毎朝聞いているNHKの情報番組『三宅民夫のマイあさ!』。
今朝はトレンド教育論で、「子どもを伸ばすメタ認知とは」をテーマに、「学校で一番大切な目的は、『子供に社会で生きてゆく力を身につけること』と言う、横浜創英中学高等学校校長 工藤勇一さんにお話を聞きました。
工藤さんは、子供たちを育てるには「心理的安全性」と「メタ認知能力」が必要だ、とおっしゃいます。
前回はこの番組で「心理的安全性」について話しをされて、それは言い換えると強いストレスのない状態とか、ストレスをコントロールできている状態のこと。そうであれば人間は深い思考をしたり、理性的な判断をしたりすることができる。
子供たちに「失敗しても大丈夫だよ」という環境を与えると、積極的な行動やチャレンジができるようになる、という説明がありました。
~~その「心理的安全性」ともう一つ大切なことが「メタ認知能力」なのですね?
メタ認知能力というのは、ちょっと難しいのですが、「認知」は覚えたり考えたり判断したりする、人間で最も大切な能力。そして「メタ」というのは意味としては「高い次元の」とか「もう一つ上の」といったこと。
そこで「メタ認知」とは、自分がどういうことを考えているかということを、もう一人の自分が上から俯瞰的に眺めているという感じのこと。
~~頭ではわかっても、実践するのは難しそうですね
スポーツを例にするとわかりやすいが、ピッチャーが自分で投げるだけではなく鏡で映してみたり動画で映してみたりすると、もう一人の自分が自分を見られるようになる、そんなイメージ。
~~教育現場ではどのように良いのですか
三日坊主を例に出すことがある。三日坊主は大人も子供もなるが、「三日坊主の原因は何ですか?」と訊くと「自分が頑張らなかったから…」というような答えが返ってくる。
しかし本当は、人間の脳は誰も皆三日坊主になるようにできているんです。元々人間の脳は、新しいことを始めるためには新しい脳の回路が必要なのです。
その回路を作るためにはものすごくエネルギーが必要なので、自分の生命を守るためには新しいことができづらいという脳の構造になっているんです。
なので子供たちには「いや、誰でも三日坊主になるんだよ。だから頑張らない自分はだめなんだ、と思っちゃだめよ」と教えてあげます。
そこでようやく「三日坊主でだめな自分」と思っていた子がやっと初めて具体的なことが分かるようになる。
そして「どんなタイミングで忘れているの?」と訊くと、「なるほど、精神的に頑張れ、と思っていたけれどそうではないんだ」とか、「どういうタイミングで忘れるんだろう?」「どんなふうに忘れているんだろう?」と考える。
そうすると「思い出せばいいんじゃないの?」と具体的に、自分を冷静に客観的に見ることができるようになる。そんなイメージですね。
~~なるほど、「頑張れなかった」と思い込んでいる子供たちに、先生が別な視点を伝えるという事でしょうか
そうなんです。しかし実際の教育現場では、親もそうですが、つい「がんばれ、がんばれ」と言ってしまう。そして子どもたちは「うまくいかないのは、自分が頑張っていないからだ」と思い込んでしまう。
だから大人の役割は重要で、上手に俯瞰的に見るようにさせると子供たちは変わってゆく。
~~なるほど、三日坊主になるのは当たり前だ、と思うと気持ちが楽になりますね。ところでメタ認知能力は訓練すればだれでも身に付けられますか?
はい。しかし始めから一人でできる子はなかなかいません。大人の役割は大事で、子供たちが自分を俯瞰的に見る訓練のためには大人の手助けが必要です。
はい、しかしその大人も精神論で育ってきているので、結構苦手だったりする(笑)。
だから大人自身も自分をメタ認知できる訓練が必要で、それができるようになった大人だけが子供たちのメタ認知能力を訓練できる。
~例えば簡単にどんな訓練をすればよいかを教えていただけますか?
さきほどの三日坊主を例にとれば、忘れているのならば忘れない工夫をすればよい、ということです。
例えば忘れ物をしがちな子が、手にマジックで文字を書いたりしますよね。あれがメタ認知です。忘れる自分を知っているから、忘れないためにはどうしたら良いかを考えて、手に書くという工夫をしている。
この延長線上にメタ認知能力の向上があり、成長があるのです。
~次回は、メタ認知能力の身に着け方について詳しく教えていただこうと思います。今日はありがとうございました。
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誰しも、自分自身を俯瞰的に、第三者的に見ることができれば、振る舞いにも余裕が出そうです。
メタ認知という単語を覚えておきましょう。
【三宅民夫のマイあさ!9月8日朝6時台後半】
https://www.nhk.or.jp/radio/player/ondemand.html?p=5642_03_3725404