8月末の閉店が迫っている岐阜市花沢町の戦後すぐからの食堂「丸市」。何とか時間を作って、少しでもその希少な佇まいと光景を目に焼き付けようと通い続けている。この日は珍しく先客(子供連れの女性)が。女将さんに前から気になっていた「ヤキメシ」を注文。「焼飯」や「炒飯」ではなくて「ヤキメシ」。しかも品書きの中では洋食の括りになっている。気になるでしょ? それと合わせてみようと思った訳ではないが、一緒に「中華ソバ」も注文してみた。
しっかりと真っ白の調理服を羽織った老齢の主人が、テボは使わず、鋳物コンロの上にのった木の蓋付きの羽釜で茹でた麺を菜箸ですくって麺上げをしている。その姿を見ているだけでタイムスリップしそうな素晴らしい雰囲気。ヤキメシの調理は女将さん。相変わらず静かに、そして淡々と調理が進む。
まずはヤキメシが登場。平皿にのったヤキメシの上には、錦糸玉子、玉ねぎ、グリーンピース、色濃い肉の細切れ、蒲鉾、紅生姜の姿が見える。付け合わせには福神漬け。一部まだらに混ざったヤキメシは、これもこちらならではのやさしい独特の味付け。中華でいう炒飯とは全然違うので、やはり洋食でいいのかな。40年以上前の大昔に、祖母がこういうかんじの焼飯をよく作ってくれたことを思い出した。いわゆる市販の味付け塩コショウ的な安易な味付けじゃないところが”らしい”。
中華ソバは同じ岐阜市内の老舗「丸デブ」のように和風丼ぶりで登場。丼ぶりは大きくないが、麺の量はしっかりとある。脂身の入ったチャーシュー、蒲鉾、味付けメンマ、刻みねぎがのり、淡いスープの色。スープはまろやかな口当たりで、かえしは弱め。麺の茹で加減は当然のように”やわ”。少しだけ縮れた麺はどこで仕入れているのか知らないが、中華麺ぽくなく、あまり他所では味わったことのないかんじだ。チャーシューや、しっかりめに下味のついたメンマを挟みながら、少しだけ昔のようにコショーを振ったりして楽しんだ。ほのぼのとした味。今の世の中、安易な方法(業務用うんぬんとか)はいくらでもあろうに、どの料理も今の店とは違う独自の味なのが素晴らしい。もしかすると戦前の味ってこういう味じゃなかっただろうか…。(勘定は¥920)
※平成28年8月末を以って閉店されました
↓ 店と並びにある旧・医院(建築詳細不明)。夕焼けで陽が当たると近代建築ならではのかっこよさが浮かび出る(気がする)。
丸市 (丸市食堂)
岐阜県岐阜市花沢町3-25
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