岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

『ジモトを歩くー身近な世界のエスノグラフィ』 川端浩平著 

2014-06-04 07:07:10 | 
ジモトの図書館の書棚を覗いていたら、気になるタイトルの本があった。
ページをめくると、なにか見覚えのある風景の写真が掲載されていた。



岡山駅の新幹線プラットフォームからの写真だった。
文章を拡大してみると、



著者の名前を存じなかったので、著者紹介を読む。
1974年岡山市生まれ、ジモトの高校を卒業後、米国と豪州に留学、社会学を学んでいる。
研究領域は、差別・排除、ナショナリズム、エスニシティの地域研究。地域研究。カルチュラル・スタディーズとある。

ずいぶんと興味深い。

著者が生まれたのは戦後30年を経過した頃である。
彼は21世紀に入ってジモトの岡山に帰ってフィールドワークをするのだが、それは私が育った時代の風景とはかなり異なる。
私たちの時代は、エスニック・コミュニティへの差別・排除はもっと風景の中にあった。

どこにでもある地方都市の風景に隠された語られることのない差別・排除を丹念に掘り起こす作業をしている人がジモトにいたことがうれしい(今は関西地方に住まれているが)。
桃太郎というアイコンがあるために見えなくなったジモトの「風景」があるといわれると納得してしまう。

それは、現在進行している「ナショナリズム」の形成過程を探ることにも繋がる。

まだ、半分ほどしか読んでいないけれど、このような視点は重要だと感じている。

米国と豪州の日本研究の違いを知ったこともとても意味があった。

101pより
社会が役に立たない人間を廃棄物と見なすように設計されているように、諸個人にとって役に立たない記憶を廃棄物であると考えるような風潮があるのではないだろうか。しかし、私たちが「廃棄」しようとしているのは誰の記憶なのだろうか。それは他者をめぐる記憶であるが、それと同時に自分の記憶そのものではないだろうか。


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