高畑勲展では、
長編アニメ映画『太陽の王子 ホルスの大冒険』の制作過程についてとても詳しく紹介しています。
会場でも、映画の一部をモニターで上映していますが、これはぜひ全編観たいと思いました。
DVD購入かなと思っていましたが、アマゾンで1週間400円レンタルができるので、まずはこちらを利用しようと思います。
早速、ネットで観ました。
やはりこの映画を観るのは初めてでした。
モニターの映像から少しカットを挿入します。
↓ 東映ですね。アニメとはいえ東映なのです。
演出(監督)が重要なことがよくわかります。
場面設計が宮崎駿さんです。二人での初仕事です。
↓ 音楽の造形も深い高畑さんです。
↓ 東映ならでは声優です。懐かしい方々です。
↓ この絵は決まっていますね。初監督作品ですから納得です。
画像はこのくらいにしないといけません。
この作品が上映されたのは1968年です。
政治的に激動の時代です。
当初の設定はアイヌ民族だったそうですが、架空の北国になりました。
様々な配慮があったのでしょう。
「主人公ホルスが村人たちと団結して悪魔を倒すまでを描く壮大な物語」です。
しかし、構成は単純ではありません。
悪魔にヒルダという名の妹がいるのです。
この美少女の人格設定と作画がこの映画の肝のように思われます。
ヒルダには、こころの分身と思われるリスとフクロウがついています。
そしてヒルダはこの世のものとも思われない美しい声と竪琴を演奏で村人を魅了し勤労意欲さえ失くしていきます。
高畑さんはこの複雑なこころを持つヒルダをアニメで描くことに挑戦していきます。
彼女の表情を追いかけるだけで至福の時が過ごせます。
画像はこのあたりにします。
制作現場の様子が興味深いです。
制作現場についてはカタログの中に、高畑さんが書いた文章が載せられています。
「当時、作画のスタッフの中にはメインスタッフだけでなく、スタッフ全員ができるだけ作品の内容にかかわりたい、そのためスタッフないから広く意見や創意を求め、くみあげる機会をつくるべきだという強い要求がありました。これを『作品参加』といいます。」
まさに時代です。
人びとは職場でも学生集会でも「全員参加」を求めていました。
高畑さんは現場を、黒沢明映画監督やカラヤン音楽監督のような独裁ではないカタチにしていきたかったのでしょう。
しかし、その創作への厳しさは、独裁者のようでもあったと思います。
以下は、アマゾンの当該ページに寄せられたコメントです。
大変興味深い内容ですので、掲載させていただきます。
早稲田の木
5つ星のうち5.0
ラピュタもここから。
この映画は、2019年12月にプライムビデオになったようですが、この映画を実際に見る人が増え、とても意義あることだと思います。なかなかレンタル屋さんには置いていないし、テレビで放送されるようなものではないし、よほどアニメが好きでないと、円盤で買わないだろうと思うからです。
ちょうど、2019年の7月から10月に、高畑勲監督の回顧展が東京国立近代美術館で開催されましたが、この映画の製作過程についても、かなり重点をおいて、展示されていました。
高畑勲監督をはじめ、「作品参加」した大塚康生氏、森康二氏、小田部羊一氏、奥山玲子氏、宮崎駿氏等、すごいメンバーが書いた原画、イメージボード、手書きの資料が展示されていました。
最初から、ロシア風というか無国籍にしようとしたわけではなく、当初はアイヌの物語にしようとしていたようですが、事情があって、このような設定なったとも書いてありました。
展示の中で一つ驚いたのは、ホルス作成時に書かれた宮崎駿氏のメモでした。
この映画の制作過程では、高畑勲監督の方針で、映画の内容とまったく同じ考え方で、スタッフ全員がアイデアを平等に出し合って、協力して作品を作る「作品参加」というやり方で制作が行われていましたが、宮崎氏もアイデアのメモを残しておりました。
そのメモには、「ホルス(パズー)ヒルダ(シータ)という名前はどうでしょう」と書かれていました。
宮崎駿氏は登場人物の名前の変更を申し出ていたようなのです。これがのちにラピュタの登場人物の名前に使われるのです。
青いペンダントをつけると、空を飛ぶことができ、
孤独に暮らす、どこまでもまっすぐな少年と、
呪われた力を持つ家族に生まれた少女が
力を合わせて、
同じ家族に生まれた邪悪な野心を持つ男を倒す。
ホルスには、いろいろと破たんしたところもあると思いますが、ラピュタを産み落すような、汲めども尽きない豊かさがこの映画にはあるのだと思います。
ホルス 監督高畑勲、場面設計宮崎駿
ラピュタ 監督宮崎駿、制作高畑勲
(これまでもいろいろな方に言われてきたことだと思いますが、ホルスが育ての親の死によって、一人で旅立つところはコナンに、結末に自然の象徴である巨人が大暴れするところはもののけ姫に、生活する村人たちの姿は、ハイジ、コナン、ナウシカ、・・・と続き、自分の運命に迷う少女の姿は、赤毛のアン、思い出ぽろぽろ、かぐや姫へとつながっていきます。この映画の中にすべての始まりがあるのだと思います。2020年4月から岡山県立美術館で高畑勲展がもう一度あるので、この映画のことを知りたい方は、ぜひ、見に行っていたただきたいと思います。)
転載終わります。
この文章は見事な展覧会案内と招待になっていますね。
お読みいただき有難うございました。
続きます。