こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『たんときれいに召し上がれ 美食文学精選』津原泰水選

2015-05-31 19:42:20 | 読書感想
小説家はもちろん、画家、イラストレイター、エッセイストなどの食にまつわる様々な文章を、津原さんが選んで本にしたものです。

私が気に入ったものを列挙します。

渋澤龍彦の美食の帝王を描いた「グリモの午餐会」
祖父から譲られたバーで慧君が経験した酔郷を描いた倉橋由美子の「花の雪散る里」
身体の悪いところを食によって治してしまう中国料理店を描いた「薬菜飯店」
蛮族である己を嫌いながらも種族らしい行動をしてしまう少年を描いた伊藤計劃の「セカイ、蛮族、ぼく。」
夢野久作のお菓子のケンカを描いた「キャラメルと飴玉」とお菓子好きの五郎少年を描いた「お菓子の大舞踏会」
共に自宅で違う死因によって死亡していた夫婦のミステリ、芦原すなおの「ずずばな」
悪魔の舌を持ってしまった金子の告白を描いた村山槐多の「悪魔の舌」
様々な茶漬けを紹介した北大路魯山人の「趣味の茶漬け」
奇談を探す男・恵美酒の元を訪れた智子の話を描いた太田忠司の「冬薔薇の館」
全国のまずい店を紹介する清水義範の「全国まずいものマップ」
半分家に閉じ込められた松原がピーマンを嫌う理由とその顛末を描いた中井英夫の「鏡に棲む男」
有名すぎるエッセイ、石井好子の「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」
ほどほどの酒を飲む女性の美学を描いた長沢節の「お酒を飲むなら、おしるこのように」
病が癒えて退院した男を描いた津原泰水の「玉響」
牛鍋を挟んだ男と娘の肉の取り合いを描いた森鴎外の「牛鍋」
甘党の鴎外の食生活を描いた森茉莉の「鴎外の味覚」
漱石が正岡子規との交流を語る夏目漱石の「正岡子規」

中でも筒井康隆の「薬菜飯店」はイチオシです。
リアルタイムの単行本でも読みましたが、再読してもなお面白い。
というかタイトルを見ただけでも、その情景が浮かんできて楽しませていただきました。

津原さん、面白い作品をたくさん紹介していただき、ありがとうございました。
なお、敬称は略させていただきました。
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『みんなの少年探偵団』万城目学 湊かなえ 小路幸也 向井湘吾 藤谷治

2015-05-29 19:29:58 | 読書感想
五人の作家さんが「少年探偵団」をテーマに書いた短編集です。

万城目さんは明智小五郎と怪人二十面相の誕生秘話を描き、湊さんは少女が束の間少年探偵団として動いた思い出を、小路さんは大人になった小林少年と引退した明智氏の密かな活躍を、向井さんはなぜか日々倍に増える犬を扱う二十面相の話を、最後に藤谷さんは探偵たちの愚かさに怒り引退しようとする二十面相を描いています。

私は、小路さんの格好良い小林少年と明智氏と、藤谷さんの人間味あふれる二十面相がとても好きです。
このシリーズ、大好きになりそうです。
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『ニセ科学を10倍楽しむ本』山本弘

2015-05-28 19:25:49 | 読書感想
世の中にはびこるニセ科学を、論理的かつ科学的に分析し、解明した本です。

『水からの伝言』のおかしさ、「ゲーム脳」など無いということ、有害食品の危険性、血液型性格診断、動物や雲の地震予知、終末予言、アポロは月に行っていない説など、色々な問題があります。

マスコミや自分の専門分野外について言う科学者の発言を疑うことも大切だと書かれています。

私の父が、本やTVの言うことを鵜呑みにしがちな人で、私が否定したり疑ったりすると「何でも疑ってかかるな」と言うんです。
何でも、じゃないんですけどね。
この本、文庫にもなっているので読ませたいのですが、読まないでしょうねえ(苦笑)。
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『EPITAPH東京』恩田陸

2015-05-26 19:24:09 | 読書感想
筆者Kが、戯曲「EPITAPH東京」を執筆中に取材などで遭遇する出来事と、彼女が通う飲み屋での顔見知り・自称吸血鬼の吉屋の生活と、「EPITAPH東京」の原稿で、主に構成されているこの物語。

これら三つの要素が交錯して、やっていることは普通の日常でありながら、不思議な空気を醸し出します。
さらに三つとも、明確な結果が出ないままに終わり、最後は当時の現実の経験が示されます。

好き嫌いが分かれそうな小説ですが、私はこのつかみどころの無さと浮遊感が気に入りました。
万人には勧められませんが、恩田さん好きの方には必読だと思いました。
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『宇宙人相場』芝村裕吏

2015-05-24 19:36:07 | 読書感想
35歳の高野信念は、オタクグッズ会社を経営していた。

そんなある日、街角で倒れた女性を助け、その家族に連絡・・・というのを同じ人物相手に二回やることになり、それが縁で付き合うようになった。
いつ倒れるのか分からない彼女といつも一緒にいるために、高野は彼女の父親に勧められるままに在宅個人投資家に転身した。

その彼女・妙に出会う少し前から届いていた、宇宙人めいた不思議なメールも気にかかるところで・・・。

高野が可愛い嫁、と脳内で考えている場面は、デレッとした顔をしているのが想像つきますが、それとは打って変わって妙の家族の危機には思いがけず頼れるところを見せたりして、なかなか大したものです。
また、宇宙人(?)とのファーストコンタクトも意外とうまく行きそうで、安心しました。

珍しい金融SFで、専門用語に戸惑いましたが、面白く読めました。
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