東京からのお客さんを連れて官庁訪問の案内をしました。
北海道開発局を訪ねたときは、相手をしてくださった幹部が「まだ一定割合のリモートワークが続いています」という話から、「若手を中心にウェブ会議も慣れてきましたが、対面に慣れた我々には物足りない感じも残ります(笑)」という話に。
「どのあたりが物足りないのでしょうか?」
「はい、最初に事務担当が資料説明をしてから会議が始まることが多いのですが、対面であれば資料説明のときに参加者が理解しているかどうかとか、説明が長すぎて不満顔が多いといった『その場の雰囲気』がわかりますが、リモートだとそういう反応が返ってこないので、つい棒読みの説明になってしまうようなことがあると思います」
「なるほど、それは我々も感じます。しかしその一方で、何百人もの職員が一斉に会議に参加できるなど、メリットも感じています」
「確かにそれはあります。それに会議への参加率が上がりました。遠くにいてもパソコンとインターネットさえあれば参加できるという便利はもう手放せなくなっているようには思います」
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「そういえば最近は現場へ行かなくても現場を見ることができる『遠隔臨場(えんかくりんじょう)』という技術も進んできて、監督さんが現場へ来られなくてもチェックしていただけるようになり、感謝しています」
そう説明するとその幹部は「そこは受発注者双方に便利になりましたね。ところがデメリットとしては、職員が現場へ行く回数が減ってしまうということがあります。やはり現場のことは、ハンマーの感触や音などの見極めが大事で、それは回数に比例しますのでね」
「ははあ、なるほど」
「そしてその一方で、ICTを使って若手の技術を早くベテランに近づけようという試みもなされています。
「と言いますと?」
「新入生と30年のベテランに視線を記録できるゴーグルをつけてもらって同時に同じ現場を歩き、それぞれがどこの何を見ているかの視点を記録する研究があります。興味深いのは、新人は何を見て良いのかわからずきょろきょろしてしまうのですが、ベテランは全体を俯瞰した後に特定の施設の特定のポイントを強く見ていたのです。
つまり、ベテランはどこを見るべきかが分かっている、ということなのですが、そのデータを新人にフィードバックしてどこを見るべきかのトレーニングができるようになるかもしれません。
ちょっと期待しているのですがね」
新しいICT技術は、良いところを生かしつつデメリットを抑えるように次第に我々の暮らしに入り込んでくるのでしょう。
数を補い質を補うICT技術。時代は若い人たちに支えてもらわなくてはいけません。
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