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COP15に出席した外務副大臣福山哲郎氏のメールマガジンから転載です。
福山氏は京都会議にもボランティア側として参加していたという環境問題の専門家として
知られています。
この記事は、日本政府の責任者の一人という立場で書かれている。
新聞記事とは、一味もふた味も違う内容です。
興味がある方は一読をお勧めします。
以下転載です。
テツロー日記 2009年12月20日 第378号
「コペンハーゲン合意、採択。」
現地時間の2009年12月19日、一晩明かした朝の11時過ぎに長い長い
交渉の末、「コペンハーゲン合意」が採択された。
この交渉はコンセンサス方式が原則のため、全会一致でなければ採
択されない。明け方から午前にかけて、ほぼ大半の国が採択を主張し
はじめ、涙ながらに採択を訴える途上国も少なからず出てきた。一部
の少数の国々(おそらく1ケタ)が反対のため、断続的に協議を続け
た結果、「take note」という形になったが、結局採択されることに
なった。
採択された瞬間、多くの国が(もちろん日本も)思わず立ち上がっ
て拍手。政府代表団のそれぞれとも固い握手をかわす。みんな一睡も
していない…。
<コペンハーゲン合意の主な内容は以下の通り。>
(1)中期目標には、先進国は削減目標、途上国は削減行動を来年の
1月末までに提出することになった。これは第一歩としては重要。そ
してMRVは満点ではないが、支援されていない行動についても国際
的に報告し、協議を受け付けることとなり一定の前進を見た。
(2)いわゆる将来の包括的な枠組みに関しては、AWG-LCAの継続に
合意し、COP16で結論を得ることになった。アメリカ、中国を含む
将来の法的文書につながるかどうかは今後の交渉次第だが、とにかく
その端緒を開いた。多くの途上国が「法的文書を作成すべきだ」とい
う日本の主張に賛同してくれていた。
(3)資金については、短期で先進国全体で3年間で300億ドル。
中長期では、2020年までに1000億ドル規模の資金を動員していくとの
目標にコミット。
長年、気候変動交渉を見てきた立場から、以下のような感想を持った。
○G77(いわゆる途上国)+中国を「途上国」とひとくくりに議論する
ことの限界。経済成長をめざす中国・インド・ブラジル・アフリカの
一部等々と、気候変動ですでに生存がかかっている国々とでは、全く
状況が異なっており、今回も最終的には、中国・インド等と途上国と
の間に多くの意見の相違が見られた。
○首脳外交のあり方の変化。これまで、事務方が詰め切れなかった一
部の決断を各国首脳に求めて、決着に至るというプロセスが一般的で
あったが、今回は全く異なる様相が出現した。鳩山総理をはじめ、オ
バマ大統領、サルコジ大統領、メルケル首相、ラッド首相など、先進
国のリーダーが一堂に会し、途上国のリーダー(残念ながら、中国も
インドも政治のリーダーは出席せず、事務のトップで対応)と直接、
合意文書の内容をパラグラフ毎に協議するという極めて異例の展開に
なり、多くの決定が首脳の決断に委ねられた。
鳩山総理の首脳会合出席は、なんと10時間以上にも及んだ。鳩山総
理が会合中、「一つの政治的合意文書にまとめるべきだ!」と発言し、
サルコジ大統領をはじめ各国から賛同の声が上がり、一つの流れを作
ったことは間違いない。さらには、最終局面での、米中首脳会談前後
のオバマ大統領の積極的な外交展開などもこれまでには見られない光
景だった。
総じて、先進国(特に、米・豪・EU)と日本の連携は緊密に行われ、
先進国の一枚岩を感じさせた。よく報道にある、米中陰謀説などは全
くの見当違いである。現地で報道を見て、驚いた。
○日本の交渉団は、小沢環境相を先頭にとてもいいチームだった。文
字通り「不眠不休」の奮闘に頭が下がる思いで一杯である。外務省だ
けでなく経産省、環境省、農水省・・、それぞれの役割をしっかりと
果たしてくれた。そういうボクも4泊で6時間しか寝ていない…。
○長年、この交渉を野党の立場で見てきたボクにとって、政府代表の
一人として、この場にいることの感謝と大きな責任を痛感する数日間
であった。最終日を越えて、明け方の4時頃に全体会議が紛糾、休憩
に入った時は、これはダメかなと目の前が真っ暗になった。手ぶらで
は、日本に帰れない、そんな気持ちだった。採択の瞬間の安堵感は、
言い様のない物だった。
○今回の会議は、今後の国際交渉において、新しいゲームが始まるこ
とを予感させる多くの示唆と厳しさがあったように思う。自分なりに
これから整理していきたい。
※写真:岡山市内 旭川を渡る 落日迫る
福山氏は京都会議にもボランティア側として参加していたという環境問題の専門家として
知られています。
この記事は、日本政府の責任者の一人という立場で書かれている。
新聞記事とは、一味もふた味も違う内容です。
興味がある方は一読をお勧めします。
以下転載です。
テツロー日記 2009年12月20日 第378号
