最近のお気に入りは、自動車のトランクに折りたたみ自転車を積んで訪問先の駐車場に入れ、そこから街の路地を走りまわること。以前よりぐっと行動範囲が拡がったし、どこにでも入っていける便利さ。大きな通りからではなかなか分からない、街の雰囲気と人々の動線を知る事が出来る。名古屋市内や犬山市内でも何度かやっているが、この日は岐阜市内へ。昔は週末の夜ともなると、人にぶつからないように歩くのも大変だった柳ヶ瀬近辺(自分はギリギリ体験している世代)。すっかり寂れてしまったが、まだまだ昔からの店はいくつも残っている。訪れたのは洋食屋「金鯱山」(きんこざん)。創業が昭和27(1952)年という老舗だ。力士だった主人の義兄の四股名から取られた店名だとのこと。県内に支店もあるようだ。県外にもいくつか同名の洋食店があるのだが何か関係があるのだろうか。
店に入ると左側が、幅のある立派な木製カウンターと厨房、右側がテーブルと小上がり。カウンターにはコック・コートを着た主人が常連さんと歓談中。給仕は女将さんがやっており、「暑いですねぇ」とやさしい笑顔で冷たいお茶を出して下さった。厨房の中にはしっかりこれもしっかりコック・コートを着た若い方。老齢の主人の指示・指導に緊張した面持ちで「ハイッ」と返事をして作業している。手渡されたランチ・メニューから筆頭のカニコロ・ハンバーグ定食を注文した。調理が始まり、ほとんどの作業は若いお弟子さんがやっているが、カニコロッケはその場で主人自ら手で丸め、衣をつけて揚げている。
しばらくして女将さんから赤だしの味噌汁と漬物、それにご飯が先に運ばれ、平皿にのったカニコロとハンバーグがポテトサラダを挟むようにして出てきた。やや小ぶりのハンバーグはデミグラス・ソースの酸味のバランスが良く、旨い。ソースだけでご飯がいけてしまいそう。大きいのを頬張りたい。カニコロには濃厚なタルタルソースがついているが、これもマヨネーズから手作りとのこと。滑らかなコロッケの中身がカリッとした衣に包まれ、これまた旨い。女将さんからご飯のお代わりを勧められるが、最近食べ過ぎなのでグッと我慢。滑らかな口当たりのポテサラも綺麗に片づけ完食。どれもしっかり旨いのが嬉しい。ランチにはコーヒーも付いているようで、女将さんから勧められたが、外がとても暑く、自転車に乗ったあと汗まみれになりそうだったので遠慮させていただいた。
客にはとても温かく家庭的なもてなしをして下さるお二人。でも若いお弟子さんには厳しい態度で臨んでいる。こうして老舗の味と技術がしっかりと受け継がれていくのだろう。まだまだ食べたいものばかり…。(勘定は¥980)
金鯱山 (きんこざん)
岐阜県岐阜市弥生町1
※H28.3 店の前を通ったら、看板が下ろされておりました。残念ながら閉店されたようです。