岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

『俺に似たひと』 平川克美著 その二

2012-03-18 18:26:55 | 
手元に本がないので思うままに書くので申し訳ない思いです。

この「放蕩息子の帰還」の本は、三丁目の夕日の後日談のような雰囲気があります。
このような書き方は失礼に当たると思いますが、どうしてもノスタルジーを感じてしまう。

たぶん、男性で介護のために故郷の実家に帰るという体験をすると、この浦島感覚に襲われると思う。

かつては新しかった実家の建物は古臭くなり管理をきちんとはできていない。
当然、バリアフリーなんかには縁がなく、高齢者には危険きわまりない。
帰還者はまず家の整理やバリアフリーに取り組まなければならない。

そして、男性の場合は見よう見まねで家事にも係わっていく。
著者は、調理する楽しみを発見していくが、このあたりは私の体験と全く同じ。

車をやめて自転車を乗り始めるということも同じだった。
これは生活圏が狭まったことによるのだが。
(時間的な制約があり遠くに行くことができない)

そして、自転車で移動することで再発見もある。
昭和30年代と現代がクロスオーバーするのである。

息子が実家に帰って親の介護をするというのは、今は大きな潮流である。

結婚していても妻が嫁ぎ先の親の介護をすることはできなくなった。
自分の親の面倒をみなくてはならない。
大概の場合は親は二人だから、50~60代になっても親の一人は健在だ。
そして兄弟姉妹の少なさから、誰でも介護から逃れることはできない。

このようにして、ノスタルジーの世界に戻っていく。
家から出ていた数十年がなかったかのように。

p.174
「俺は父親に1年半付き添って、何を見てきたのだろうかという思いと、俺だけには父親の精神の暗がりが見えていたという思いが交錯した」
介護者の多くはそのような思いをいだくのだろう。私も確かにそう思う。


※総合グランドにて。てんまやの陸上部の人々が私を追い抜いていく。



最新の画像もっと見る