心を養う月刊誌「致知」の読者たちが学習を深める木鶏会に集いました。
3月号のテーマは「生き方」というもの。数多くの高貴な生き方の物語が紹介されています。
まずは佐藤一斎の言志録の一節が紹介されています。
「人は真剣に考える必要がある。それは、『天はなぜ自分をこの世に生み出し、何の用をさせようとするのか。自分はすでに天の生じたものであるから、必ず天から命じられた役目がある。その役目をつつしんで果たさなければ、必ず天罰を受けるだろう』と」
このように考えると、うかうかと生きるべきではないということが分かるだろう、というのです。
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記事の中では、この天役を知るには三つの資質が浮かび上がります。
一つ目は、「与えられた環境の中で不平不満を言わず、最善の努力をしている、という事」
戦争で身体の右足を失って苦悩する人が、安岡正篤さんの言葉の、「いかに忘れるか、何を忘れるかの修養は非常に好ましいものだ」に触れて、過去を悲しむことの空しさに気付き、翻然として未来い向かって人生を切り拓く決意をしたのでした。
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、二つ目は、「『他責』の人ではなく、『自責』の人であること。
幸田露伴が『努力論』のなかで、「大きな成功を遂げた人は失敗を自分のせいにし、失敗者は失敗を人や運命のせいにする。その態度の差は人生の大きな差となって表れてくる」と言っているのだそう。
古今東西不変の法則です。
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そして三つ目は、燃える情熱を持っていること。
明治の実業人浅野総一郎はこう言ったといいます。
「大抵の人は正月になると、また一つ年を取ってしまったと恐がるが、自分は年など忘れている。世の中は一生勉強していく教場であって、毎年毎年一階ずつ進んでゆくものだ。年を取るのは勉強の功を積むことに外ならない。毎日毎日が真剣勝負の心構えでいる人にして初めて、毎日のように新しいことを教えてもらえるものだ」
どうでしょう、この三つの資質を持ち続けることで、充実した人生を歩もうではありませんか。
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こうした読み合わせを終えた後に、参加者同士での意見交換が行われました。
フィリピンのルバング島で終戦後30年にわたってジャングルに潜み続けた小野田寛郎さんも、「ジャングルでの生活を続けるためには、過去を忘れることだ」と言ったといいます。過去にとらわれることは人間を弱くする、とも。
我々は過去に生きるわけにはいかないのと同時に、未来にも生きられません。
はやりの言葉でいえば、「今でしょ!」であり、英語で言えば、"now & here(いまここで)"です。
道元禅師は「前後際断」と言い、その意味は「前際(過去)・後際(未来)が断ち切れていること」、つまり過去と決別し、未来を恐れないということです。
この思考は一つの能力で、逃げ場のない空間に居続けなくてはいけない宇宙飛行士にとっては必須の能力で、メンタルテストでは欠かせないのだそう。
過去にとらわれず未来を恐れず、今この瞬間を精一杯生きる。
そうありたいものですね。