岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

「自立支援」はどこから来たの?

2008-11-19 22:30:02 | 社会福祉士
皆さん、いつ頃からこの「自立支援」という言葉を聞きましたか?
今では、社会福祉のキーワードのようになっている言葉。
私が最初に見聞きしたのは、1990年代の初め。
経営コンサルタントのファックスニュースからでした。
メーカーが販売店の業績アップを図るために「自立支援」をキーワードにしていました。

当時はバブル期が終わり、企業の再建時期でした。
そのため、大きなビジネスは願うべくもなく「スモールスケールビジネス」が
推奨されていました。
そして、小さな企業の再生をはかる。
それが自立支援だった。

評価方法についても「絶対評価制度」という今から考えれば、とてもまともではない評価制度が
企業の人事部門によって採用されていた。
企業の中で使われた「自立支援」や「絶対評価」という言葉の中身は、まともに思考ができる人に
とっては、こども騙しのようなものだった。
今考えれば、この残滓は社会の中に多く残っている。

問題なのは、社会福祉の中にも「自立支援」の考えを導入したことだ。
金子勝著「閉塞経済」175pには、「自立支援」では自立できない、と書かれている。
金子先生は、ヨーロッパで生まれた「自立支援」制度を、日本で導入する場合に
インセンティブ(誘因)を制度設計に入れたことが格差を広げた要因だと書かれている。
このインセンティブというのは、医療保険や介護保険の制度に組み込まれ、加点、減点という形で
現れます。(医療も介護も自立支援制度=「自立」を促す制度です)
たとえば病院や事業所は、減点・減額されると経営に差し障るので、入院患者に
早期退院を強要し、引き継ぐ介護施設は、定員いっぱいで引き継げないことになります。
施設の職員が足りなければ、すぐに減点です。ケアマネの担当件数しかりです。

わたしなぞ、馬の前に人参をぶら下げて、その距離を近づけたりと遠ざけられたり
しているようで、まことに人を馬鹿にした制度と思っています。

1990年代から産業界で進められた「自立支援」が今、福祉の世界で、
人を人とも思わない制度にならざるを得ないのは、この出自によるものだと思っています。

※写真は金山寺の山門。岡山市北部。

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