東京駅から歩いて数分の場所にある日本橋・八重洲の割烹「嶋村」。創業が嘉永3年(1850)という長い長い歴史のある店で、現代人と同じくランキングが大好きだった江戸の庶民の娯楽「番付」の料理部門では、最高ランクの「勧進元」と位置付けられていたりと、必ず名前が載っている老舗(こちらとかこちらの真ん中辺りにその名前が)。そんな店がまだ現代に残っているのもすごい。さぞかしお高いのかなと思いきや、昼には値打ちに定食類が食べられるとあって、東京に着いてすぐの昼どきに行ってみた。
店は割とざっくばらんな雰囲気。もちろん座敷には別の入り口があるのだろう(未確認)。細長い店内にはカウンターとテーブル席がいくつかあり、数名の給仕女性が立ち働いている。こちらは会席料理の他に、卵黄をたっぷり使った衣から「金ぷら」と名付けられた天婦羅が有名。前から名前が気になっていたので、もちろんその「金ぷら重」(金ぷら丼とも書いてあったりする)を注文。少し時間がかかるとの事で、すぐに給仕の女性が「これでもどうぞ」と日本橋の無料冊子などを持ってきて下さる心遣いがうれしい。そうしている間にも近所のOLやらサラリーマンが昼食を求めて店に入ってくる。「今日は何にしよう」なんて言っているところをみると、何度も足を運んでいる様子。2階にも案内されていたので、座敷があるのだろう。たぶん江戸~近代にはやんごとなき人しか口に出来なかったであろう嶋村の料理を、我々庶民が賞味出来るようになったとは、民主主義も悪くない(笑)。
しばらくして「おまちどうさま」と丼ぶりに入った「金ぷら重」が運ばれる。蓋を取るとドーンと大きい海老が2尾と、ししとう、それに香の物と味噌汁がつく。胡麻油の香りよい天ぷら、もとい金ぷらは、つゆにくぐらせてあるものの、出来たてでまだ張りを失っておらず、旨い。ただ自分は常にサクサクの衣じゃないとダメ派ではなく、つゆをたっぷりまとった柔らかい衣の天婦羅も好きです。というか天丼の場合はそっちの方が好きかな。大きくても胃にもたれなかったのは油がいいからだろうか。普通の天婦羅と何が違うの?と訊かれると困るが…。次に来た時には、江戸幕末の料理を再現したという土曜日限定の会席料理を食べてみたいなァ。(勘定は¥1,200)
※令和2年10月に移転されました
↓ 東京駅を挟んで皇居側の大きなビルが立ち並ぶ谷間にある「平将門の首塚」と、「東京銀行協会ビル」(大正5年・1916建築※ファサード保存のみ)
↓ 「日本工業倶楽部会館」(大正9年・1920建築※部分保存・再現)。中を見学させてもらおうと試みたがシャットアウト…。残念。
東京都中央区八重洲1-8-6
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