釧路菓子商組合さんによる新作お菓子の試食会が開かれました。
今回の新作は、啄木にちなんだお菓子を菓子商組合の組合員10店が参加して作ってくれたものですが、実はこれは昨年12月に、私と観光協会から菓子商組合さんにご相談をしていたもの。
昨年盛岡市で開催された「啄木没後百年イベント」のなかで、「啄木ゆかりの地サミット」が行われたのですが、その際に宮澤賢治と石川啄木を紹介する『もりおか啄木・賢治青春館』を訪ねましたが、そこでお土産やグッズが充実していたのをうらやましく思いました。
そのうえ今年の9月には釧路で国際啄木学会が開催されることになりました。
そこで、菓子商組合さん上田組合長さんや中島事務局長さんたちとお会いして、「啄木ゆかりのお菓子やお土産になるようなものがないのは残念です。何か創っていただけないものでしょうか」とお願いをしてみたのです。
こちらの思いとしては、どこかのお店が一店でも賛同して創ってくれれば良いと思っていたのですが、「それならば菓子商組合に話をして参加を募ります」と話が大きくなってきました。
そうした取り組みの結果、今日ようやく試食ができるまでにこぎつけて、関係者にお披露目されることになったものです。
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話を受けた各店の皆さんは、啄木の歌を渡されたり写真を見せられても、いかに啄木のイメージをお菓子に取り入れるかにかなり苦労されたようでした。
出品された作品はそれぞれつくられたお店から紹介がありました。
ノエルさんからは、「ローズリップ(バラの唇)」という今回唯一の生洋菓子が出品されましたが、これは啄木の、「一輪の 赤き薔薇(しょうび)の 花を見て 火の息すなる 唇をこそ思へ」の句からのイメージをお菓子にした、といいます。
とても丁寧な作りで、味は酸味のあるフランボワーズとチョコの組み合わせ。御店主は、「薔薇、火と唇から赤を連想し、啄木の釧路でのドロドロした私生活を表現してみたかった」と言いますが、とても美味しいケーキに仕上がっていました。すばらしい!
【ローズリップ、酸味とチョコのコラボ】
甘秀堂さんからは「浜千鳥」というお菓子。これは阿寒のかぼちゃをつかって、「しらしらと氷かがやき千鳥鳴く 釧路の海の冬の月かな」からのイメージだとのこと。
フランダースさんからは「霧のしずく」が出品され、「啄木が去った後の霧をイメージした」そうです。
【霧のしずくと浜千鳥】
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パルシェさんは参加者の中で唯一の女性シェフ。ラクアーズに粉砂糖を振った後に本当は落としてしまうところを少し残すことで白のイメージにして、「神のごと 遠く姿をあらわせる 阿寒の山の雪のあけぼの」から、「雪のあけぼの」というお菓子で参加です。
【雪のあけぼのと冬の月】
菓子商組合組合長の上田さんのコルネからは、どちらかというと若い人をターゲットにして、白のイメージからホワイトチョコを使って、香ばしさとしてお米のドンを入れた菓子を提案。
どちらかというとネーミングの面白さで、「たくぼっくり」というお菓子を出してくれました。若い人には受けそうな味でした。
【たくぼっくりは香ばしいさっくりチョコ】
中島菓子舗さんからは、「しゃも寅」と「パイ饅頭」の二品を出していただきました。
「しゃも寅」は言わずと知れた、啄木が足げく通った料亭で、ちょっと前まで水汲みの井戸があったことで知られていもの。
このお菓子は以前にも出していたものを長期に休んでいたのですがこの度復活です。
【しゃも寅復活】
またパイ饅頭はメイプル練乳に小豆の皮を取ったさっぱり餡で和洋折衷のお菓子。風呂敷もイメージしたそうです。
豆の木さんからは、「冬の月」と「大阿寒」の二品のご提供。上述の啄木の句からのイメージですが、「大阿寒」は雄阿寒岳の姿かたちに、えんどう豆でマリモをイメージしたそうです。
クランツさんからは名前は未定ですが、シュークリームの皮を棒状にして焼き上げ、砂糖をからめたお菓子が出されました。お茶とコーヒーがあれば何個でもパクパク食べられそうです。
松屋さんからは、「啄木物語」と命名予定のお菓子が出されました。これは「啄木の当時生きていた人たちは何を食べていたのか」という想像から、サツマイモを使ったお菓子にしてみたとのこと。
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そのほか、今日は欠席だったもののあと2店から出品の予定があるとのことで、これらのお菓子を釧路菓子商組合として、「啄木愛菓」というネーミングの取り組みにするとのことでした。
各お菓子の販売は4月1日から各店で始まり、その後も随時新しい参加店を増やして行きたいとのことで、こうした動きが話題になって、内外からのお客様のお土産や日常の消費につながると良いですね。
まさに物語と商売の域内循環です。
孔子は論語の中で、「近者悦べば遠者来る」と言いました。近くの人たちが楽しそうにしていると、遠くからの人が物珍しそうにやってくるということです。
これこそ客寄せの真理と言えるでしょう。
「啄木愛菓」の取り組みを釧路市民も大いに面白がりましょう。
【試食会は大盛況】