ヴェネチア映画祭で銀獅子賞を受賞したというニュースでこの映画ドラマの存在を知りました。
ウィキペディアでもあっさりしたものです。
銀獅子賞とは最高監督賞ですから黒沢清監督の手腕が高く評価されたのです。
実はこの映画はドラマとしてNHKBSで放送されていたと初めて知りました。
8Kで撮影したそうです。
その精緻な映像がどのように映画映像に影響するのか私にはわかりません。
黒沢清監督へのインタビューの中で、
「演技のウソっぽさがすぐばれる。どうすれば使いこなせるか試行錯誤だった」というニュアンスの話になるほどと思いました。
あっ、このような話をする前に、「よくぞこのような映画を創られた、お見事です」といっておかなくてはなりません。
それからです。
このドラマは歴史サスペンスという範疇になるのでしょう。
それゆえ、後から見る人のために物語の展開と結末を書くわけにはいきません。
付かず離れずの感想ということになります。
1940年、日本が大陸に進出し満州国を作り、国内では国家・軍部の締め付けが強まった時代です。
舞台は神戸です。
ヒロイン聡子(蒼井優)は、貿易商の夫(高橋一生)と異人館の一角にあるような邸宅で優雅な生活をしています。
しかし、夫が出張先の満州から帰国した時から事態は急激に変化していきます。
夫優作は重大な情報を持ち帰ったのです。
夫婦と憲兵隊の幹部である東出昌大の闘いが始まります。
ロケ地の神戸は戦災に遭った街ですが外国人が住んだ街並みは残りました。
そのいわゆる異人館で撮影されたようです。
時代背景にはぴったりです。
ヒロイン夫婦の邸宅、憲兵隊の本部内など、現実的なリアルさではなくある種、象徴的なイメージが付きまといます。
8Kの精緻さにはセットでの撮影では耐えられません。
一方、歴史的建造物はリアルだけれど、肝心の生活のリアルがなくなっています。
この辺りの違いまでわかってしまうのが8Kです。
そこが気になるとドラマに入り込めなくなります。
俳優さんのセリフが多く、演者個々の力量の発揮されるシナリオであり映画です。
その結果、舞台劇を見るような感覚が生じてきます。
8K恐るべしです。
例えば、この映画がモノクロでヒッチコック風だったらどうでしょう。
このカラー映像も簡単にモノクロ転換できるはずです。
もっとシンボリックになるはずです。
ぜひ観たいと思います。
物語は刺激的です。
日本や日本軍の暗部が画面に現れます。
物語だけれど背景としての事実があります。
制作者であるNHKには勇気がいることだったでしょう。
ヴェネチア映画祭は、「自らの過去を語らない日本と日本人」がドラマとはいえ語ったという点でも評価しているようにも思えます。
いかがでしょうか。
ぜひご覧ください。
お読みいただき有難うございました。