こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『青蘭国後宮みがわり草紙』早見慎司

2020-09-30 20:14:35 | 読書感想
 
南の島のユタである蓮華は、大通りの外れにある対外的には空家に1人で住んでいる。
なぜならユタは、国王に取り締まられる存在で、公には認められていないからだ。

ところがある日、蓮華の元に士族の男・烈火がやって来て、彼女の双子の姉・桜花のところに来るように言う。
桜花は、ノロである亜麻仁大君の跡継ぎとして引き取られたのだが、蓮華については、市井の者はノロの屋敷に2人もいらないと出て行かせたのだ。
唯一の肉親である姉妹を引き離しておいて、何をいまさらと突っぱねたが、桜花が大変な状態で力を借りたいと言うので渋々行ってみると、桜花は王の息子・如水を生み亡くなっていると知らされる。

後宮の権力争いの中、如水の命を守るために桜花のみがわりを頼まれた蓮華は、後宮に入る事にするのだが。

物語の入り口に過ぎないと思われるこの1冊。
後宮ものは、いくらでもスケールを大きくできそうなので、楽しみです。

ここからはネタバラシがあるかもしれません。
裏表紙のあらすじでは、蓮華が王にだけ惹かれるように書かれていますがそうではないところで、新たな火種になりそうです。
ただ今回の結末では、王母の周囲の人々を、蓮華が無自覚にたらし込んで(人聞きが悪い?)味方にしていきそうな感じです。

今後は、ほとんどの人々が蓮華に寝返ったところで王母が彼女の二心に気づいて仕掛けたところを、王たちや蓮華がどう思い、どう動くかとかして話が展開して行きそうな気がするのですが、どうでしょう?

勝手に空想して楽しんでいますが、人気が出てスケールの大きい話になると嬉しいですね。
できれば、ハッピーエンドで。
楽しみにしています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『最後にして最初のアイドル』草野原々

2020-09-22 19:45:02 | 読書感想
 
アイドルやソーシャルゲームや声優と、SFを結合した物語・・・は分かるけど、それがどうしてこうなった!!!

と、叫びたくなる代物であるこの物語たち。
どうやら、百合SFでもあるようですよ。信じられませんが。

表題作からして、貧しい中からアイドルを目指してきた女性が(まではいいのですが)絶望して自殺したのを、同じアマチュアアイドルグループにいた研修医の女性が、助けようとする・・・以上の事は書けません(グロくて)

でもねー。グロい部分は読み飛ばしても、想像力を極力減らしてでも読むと、すっごく面白いのです。
くれぐれも、生々しく想像しないでくださいね。1ページも保たないかもしれませんから。

こうして読了して考えてみると、今まで私はSFファンを名乗っていいのかと思っていましたが、これを受け入れられる時点で、いいのかもしれませんよね?(異論は却下)

少し自分の人格が心配になりながらも、とても楽しませていただきました。
2年間、積読にしていてごめんなさい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『さよなら、と嘘をつく―沙之里幽譚』太田忠司

2020-09-18 20:24:06 | 読書感想
 
元女優の折坂桜子の娘・千蔭は、その母に連れられて沙之里にやってきた。

母は、雑誌のインタビューで千蔭もここの暮らしが気に入っていると勝手に嘘をついていた。
本当は、東京もここも好きじゃない。
そう考えながら道に迷ってたどり着いたのは、大きな木のある小高い丘。
その木はサノキというのだと、チヨと名乗る少女が言った。
千蔭は、サノキに呼ばれたのだという。

サノキは、亡き祖母に逢わせてくれた。
その後、春になるたびにチヨは千蔭に人を連れてきて欲しいと頼むようになった。

読了してみて、これも『はみだしっ子』へのアンサーソングなのかな?と思えてなりませんでした。
自分の事だけを考え、子どもの気持ちを慮ろうともしない親の元に生まれた孤独な子ども。
みんなのために生きるという事は、美しいようでいて、実は究極の孤独なのだと感じます。
そういう意味では、非常に残酷な物語です。
もちろん感じ方は人それぞれなのだから、純粋に他人の為に生きる美しい心根の少女の話でもいいわけです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『二百十番館にようこそ』加納朋子

2020-09-17 19:42:09 | 読書感想
 
平凡な大学の卒業を前に、就職活動でお祈りばかりされる状況に心をすり減らされた主人公・刹那は、オンラインゲームに逃避し引きこもりになったあげく、亡くなった伯父の遺産である館の相続を口実に、両親からそれのある島に捨てられてしまった。

しかもすぐに引っ越してしまったようで音信不通。
父の武士の情けだという五十万円は、島の診療所には引かれていたケーブルを引っ張って来てもらうために、半分は使ってしまう。
このままでは飢え死にしてしまうと考えた刹那は、彼と同じニートを持つ親たちへ、その子どもを、余っている部屋に住ませる代わりに家賃を取るという宣伝を始めた。

初めから、かなり事態が重いのですが、島のお年寄りが、皆さん世話焼きだったり頼りになったりで、生活の基盤さえ整えば好環境かも?と思えます。
もちろん、何らかの問題を抱えている人々が来るわけですからトラブルはありつつも、ネトゲ仲間が泊まりに来たり、住み始めたりと、なかなか楽しそう?

そして、少しずつ心をほぐされた彼らはどうなるのか?ということろは読んでいただくとして、大抵の方々が他人事に思われているかもしれませんが、人生、何が起きるかわかりませんよー?
学歴・職歴だって当てになるか?・・・これは、自戒も含めていますが。

辛い状況の方々には重いと思いますが、最初の部分を乗り越えられたら面白くなってきます・・・多分。
でも、とっかかりでつまずいたら無理せずに、心がもう少し癒えてからチャレンジしてみて下さい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『令夢の世界はスリップする 赤い夢へようこそ―前奏曲―』はやみねかおる

2020-09-16 19:54:42 | 読書感想
 
令夢は時々並行世界へスリップする事があり、原因は分からないが、何かを成し遂げるか解決するかしたら戻れる時がある。
自力ではスリップできないし、その世界も選べない。

しかし今回、念願だった亡くなった母が生存している世界にスリップしたのだ。
しかもこの世界の幼なじみは小説を書いており、元の世界にはいなかった友人とゲームを創り出そうとしているという。

そう!その幼なじみこそ、内藤内人。
友人は、竜王創也なのだった。
ここには、はやみねさんの描いてきた世界の主人公クラスの人物が終結しているのだ。

読み始めはワクワクしていたのですが、読み終わってみると一抹の寂しさがあります。
これからはやみねさんは、今まで書いてこられた全ての物語の大風呂敷を畳んでしまおうとされているのです。
何事も、いつかは終わるものなので仕方のない事ではあるのですが、それにかけられる時間ができるだけ長く、面白い世界が繰り広げられながら結末に至るよう願っています。
また、その後の夢が、灰色にならないようにも祈っています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする