岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

「失われた手仕事の思想」

2005-12-27 09:25:12 | 日本の仲間
塩野米松さんの本である。
この本を読んでいて、多くのことに共感するのだけれど、
次の文章を読んで、去っていく手仕事の思想に強い惜別の思いを感じた。

「どこか一部だけを元に戻すことはできない。手仕事の時代は基盤は人々の
生活からすべてが生まれていたのである。生活が変わってしまったのに、
都合のいい、聞こえのいい部分だけを昔に戻そうというのは無理という
ものである」

私の心には、手仕事に敬意を表したい気持ちがある。
仕事は修業期間を経て、身につけたい。
働いていること、進歩していることを体感したいと思っている。
塩野米松氏はそのような手仕事の時代は終ったという。
新しい仕事の思想が生まれてくるだろうともいう。

私は、「株の売買」のようなことが仕事とは思いたくないのだが、
それは古い手仕事の時代の考えなのだろうか。
「働く」ということをつねづね考えてきたが、それもやはり古い時代への
ノスタルジーだったのか。

しかし、今の若者は仕事に充実感がないという。上場企業に勤める若者への
アンケート結果だ。仕事の上達感がないとも。
かっては確かに腕が上がるのがわかったものだ。

そのような時代が過ぎて、現代人は次の「仕事の思想」を持つことが
できないでいる。
新しい仕事の思想、それが表れてくる前に、人々は手仕事の思想を
捨てたようだ。

私は新しい仕事の思想には悲観的だ。
それだけに手仕事の思想への惜別の思いが強い。

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