岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

『トクヴィルの憂鬱』 高山裕二著 中島岳志書評

2012-02-27 05:18:53 | 


副題は、「フランス・ロマン主義と<世代>の誕生」
朝日新聞日曜(2月26日) 読書欄より

中島岳志さんの見事な書評を読むだけで納得してしまいます。
こんな読み方ではなく、2730円を出して購入しなくてはならないのでしょう。

19世紀前半のフランスはフランス革命とナポレオン政治という対比的な政治体制を経験している。

「革命とナポレオン専制を経た19世紀前半のフランス。身分制から解放された『新しい社会』には、自分が何物でもないという不安に苛まれる『新しい世代』が誕生した」

大きな政治的な体制変換が人々に与える影響を受けたのは、西洋で言えば貴族や大地主、日本で言えば、武士階級でしょう。

書籍名の「トクヴィルの憂鬱」について。

「トクヴィルは『絶対や完全』を根底から疑った。しかし、『見失われる恐怖』にとりつかれ、絶対を熱烈に探求した。彼は『存在しないと自覚しながらそれを渇望する』という矛盾を生きなければならなかった」

「理性的な思考を突き詰めた果てに、理性の決定的な限界を見出した」

そこに「理性を超えるものは無限にあるという認識が開かれた」

これは宇宙空間と同じですね。

宇宙の外部に何があるかと問うことができないことと同じです。

「この認識の先に、トクヴィルは健全な『公衆』を求めた」

「理性の乱用を諌め、超越を想起しながら、均衡を保って生きる公衆の政治。そこに自治が実践され、真の政治が現れる」

しかし、それは実現しなかった。

「群衆によって踏みにじられた」という。

最後には、『群衆よりも孤独の方が私にとってよほどいい』とまで語ったという。

まさに、憂鬱ここに極まれる。ですね。


彼が生まれて200年経ちますが、この彼の憂鬱は私たちのものでもありますね。


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