「コペンハーゲン合意、採択。」
現地時間の2009年12月19日、一晩明かした朝の11時過ぎに長い長い
交渉の末、「コペンハーゲン合意」が採択された。
この交渉はコンセンサス方式が原則のため、全会一致でなければ採
択されない。明け方から午前にかけて、ほぼ大半の国が採択を主張し
はじめ、涙ながらに採択を訴える途上国も少なからず出てきた。一部
の少数の国々(おそらく1ケタ)が反対のため、断続的に協議を続け
た結果、「take note」という形になったが、結局採択されることに
なった。
採択された瞬間、多くの国が(もちろん日本も)思わず立ち上がっ
て拍手。政府代表団のそれぞれとも固い握手をかわす。みんな一睡も
していない…。
<コペンハーゲン合意の主な内容は以下の通り。>
(1)中期目標には、先進国は削減目標、途上国は削減行動を来年の
1月末までに提出することになった。これは第一歩としては重要。そ
してMRVは満点ではないが、支援されていない行動についても国際
的に報告し、協議を受け付けることとなり一定の前進を見た。
(2)いわゆる将来の包括的な枠組みに関しては、AWG-LCAの継続に
合意し、COP16で結論を得ることになった。アメリカ、中国を含む
将来の法的文書につながるかどうかは今後の交渉次第だが、とにかく
その端緒を開いた。多くの途上国が「法的文書を作成すべきだ」とい
う日本の主張に賛同してくれていた。
(3)資金については、短期で先進国全体で3年間で300億ドル。
中長期では、2020年までに1000億ドル規模の資金を動員していくとの
目標にコミット。
長年、気候変動交渉を見てきた立場から、以下のような感想を持った。
○G77(いわゆる途上国)+中国を「途上国」とひとくくりに議論する
ことの限界。経済成長をめざす中国・インド・ブラジル・アフリカの
一部等々と、気候変動ですでに生存がかかっている国々とでは、全く
状況が異なっており、今回も最終的には、中国・インド等と途上国と
の間に多くの意見の相違が見られた。
○首脳外交のあり方の変化。これまで、事務方が詰め切れなかった一
部の決断を各国首脳に求めて、決着に至るというプロセスが一般的で
あったが、今回は全く異なる様相が出現した。鳩山総理をはじめ、オ
バマ大統領、サルコジ大統領、メルケル首相、ラッド首相など、先進
国のリーダーが一堂に会し、途上国のリーダー(残念ながら、中国も
インドも政治のリーダーは出席せず、事務のトップで対応)と直接、
合意文書の内容をパラグラフ毎に協議するという極めて異例の展開に
なり、多くの決定が首脳の決断に委ねられた。
鳩山総理の首脳会合出席は、なんと10時間以上にも及んだ。鳩山総
理が会合中、「一つの政治的合意文書にまとめるべきだ!」と発言し、
サルコジ大統領をはじめ各国から賛同の声が上がり、一つの流れを作
ったことは間違いない。さらには、最終局面での、米中首脳会談前後
のオバマ大統領の積極的な外交展開などもこれまでには見られない光
景だった。
総じて、先進国(特に、米・豪・EU)と日本の連携は緊密に行われ、
先進国の一枚岩を感じさせた。よく報道にある、米中陰謀説などは全
くの見当違いである。現地で報道を見て、驚いた。
○日本の交渉団は、小沢環境相を先頭にとてもいいチームだった。文
字通り「不眠不休」の奮闘に頭が下がる思いで一杯である。外務省だ
けでなく経産省、環境省、農水省・・、それぞれの役割をしっかりと
果たしてくれた。そういうボクも4泊で6時間しか寝ていない…。
○長年、この交渉を野党の立場で見てきたボクにとって、政府代表の
一人として、この場にいることの感謝と大きな責任を痛感する数日間
であった。最終日を越えて、明け方の4時頃に全体会議が紛糾、休憩
に入った時は、これはダメかなと目の前が真っ暗になった。手ぶらで
は、日本に帰れない、そんな気持ちだった。採択の瞬間の安堵感は、
言い様のない物だった。
○今回の会議は、今後の国際交渉において、新しいゲームが始まるこ
とを予感させる多くの示唆と厳しさがあったように思う。自分なりに
これから整理していきたい。
※写真:岡山市内 旭川を渡る 落日迫る
マスメディアの情報はそれぞれ思惑があったり、フィルターがかかっていたりして厄介かもしれないですね。
でも、マスメディア以外から情報を得るのはなかなか難しいっす。
いつも勉強させていただいております。
私の脳味噌の容量ではいっぱいいっぱいでついていけてない所もありますが。
COP15の各国の政府代表は大変でしたね。
国の存亡をかける国もあったのですから。
これからは、このような会議が増えてくるのかもしれません。
そして、出席者が自らのメディアで会議の経過を
報告するようになることを期待します。
さてどのように情報を得るかです。
マスメディア自体、個人発信の情報を重視せざるをえなくなり、情報の加工作業は相対的に低下します。
一人ひとりが求める情報を収集する仕組みもできると思いますが、
それまでは信頼できるホームページやブログを定期訪問することになるのかもしれませんね。