お付き合いのある土木業者さんたちから被災地での災害復旧についてお話を聞きましたが、被災地が各所に及んでいて対応が大変との声が多く聞かれました。
被害は河川、道路などで大きく、地域の生活への影響が次第に大きくなっています。
「復旧工事に当たって、どんな課題や問題点がありますか?」と訊いてみると、様々な困惑ともどかしさがありました。
「被災地の困りごとで大きいのは、道路が壊れてそこに埋設していた送水管が被害を受けたことです。民間の工場などは水が来ないために操業できずにいるんです。工場からは『とにかく早く送水管を直してほしい』という要望がたくさん寄せられています」
「道路と一緒に送水管を復旧することは難しいのですか?」
「河川と道路で復旧に対する取り組みが少し違います。河川の堤防であれば、国や道など河川管理者が単一なので、次の雨が来るときの備えとして以前の図面通りに直すべく、コンクリート製品や土嚢などをとにかく積み上げるという作業がしやすいです」
「なるほど」
「ところが道路は、被災箇所が市町村道と道道、国道など道路管理者が複数にまたがっているうえに、そこに水道管、下水管、電気、通信など、これまた管理者が違う施設が埋設されています。だから、『とにかく水道管だけなおしてくれ』と言われても、町道を元の通りに戻してよいのか、道道も戻してよいのか、また送水管や通信の管なども、『お金は面倒を見るから、こういう形で直してくれ』という指示がどこからも来ないのです」
「施設の管理者が複数なのでそれを束ねる役回りをしてくれる人がいないというのですね」
「はい。ある工場が被災しているとするとそれを直してあげたい一番身近な行政体はそれがある役場だと思うんですが、役場の職員は事務の方も技術の方も住民対応に追われてしまって、我々の求める指導力を発揮できずにいます。いくら『うまくやってよ』と言われても、我々が指示を受けずに勝手に物事を進めるわけには行きません。良かれと思って直したりして、いざ事が落ち着いた後になると、『だれの指示を受けてこの作業をやったんだ?』と叱られるのは我々ですから(笑)」
小規模な地方自治体では、被災者対応などが中心になってしまって過大な行政事務が押し寄せる中で、インフラの復旧などにあたる人員の確保や意思決定が難しい状況になっているようです。
「なるほど、行政の担当者が対応できないというのであれば、コンストラクション・マネジメント(CM)方式はいかがですか? マネジメントを専門に行うコンストラクション・マネジャーが、発注者、設計者と一体となってプロジェクトの全般を運営管理するやり方で、それなら外部の能力を借りることもできるのではありませんか」
「残念ながらそこまでの余裕すらないようです。思い出すのは平成7年1月の阪神淡路大震災です。あのときは、自民党が先頭に立って政治主導でリーダーシップを発揮して『後のことは面倒を見るからとにかく復旧を急げ』というようなある種の保証をしてくれました。東日本大震災でもCM方式が導入されましたが、導入まで少し時間がかかったようですね」
平時の業務量に対して必要な職員数に対して、大規模災害のような有事の際は当然業務量が何倍にも増大します。そしてその業務量を短期間にこなすためには、なにか有事の際には特別な対応の仕方が適用されるべきだと思います。
ではどういうやり方が良いか。そういうことはドタバタしている有事の時に考えるのではなく、平時の際に考えて想定しておかなくてはなりません。
今はそういうことを言ってはいられませんが、数多くの大規模災害を経験する中で、復旧のための工事体制や契約のあり方などを考えておく。そんな対応をしてほしいものです。
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ところがその「やりたいけれど指示がなくて…」とこぼした業者さん自身が、「もっとも今『やってくれ』と言われても、技術者や測量業者が足りませんし、細かなところで言うと交通誘導員すら集まらないんですから」と対応には苦労するだろうと思っています。
通常をはるかに超える事業量が押し寄せてきたときの行政対応。平時と違った有事モードの対応が求められます。