岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

北アルプスの遭難はまことに残念です。

2012-05-05 21:31:44 | Y21山の会と、ハイキング
今年のゴールデンウイークの後半は強風と大雨に襲われた。
北アルプスにはこの休みを利用して今年初めて多くの登山者が訪れていたはずだ。

4日午後、北アルプスの稜線では強風に襲われ急激に氷点下まで気温が低下したという。
強風下ではは体感温度は極端に低下する。
軽装で登っていた登山者は吹雪の夜を生き延びることはできなかった。
白馬岳では九州の医師グループ6名が帰還できなかった。
爺ヶ岳では大阪の女性が山小屋にたどり着けなかった。
一人登山だった。
穂高連峰の涸沢岳でも同じく低体温症でなくなった。

この時期の登山は冬山装備が当然だが信じられないような軽装だった(医師グループ)。
今回の天候は装備が整っていても厳しいものだ。

遭難した医師グループは、日曜には自宅に帰り月曜からの診療を行わなければならない。
穴を開けるわけにはいかない。
時間的な制約があった。
行程を考えると、どうしても金曜日には頂上小屋に泊まっておく必要があった。
そして頂上に近づくに従い天候は悪化し温度も急激に低下した。
やっと小屋に近い稜線に出たところで強風に晒され低体温になってしまったのだろう。
なんとか山小屋にたどり着きたいという思いはよくわかる。
この気持ちが判断ミスを犯させてしまったと思う。

長い距離の上りのあと、もう少しで小屋にたどり着くことができるという思い、一方決断しなくてはならなかったのは登頂を諦め下山するという行動だ。
だが下山には長時間を要する。
日没後になってしまうということもあっただろう。
引き返せばいいという気持ちにはなりにくい心理状態だったのだろう。

彼らには一夜を山の中で過ごすことができる装備がなかった(ビバーク装備)。
装備があれば、彼らの選択肢は広がった。
余裕ができることで判断も確かになる。
生き延びる手段をなくしての遭難だったように思う。

他の遭難者も変わらない状況だった。

何年に一度かは、このような遭難が起こる。
繰り返される。
それがとても残念だ。

※写真は5月5日夕方の京都地方。この後、落雷が続いた。

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2 コメント

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山登りをしないのでなんとも言えませんが… (Maa-chan)
2012-05-05 23:08:47
 今回の遭難事故で亡くなった方のご冥福をお祈りします。

 ただ,遭難事故のニュースを聴く度に,「なぜ自然を甘くみるのか」と思えてなりません。

 数年前のトムラウシ山の遭難事故でも,ガイドが不慣れであった上,服装に関しても軽装であったことで,低体温を防げなかったことが,多数の死亡者を出した要因だと言われていたように記憶しています。

 今回は,ゴールデンウィークでかつ3000メートル級の山であると考えた時に,冬山と同等の装備が必要だとなぜ想像できなかったのかと,山に登らない私は考えてしまいます。

 こうした「油断」を繰り返さないために,きちんとした事故の検証が必要かと思いますし,「油断心理学」といった研究が必要なのかもしれませんね。
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油断心理学 (岩清水)
2012-05-06 07:54:30
Maa-chanさん


コメントありがとうございます。
本当に残念なことです。

軽装については、手袋を付けていなかったというインタビューもありましたから間違いないと思いますね。
衣服については、稜線にでるまでは登りですから薄着ということもあります。持参していた装備はどうだったのでしょう。
しかしいずれにしても物心両面の準備が足らなかったと思わざるをえません。
ヒューマンエラーという言葉がありますが、油断心理学とちかいかもしれませんね。
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