岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

我々はFOUJITA(藤田嗣治)を知っているか。

2006-06-03 18:22:49 | 日本の仲間
楽しみにしていた藤田嗣治展を観に行った。
始まってから初めての週末とあって予想通りの人出だった。
私は藤田嗣治については、有名な乳白色の裸婦の油絵と
1920年代にパリにおかっぱ頭とロイドメガネの異邦人として
夜な夜なパーティに繰り出す写真ぐらいしか知らなかった。
もちろんモジリアーニなどとの付き合いなどは有名である。

今日は11時には京都近代美術館に着いたが、もう人並みが
押し寄せていた。
会場に入っても最初の自画像に近づけない。
このような時の私の行動は、最後すなわち晩年まで素通りして
最後のコーナーから見始めることにしている。
嗣治は1886年に生まれ1968年になくなっている。
81年の生涯である。20代~70代まで50年間の作品の最後、
彼はどこにたどり着いたか、その最後の到達点を最初にみるという
行為が私は気に入っている。
到達点を知り、その心の遍歴を源流まで辿る旅はとても刺激的だ。
この方法の利点は、鑑賞に疲れはてる前にもっとも重要な作品に
集中できることだ。

嗣治の80年の人生の晩年を私はまったく知らなかった。
最後のコーナーには宗教画と、彼の生活の中に手作りの美的な道具。
子どもが描かれたタイル画で埋め尽くされていた。

もし嗣治の映画を創るなら、フランスの片田舎でひとり礼拝堂を作り
その中の壁画を書き続ける東洋人の姿から始めたい。
自宅に帰ったその男が、自作の家具に囲まれソファーでまどろむと、
アジアの小国から一人喜望峰回りの船に乗り、フランスを目指す若者が
登場する。嗣治自身だ。

彼がどのように50年の作家生活を送ったかは、とても簡単には
書くことができない。
しかしこれだけはいえる。
有名な乳白色の裸婦の油絵は彼の画歴のごく一部でしかないということだ。
近年これほど刺激的だった絵画展を知らない。
ぜひ観に出かけてほしい。
20世紀という時間的空間の一面を知ることができる。

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