『灰の劇場』恩田陸

灰の劇場 恩田陸 河出書房新社

 

1994年。
年配の女性二人が、一緒に橋の上から飛び降りて自殺したという、ごくごく短い記事。
主人公の作家にとって、この記事が心の「棘」となり、作家デビューから数年経ち、専業作家となって小説に起こしたところ。今回、舞台化が決まった。

物語の構成としては、この作家が舞台化において二人のヒロインの舞台でのあり方や、逆にモデルとなった女性たちの気持ちについて思いめぐらすシーンと、彼女たちの日常はこうだったのではないかと描かれているシーンが、交互に現れます。

作家自身の心の揺れ以上に、ヒロインの姿に、読んでいる私の心が強く揺さぶられました。
それはきっと、彼女らの人生の結末が読んでいてつらかったのもさることながら、その絶望や諦観に共感してしまいそうで、怖かったからだと思います。

私の人生も恩田さんとほとんど同世代なので、今後、少しずつ終結に向けて動き始める時期でもあるのでしょう。
これからどうなるのか？たくさんの不安を抱えながら、生きていかなければならないのかと考えると、かなり、気分が塞がりました。

本当はそうも言ってられず、今後の為に、少しづつ生き方を変えていかなくてはならないと感じてもいます。