子供さんのお習字が飾ってあったり、果ては模型電車まで走っている。その長い歴史と風格を全く感じさせない街場の蕎麦屋風情に懐かしさだけでなく、圧倒され驚いた。この箱(建物)と歴史と蕎麦があれば、どこも太刀打ち出来ないような物凄いお店にもなり得るのに、そういう所に無頓着な所がある意味凄い。
次があったので軽く一枚と「もり」を注文。メニューには蕎麦はもちろん、ご飯もの、うどんの文字まで見える。葱と山葵が添えられた蕎麦は量的には普通。色は訪問前の想像より白っぽい。切りが長めで軽めに締められている。つゆは濃いめ。甘めと評する人もあるが、自分にはさほど甘くは感じられなかった。蕎麦湯は老舗には珍しくどろっとしたタイプ。
種物やつまみが旨そうだったが後があるので断念。いずれゆっくりと一杯やってみたいなぁ。こんな歴史的な屋号のお店が下町の元気なアーケード商店街に気取りなく残っているというのが本当に面白い。 (勘定は¥630)
東京都荒川区南千住1-27-6
(砂場 南千住砂場 砂場総本家)