岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

『ぼくらの頭脳の鍛え方』立花隆VS佐藤優 を読みました。

2009-10-31 16:28:28 | 
ブックマークの一番上のある「坂之上の昼下がり」さんの記事から刺激を受けました。
昨夕、購入して新幹線車内から読み始め、先ほど、斜め読みを終了しました。
立花隆氏は1940年生まれ。
佐藤優氏は20年後の1960年生まれです。
ほぼ一世代下です。

最初に蔵書数を披瀝しあっていますが、立花氏が7~8万冊。
佐藤氏が1万5千冊とのこと。

その数字のすごさは、読書人生70年として、70×365日=約2万5千日。
立花氏、一日3冊以上は買っていることになります。
佐藤氏は今50歳くらいですから、ほぼ一日一冊買っています。
もちろん、全部読むことはしないでしょうが、この数字だけでも圧倒されます。

さて、この本は現代の教養書400冊を選択、紹介しています。
その書籍案内を二人の対談という形で行います。
その対談がすこぶる面白い。

お二人の経歴が示すように、今までの人生経験が極端といっていいほど違うことが
興味深い対談になった理由です。
佐藤氏の得意分野は、神学、欧州(特にロシア)、国際政治(情報)、外務省、政治家、
そして拘留体験と検察対応。
本当に特別な分野が多い。特に情報(インテリジェンス)の世界は読者のうち、
ごく少数の方(関係者)を除いて、誰も知らない世界です。
まったくのフィクションを話しても反証できませんが、まず事実でしょう。

一方、立花氏はマスコミに登場することが多い時期があり、探求している分野が
理解できています。もちろん私の表面的な知識ですが、現代の最先端の科学への好奇心に
驚かされます。
例えば、生命科学、物質科学、地球科学など現代科学一般です。
そして、知の最先端から、現代の思想や政治、社会のあり方を再定義していきます。
もちろん、今までの歴史の膨大な知識を踏まえながらです。

一方、佐藤氏は、現在の国際政治をインテリジェンスから見ることができます。
現実的には、世界の人間との付き合いの中から、情報を得ていきます。
そのためには、人間として信頼されることがベースにあり、そのための信義や
グローバルな知識・教養・語学を身に付けています。

そして、読書は身を助けると言います。
なぜなら、歴史は繰り返されることが多く、歴史の知識があれば、現在の自らの立位置を
相対化できるからです。

具体的な例では、拘置所と検察の尋問の日々の中で徐々に検察官に協力しようという心理が
働きながらも最後は踏みとどまれたのは読書のお陰だったとのこと。
読書による疑似体験の成果でしょう。

お二人に共通するのは、世界や全体を丸ごと把握できないかという欲求があることです。
それが神への冒涜かどうか。
佐藤氏はキリスト教徒であり、立花氏はそうではありません(両親はキリスト教徒)。
もちろん、世界を相手にする仕事の場合は宗教はとても重要です。
佐藤氏の大きな武器だったことでしょう。

お二人の年齢差が20歳と書きましたが、このことがもっとも反映するのが、
政治の世界です。
立花氏は田中角栄~中曽根の間の自民戦国時代。佐藤氏は1990年以降です。
お二人を繋げば、自民党と官僚の40年史が可能です。

最後に、現在の論客で評価をしているのが、湯浅誠氏と雨宮かりん氏。
勝間和代氏は、立花氏は俗物っぽいと言い、佐藤氏は「資本主義体制内で熟練工を目指せ」といっていると評価しています。
立花氏は、書籍名と会話からそのような印象を持ったのでしょう。
実は私も、勝間氏には先入観を持ってしまいました。実際は佐藤氏の見方が正しいようにも思います。




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2 コメント

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読書人による読後感 (b0nn1979)
2009-10-31 22:13:42
さすがは
尋常ならざる読書人たる岩清水さんならでは

両読書人の対話の感想ですね。

私など残り少ない人生は
この両巨人のリストにおかまいなく
自分の畑を耕すのみ・・とも思われますね。

そういえば
立花、佐藤両氏には
「社会政策」「社会保障」「社会福祉」
という書籍はあがっていたでしょうか?

雨宮という人はビッグイッシューでそのスタンスを知りました。

勝間さんについては、フォローはできないが知っておく必要があり「坂之上の夜明け」ではリンクしています。
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確かに。 (岩清水)
2009-11-01 17:23:55
bonn1979先生。
コメントありがとうございます。
確かに「社会政策」「社会保障」「社会福祉」に関して、両者の膨大の知識の領域の中では微々たるものかもしれません。
佐藤氏は、『反貧困』湯浅誠、『貧乏物語』河上輩、『被差別1千年史』高橋貞樹を上げていますね。
とっかりはありそうです。
しかし立花氏の興味の対象にはなっているとは思えません。
立花氏は自分の好奇心が向かう先にしか興味がないのでしょう。
本当に個性的な二人ですね。
なぜ二人の興味が「社会政策」「社会保障」「社会福祉」に向かないのか、考えてみることに
意味があると思い始めました。

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